• 標準
  • ENGLISH

地代一括前払い定期借地権を利用した有効活用

賃貸マンション建設による収益改善を検討

東京都下の駅前に260坪の土地を所有していたLさんは、大手コインパーキング業者に月額45万円で貸していました。固定資産税と都市計画税を年240万円(月額換算20万円)負担していたため、Lさんの手元には月額25万円しか残らず、「もっと有利な活用方法はないか」と悩んでいました。

Lさんは、その土地が駅前の商業地域にあり、かつ400%という容積率を最大限生かすために、15階建ての賃貸マンションの建設を検討しました。

しかしながら、調査によると、この地域には景観条例の規則があり、30m以上の建物を建築することは難しく、なお建築した場合のLさんと近隣住民との軋轢を考えたとき、積極的に検討することはできませんでした。さらに、この沿線の他の駅と比較し、地価に比べての賃料相場が低いことが判明しました。

このように、多額の長期借り入れをして賃貸マンションを建築することは、リスクが高い状況でした。

3つの選択肢による改善案を検討

Lさんは、賃貸マンション建設のリスクを理解し、この土地の活用について3つの案を検討しました。

①建築協力金方式による店舗誘致

②等価交換方式によるマンション建築

③土地を売却し、より収益性の高い場所に資産を組み替えての賃貸経営

①は、事前にテナントを探索したところ、ファミリーレストランの、建築費4,000万円を建築協力金で調達し、月額97万円で20年間賃貸借するという提示が最も良い条件でした。建築協力金の月額返済16万7,000円と固定資産税等を差し引いても、手元には60万円前後残ることになります。

このファミリーレストランの場合、平屋の建物で大半が駐車場のため、将来駅前の再開発があっても対応しやすいというメリットはありますが、土地を含めた利回りは2%弱と、有利な条件とはいえませんでした。 また、利用していない容積率を将来隣地等に売却できる可能性が残りますが、景観条例の規制により容積率を使いきれないこともあり、見送ることにしました。

②の等価交換方式によるマンション建築では、借入金がないためリスクが低く、等価交換により譲渡所得税もかからないというメリットがあります。

収入の面からは、取得したマンションを賃貸することにより、年間2,000万円を超える賃貸収入を期待でき、有利でした。しかし、資産価値の面から考えると、マンションの価値は、建物は経年劣化し、土地は敷地権が下落し、長期的な視野においてはデメリットも多く、やはり見送ることにしました。

③の土地売却は、容積率が400%であることから、複数のマンション・デベロッパーの競合により価格がつり上がり、5億7,000万円で売却可能でした。

事業用資産の買い替え特例を使い、都心の収益物件に買い替えれば、当時は5~6%の利回りが相場であったために、年間3,000万円以上の収益が見込め、値下がりしにくい都心の人気物件を持つことにより、資産価値の下落も防げるということで、Lさんは③を実行したいと考えました。

地代一括前払い方式定期借地権を利用

ところが、Lさんの父親が先祖伝来の土地を売ることに抵抗があり、Lさんは、父親の意思を尊重して売却を見送ることにしました。

そこで、土地を売却せずに、投資に対するリスクが少ない定期借地権で運用することをご提案しました。なお、定期借地権といっても、賃貸借期間が短い事業用定期借地権より、期間が長く高額の地代が期待できる50年の居住用定期借地権を検討しました。

居住用定期借地権には、「権利金方式」と「地代一括前払い方式」があります。

「権利金方式」で検討したとき、デベロッパーが出してきた権利金の最高額は3億1,000万円でしたが、一時金として課税されるために、地代を一括して前払いで受け取る「地代一括前払い方式」定期借地権の検討に入りました。 当時としてはあまり一般的でなかったので、50年分の地代をいくらが妥当か、相場の把握が困難でしたが、複数のデベロッパーと折衝を重ね、最高額の4億円で成約することができました。売却したわけではありませんので、譲渡所得税はかかりません。

Lさんはデベロッパーから4億円の地代を受け取り、デベロッパーは定期借地権付きマンションを分譲しました。

固定資産税は支払い続ける必要がありますが、住宅用地の特例が使えることにより、これまでの6分の1程度に下がりました。

ちょうど税務当局からの通達により、「地代一括前払い方式」の場合、前払い地代を50年に分割して所得として申告可能という情報を得ておりました。4億円が一括して課税されるのではなく、50分の1の800万円を50年にわたり毎年申告していけばすむために、4億円のほとんどを運用することができるというメリットがあります。Lさんは手数料等諸経費2,000万円を除いた3億8,000万円で都心に収益物件を購入し、そこから現在は年間2,280万円の収益をあげています。

50年後には土地は更地で戻ってきます。さらに、そのときには都心の収益物件も所有しています。Lさんは、収益を向上させながら、かつ資産を増やすことができました。

Lさんは都心物件の購入をしましたが、既存債務の返済や相続税の納付に充てることもできますので、うまく利用すれば種々多様な活用方法があります。

前払いで受け取った地代に対しても、相続税の課税対象になります。地代一括前払い方式で地代を全額現金で残した場合は、土地を所有していたときよりも相続税は高くなる可能性のほうが高いため、注意が必要です。Lさんが小規模宅地の特例の効果が高い都心の収益物件を購入したのも、相続税のことも考えたからなのです。