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2.市場性のない特殊な物件は要注意!

相談の経緯

Pさんは、23区内であるものの人気エリアではない駅から徒歩8分にある大手企業T社の独身寮を、7年前に投資目的で購入しました。鉄筋コンクリート造3階建・築12年の物件で、購入価格は7億4,000万円です。
当初、賃料は年間7,700万円という収益性から考えても問題のない物件であり、一括賃貸であったために入退出時のリフォームだけでなく、共用部の光熱費等も、賃借人の負担であったことなどから、手取りでの利回りも9%を超えていました。

大手企業が期間25年の長期契約で一括借上げするという条件は、魅力的でした。T社の総務担当者からも「退去予定は当分ありません」と言われていたので、Pさんは安心していました。
ところが、その後の数年で状況は様変わりしました。「持たざる経営」の潮流もあって、社宅などの福利厚生施設を売却する動きが企業に広がる中、T社も例外ではなく、退去を通告してきたのです。
敷金を返還しなくていい代わりに、賃貸借契約を打ち切られることになりました。

Pさんにとっては、大変なことになりました。
この物件は独身寮という特定の目的で建てられたため、中廊下形式で共同トイレ・共同風呂・大きな食堂があるという構造で、他の用途への転用が難しかったのです。
これをそのまま賃貸マンションにしても、市場性に乏しく、まだ借入が4億4,000万円も残っていたため、賃料を大幅に下げることもできませんでした。 困ったPさんは、当社に相談に来られました。

検討

当社の専門家が検討したところ、やはり「アパート・マンションへの転用は困難です」という結論になりました。
各個室にユニットバス・トイレを設置し、普通の賃貸マンションに転用した場合も検討したのですが、改修工事費が2億2,000万円もかかってしまい、収支が合わなくなってしまうだけでなく、中廊下で暗い賃貸マンションであるため、空室もある程度覚悟しなければならない状態だったのです。

売却も検討しましたが、ディベロッパーの査定は、更地価格4億1,000万円から解体費用5,000万円を引いた3億6,000万円にしかならず、これでは借入金を返済できないので、売却することもできませんでした。

当社の提案

最終的には、当社の提案により介護付き有料老人ホームに転用することとなりました。
有料老人ホームは20年以上の賃貸借契約が義務付けられている上、「撤退時は残期間賃料支払い義務をペナルティーとして課し、改修費用は介護事業者負担とする」いう契約条項を盛り込むことができたので、一応のリスク回避はできました。
しかし、賃料は年間6,200万円(周囲の賃貸マンション満室賃料の90%)に下げざるを得なかったのです。

そもそも、購入当時から企業寮の撤退が世間で取り沙汰されていたにもかかわらず、市場性も考えず、大手企業が借りてくれているからといって安心して購入したのが間違いだったと言わざるを得ません。
たとえば、バブル期に多くできた住宅街の中の事務所ビルや、建築費削減のために階高を低くし床下にコンピューター配線を格納できないような、市場に取り残される不動産は購入すべきではないのです。

また、購入する場合においても、テナントが退去しにくいように、契約できれば良いのですが、できない場合においては、退去を前提として考え、間仕切り・設備システムなどに可変性があるかどうか等は最低限チェックすべき点です。

注意すべきこと

 ただし、改修工事は一般に多大な費用がかかります。特に用途変更は高額になる事が多いので、投資の回収期間を考えたら、募集賃料を下げた方が有利なケースが多いので注意が必要です。

いずれにしても、市場性を考えない不動産投資はすべきではなく、その意味でも中立的な専門家のアドバイスが重要になってきます。