令和7年度 路線価発表を受けて~不動産価値の見直しと、いま資産家が検討すべき防衛策とは~

2025.07.18
土地持ち資産家 現状分析

国税庁は2025年7月1日、相続税や贈与税の基準となる「令和7年度の路線価」を公表しました。

全国の標準宅地の変動率は前年比+2.3%で、4年連続の上昇となり、依然として不動産価格の堅調な推移が確認されました。

特に都心部および一部の地方主要都市では再開発、インバウンド需要、企業進出などが評価上昇を後押ししています。
「一物五価」とも言われる不動産評価の中で、路線価は相続・贈与の際に直結する指標であり、毎年の動向が税負担や資産戦略に大きな影響を与えます。

路線価上昇の地域と背景

47都道府県中、路線価が上昇したのは昨年の29県から31県へと増加。

特に福岡県(+5.7%)、沖縄県(+5.3%)、東京都(+5.0%)などの主要都市は、上昇率が全国平均を大きく上回る結果となりました。
上昇要因として、以下のポイントが挙げられます:

  • 都心再開発の進展(例:虎ノ門・渋谷・日本橋エリア)
  • 観光再開と円安によるインバウンド需要(特に京都・福岡・北海道)
  • デジタルノマドや外資企業の拠点拡大による都市部需要

また、全国最高路線価は40年連続で「東京都中央区銀座5丁目・鳩居堂前」で、前年比3.6%増の4,580万円/㎡となり、過去最高を更新しました。

資産価値上昇=課税負担の増加

不動産の路線価上昇は資産価値が高まった証でもありますが、同時に「相続税評価額の上昇」を意味します。

地価の上昇が評価額にダイレクトに反映されるため、これまで非課税で済んでいた相続でも、課税対象になる可能性が高まります。
特に以下のような方々は要注意です:

  • 地方に広大な土地を持つ方
  • 都心マンションや商業地を複数所有している方
  • 以前に財産評価や納税資金の試算を済ませたまま見直していない方

相続税の納税額は「評価額 × 税率」で決まるため、評価額が数%上がるだけでも、数百万円〜数千万円の税負担増につながりかねません。

「不動産の2極化」が鮮明に

一方、すべての不動産が恩恵を受けているわけではありません。
都市部や観光地を中心とする一部のエリアでは堅調な推移が見られる一方で、人口減少・高齢化・空き家化が進む郊外や農村部では、逆に評価が下落する傾向も強まっています。

いわゆる「負動産(ふどうさん)」化するエリアでは、売却もままならず、相続時に評価は低くとも維持コストが重くのしかかる事例も少なくありません。
資産家の中には、こうした地方資産を売却・換金し、都心・金融資産への組み換え(リバランス)を図る動きも加速しています。
これは「資産防衛と収益性」の両立を意識した極めて合理的な判断といえるでしょう。

財産分析と「5つの視点」からの戦略的対策を

路線価の上昇は、毎年の相続対策の再検討を促す絶好のタイミングでもあります。
当社では、次の「5つの視点」から財産全体を見渡すことを推奨しています:

  • 1.
    円満な経営承継
  • 2.
    円満な財産承継
  • 3.
    納税資金の確保
  • 4.
    財産の運用保全
  • 5.
    まさかへの備え

これらをベースに、以下の対応が求められます:

  • 財産の現状評価と今後の見通しの確認
  • 個人・法人のキャッシュフローの可視化
  • 不動産・金融資産・保険・借入の全体バランス再設計
  • 必要に応じた法人化、信託設計、資産組み換え、納税対策の実行

評価環境が変化する今こそ、財産全体を俯瞰する視点を持ち、ご自身の意向を踏まえて「守るべきものを守る」準備が必要です。

まとめ

令和7年度の路線価では、全国平均が4年連続で上昇し、都市部・観光地・主要エリアを中心に不動産評価が上向いています。

これは資産の増加につながる一方で、相続税負担増加というリスクも伴います。
特に土地持ち資産家である不動産比率の高い方にとっては、いまこそ評価の見直しとともに、全体最適の視点から資産の組み換え・保全対策を講じる好機といえるでしょう。

「時価が高い今こそ出口戦略を考えるべき」との声もあるように、不動産価格が高止まりしている今こそ、次世代への承継準備を本格化させる絶好のタイミングです。

相澤 光Aizawa Hikaru
コンサルティング事業本部 コンサルティングサービス室 室長 兼 第四事業部 ダイレクトグループ グループ長

不動産や法人を活用した財産防衛策の立案・実行に従事し、財産と想いを次世代に承継するための支援を提供。最適な選択肢を見つけられるよう、中立的な立場で家族全体の意向調整もサポートすることを信条とする。
当社の30年にわたるナレッジを集約した書籍を発行し、セミナー登壇実績も多数。
趣味:学び(税理士資格の勉強中)、ギター、サウナ

専門分野
土地持ち資産家、金融資産家向けコンサルティング
資格
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
著書
「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策
相澤 光
ページトップへ戻る

ご相談・お問い合わせ

財産の承継・運用・管理でお困りごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

無料相談・お問い合わせ

お電話でのご相談

0120-022-313

9:00~17:00(平日)