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収益不動産があるときは同族法人をつくるのも一法

所得税と相続税の同時対策を実現しよう

個人の土地の「有効活用」あるいは「資産の組み替え」が功を奏し、収益があがるようになれば、当然、累進課税によって所得税の負担も重くなってきます。また、所得の増加に伴い財産が増加すれば、相続人に多額の相続税負担を課すことにもつながりかねません。 このような場合、当面の所得税対策と将来の相続税対策を同時に解決するのが、不動産事業を目的にした同族法人をつくる方法です。なお、すでに同族法人を持っているときは、定款を変更して営業目的に不動産事業を追加します。以下、事例に沿って、その効果を説明していきます。

Mさんは築15~20年の古アパート2棟と、駐車場用地1カ所を、相続により所有していました。古アパートは比較的立地のよい場所にあったため、ほぼ満室稼働しており、当面の問題はありませんでしたが、駐車場のほうは駅近という立地のわりには賃料が低く、活用方法によっては、大幅な収益の改善が見込まれました。 市場調査の結果、1階にはドラッグストア、2階には美容室を誘致することが有効であることがわかりましたが、それに伴いMさんの不動産所得も、年間1,400万円から2,000万円に上昇することになります。 そこで、Mさんは、所得税・相続税対策として同族法人を設立することにしました。なお、具体的な法人設立の方法は、次の通りになります。

①Mさんの家族が出資して同族法人(不動産管理会社)を設立する。古アパート2棟(建物のみ)はMさんが同族法人に譲渡し、新築の店舗は同族法人名義が建築を行なう。

②同族法人は、古アパートと新築店舗に関する、借地権の権利金授受が発生しないように、Mさんに対して土地を無償で返還することを定めた契約書をとり交わし、「土地の無償返還の届出書」※を税務署に提出する。

③古アパートの家賃収入と新築店舗の賃料の合計2,800万円は、同族法人の売上げになり、同族法人はMさんに年間地代300万円を支払い、家族を役員にして給与を支払う。それぞれが給与所得になることで所得の分散を図るとともに、Mさん自身の所得税は軽減され、将来的にはMさんの相続税の軽減を図ることができる。

※ 将来借地人が、その借りている土地を無償で返還することを約束した際に、税務署に提出する届出書をいいます。本来、借地権の対価の授受を行なう慣行のある地域では、建物を所有する目的をもって賃貸借契約を行なう際に、権利金の授受を行なうのが一般的です。しかし、借地権の設定が無償で行なわれた場合、税務当局は、地主が借地人に対して借地権に相当する権利金の支払いを免除したと解釈し、借地人に権利金相当額の課税(権利金の認定課税)が行なわれてしまいます。この権利金相当額の課税を受けないための方法の一つが、契約書において当事者間で将来無償で借地を返還する旨を定め、税務当局に「土地の無償返還に関する届出書」を提出することです。なお、この届出書が提出してある土地の相続税課税評価額は、通常の課税評価額の80%となります。

同族法人をつくるときのポイント

しかし、やみくもに同族法人をつくればいい、ということではありません。法人設立は、その目的が収入の確保と所得の分散にあるわけですから、きちんと収益があがることが前提になります。

また出資者(株主)の構成もポイントです。現在の不動産所有者が大株主になると、相続のときに問題がおこります。収益を上げている同族法人の株式は高く評価される例が多いので、相続財産が増えてしまうからです。また、妻(配偶者)を大株主にしたときは、二次相続では配偶者の税額軽減が使えないので、やはり、相続税対策になりません。賢い方法は、この法人を承継するお子さんを株主にすることです。

ちなみにMさんのケースでは、Mさんが長男に不動産賃貸経営を学ばせる目的もあり、長男が同族法人を設立し、MさんとMさんの奥さま、長男が法人の役員になりました。Mさんには子供が二人いますが、将来事業を承継する予定の長男のみの出資としました。これは、相続発生時の争いを未然に防ぐためです。相続が争族とならないための対策が必要です。

もちろん法人の設立については、専門家とよく相談し、資金調達について金融機関の意見を聞いたうえで、慎重に決断する必要があることは、いうまでもありません。