2018.10.01
財産承継税制・法令
生産緑地の活用や解除は、さまざまな視点から総合的に判断を

都市部に残る緑地を守る狙いで制定された「生産緑地法」。それに基づき指定を受けた土地が「生産緑地」です。
昨年6月に生産緑地法の一部が改正、さらに今年9月には「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が施行され、今後の動向が注目されています。ここでは、財産管理という視点からこの問題を俯瞰してみます。

あらためて生産緑地の意義や在り方を考える機会

現行の生産緑地法が施行されてから30年となる2022年には、約8割もの生産緑地の制限が解除され、宅地への転用が可能となります。このため、賃貸アパートの経営や分譲住宅などデベロッパーのセールス合戦が激化しており、宅地の供給が過剰になることで賃料や地価が下落するのではないかとも心配されています。これが、いわゆる生産緑地の「2022年問題」です。
しかし、この30年で社会環境は激変しています。都市の農地は、以前は宅地の前段階という位置付けでしたが、今日では都市の防災機能や避難場所としての役割のほか、食料自給率の確保や環境保全、コミュニティ−や食育の場としても見直されています。一方、人口減などから、今後は宅地化しても以前ほどのニーズがあるかどうか不透明になっています。実際に、「アパート経営を進められて決断したが、上手くいっていない」というケースをよく見聞きします。

増える農家の選択肢。ぜひ専門家のアドバイスを

今回の2つの法施行の一連の動きは、農地の維持を後押しするためとも言うことができます。昨年の生産緑地法の改正により、建築の規制、面積、農地の隣接を要件とする運用などが緩和。また、指定から30年を迎える生産緑地を新たに「特定生産緑地」に指定できる新制度も施行され、農業を営む人の選択肢が増えました(図1)。
そして、この9月に施行された「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」により、農地の貸借がしやすくなりました(図2)。これまでは一度貸してしまうと原則返還されなかった農地が、今回の改正によって、賃借権の存続期間を定めることで確実に返還されるようになりました。また、生産緑地を相続した人が他者に貸し付けた場合、これまでは相続税の納税猶予が打ち切られるというデメリットがありましたが、新制度ではこの点が解消されています。
生産緑地の活用や解除を検討する際は、後継者の有無、営農可能な年月、収益性の面や税の優遇の対象となるかなど、さまざまな項目を複合化しベストな選択を見極めるのは難しく、専門的な知識が必要となります。焦って決める必要はありません。ご自身にとってのメリット・デメリットを理解しじっくり検討されるために、この機会に我々コンサルタントへご相談ください。

※詳細については、税理士・税理士法人等の専門家や所轄の税務署等にお問い合わせ下さい。

長曽我部 利幸
財産コンサルティング事業本部 第4事業部 部長

総合的なコンサルティングを幅広く手掛け、そのメニューは多岐にわたる。中でも相続に関する実務件数は100件を超え、土地活用や資産の組み換えにおいては数100件の実績を持つ。

この日は、都内のお客様の生産緑地農地を訪問。「お客様の財産分析を行う際は、必ず現地へ調査に赴きます」と話す。データや書類だけではなく、現場を大切にしお客様へ寄り添う姿勢が伺えた。

※役職名、内容等は取材時のものです。