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賃貸マンション建築を中止し、介護施設に

状況

Dさんは東京郊外の私鉄駅から徒歩10分の所に、自宅に隣接する 450坪の未利用地を所有していました。

固定資産税の負担を重く感じていましたが、自宅続きなので納税用地とする考えはありません。ほかに所有している土地を納税用地として確保していました。

結局、Dさんは「ここは駅から歩けるし、バス停の前なのでマンションにして収入を得よう。

更地にしておくより、貸家建付地になれば相続税対策にもなる」と考えました。そこで、総工費4億円で3階建ての賃貸マンションを建てる計画を進めることになりました。

契約直前になって、 Dさんは冷静に考えました。

周辺の賃貸物件の情報を調べてみると、「最近、うちの周辺のアパートやマンションで空室が出るようになったと思ったら、駅前の賃貸マンションでも空室が出ている」と気がつきました。

金融機関が勧める計画を根本から考え直す

実際、周辺のマンションは、新築当初、2DK12万8千円で入居者を集めましたが、入居者がないので、半年後、11万8千円に値下げをしてもほとんど効果はありませんでした。

それも、そのはずです。駅に近い新築の賃貸マンションが、2DKの家賃が11万5千円でも空室が目立っていたのです。

 貸出先を選定している金融機関はDさんの土地に建てる賃貸マンションはリスクが少ないので、「金額借入でも安心です」と勧めます。仕事が少なくなっている建築業者も「ここはいい土地です。すぐに入居者で埋まりますよ。安くしますから任せてください」といってくるでしょう。周囲の誰もが勧めるので、何の疑問も持たなくなります。

とくに郊外型賃貸マンションを建てようとする時は、周辺の家賃相場だけでなく、賃貸マンション事情を自分で調べることです。
駅前の不動産屋に行けば、賃貸マンションの空室状況がすぐにわかります。Dさんも「駅に近いマンションに人が入らなければ、徒歩10分のところにマンションを建てても入居者が集まらない」と考え直しました。

有料老人ホームが立地的にも有効と判断

当然、Dさんには固定資産税の負担があり、未利用地から何らかの収入を得る必要はありました。

私たちの提案は「介護施設 ( 有料老人ホーム ) 」でした。土地オーナーが有料老人ホームの建物を建設して、介護事業者に建物を賃貸する活用法です。

その理由は、次の通りです。

  1. 幹線道路沿いではないので外食店の出店はむずかしく、450坪ではスーパーの出店には狭い。
  2. 近くにコンビニがあり、買い物に便利。
  3. 地元にはグループホームはあるが、有料老人ホームがなく、需要がある。
  4. 介護施設を開設するときに必要な都道府県知事の認可を受けるには、賃貸借契約期間を20年以上にする義務が介護施設運営業者にあり、長期・安定した収入が見込まれる。(ただ、契約更新されないこともあるので、借入金の返済期間は20年に設定する必要がある)

介護事業者は居室が何部屋とれるかで、採算性を判断します。
450坪の敷地に、3階建て45室を確保できれば十分採算にのると介護事業者は判断するでしょう。

 予想される総建設費は4億円で、賃貸料は年間4,380万円が期待されるので、建設費を全額負担しても、アパート、マンションが満室になった状態の利回りと大きく違いません。
賃貸物件の場合の10%以上の空室リスクを考えれば、利回りとしては満足できる水準です。

さらに、介護事業者と長期賃貸借契約ができるので、土地価格が下がっても、安定した収入が得られます。
建物の日常的な補修は、賃貸マンションであれば、オーナーの負担になりますが、介護施設の場合は実質的に介護事業者の負担で行なわれることが一般的です。

賃貸借契約も慎重に結ぶ

介護施設での土地活用は土地オーナーにとって長期で安定した収入が得られるだけでなく、地域貢献、社会貢献をするという満足感を得ることもできます。

 逆に、駅前の土地であれば、介護施設でなく、賃貸マンションのほうが利回りの高い計画ができるでしょう。また、幹線道路沿いであれば、外食店、スーパーに建物を賃貸することも考えられます。

 しかし、このケースのように、駅からの距離、道路付け、周辺環境から、そのどれもが難しいときは、有料老人ホームやグループホームなどの介護施設を賃貸する活用法を検討してみてください。

 高齢化社会の到来で考えにくいことではありますが、20年の賃貸借契約をしたのにもかかわらず、介護業者から中途解約を申し出てきたときのことも考えておきましょう。中途解約のリスクを少なくするには、中途解約のペナルティとして「残る契約期間分の賃貸料を運営業者が一括して支払う」とか「中途解約時の借入金残金分を運営業者が負担する」といった条項を契約に盛り込んでおくことが必要です。

 〝建物が古くなった〟あるいは〝経済情勢の変化〟などを理由に、契約期間途中で運営業者が「賃料値下げ」を求めてくることがあり得ます。交渉の結果、賃料が下がることを見込んだ上で、借入金の返済額や返済期間をシュミレーションしておくことは必要でしょう。