2021.04.12
財産承継事業承継
【前編】「まさか」が現実となった時代。
企業オーナーが事業と財産を守り、承継するために
「部分最適」から「全体最適」へ

オーナー家の財産が、企業の「まさか」を救う

オーナー家は、企業を存続させるための「資金の最後の貸し手」

コロナ禍において、企業オーナー様から私たちにご相談いただくお悩みが変わってきました。
以前の相談は「事業の承継」をどのような形で行うか、でした。しかし、コロナ禍の影響で収益力が低下し、先々の見通しも不透明となっている現在、「この事業をこのまま続けていても良いのだろうか」「この事業を子どもに継がせても良いのか」という相談が増えています。事業を承継する以前の問題として、会社の財務内容の改善が先決となっているのです。 私たちはこれまでも「まさか」の事態に備えるための提案を行ってきましたが、今、それが現実のものとなりました。そしてこの先も「まさか」の事態が繰り返される可能性が高いです。
コロナ禍では、政府や金融機関からの融資支援がありましたが、「次」はわかりません。

では、会社が今後の「まさか」にどう備えるか。大切なことは、「手元流動性」を高めておくことです。つまり、すぐに支払いに充てられる資金の蓄えです。従業員の方の給料や借入金の返済など、必ず支払う必要がある資金を確保していれば、売上が激減したとしても資金繰りに奔走することなく、しばらく持ちこたえることができます。その間に、落ち着いて打開策を考えることができるのです。経営者の方の心の安定が事業を支えます。

会社が苦しい時に金融機関が融資してくれるとは限りません。金融機関から融資が受けられないときに、最後に頼る先はどこかというと、「オーナー」なのです。 オーナーは「資金の最後の貸し手」。オーナー家から資金を緊急出動させられるように、財産を保全し運用することが非常に大切です。オーナーとオーナー家の一族は、事業からの恩恵を受けるとともに、事業を支える役割を担っているということです。

 

企業の永続的発展に有効な仕組み――「資産管理会社」を持つ

「オーナーが財産形成をするためには、役員報酬を増やせばいい」――そう考えている方も少なくないようです。
しかし、今の日本の税制上、オーナー個人が財産形成するには難しい現実があります。役員報酬や配当には、55%の高い税金が課税されるからです。

そこで、私たちが提案しているのは、「資産管理会社」を設立し、事業会社から配当金を受けて資産管理会社で財産を保全し運用する方法です。資産管理会社への配当金は課税されないケースが多いので、無税で資金還流させることが可能です。

皆さんも、税理士や金融機関のコンサルタントなどから、資産管理会社のメリットについて説明を受けたことがあるかもしれません。
ただ、多くの場合、「節税」や「株価対策」といった観点で提案されるケースが多いと思います。

私たちは、「節税」や「株価対策」という観点では提案していません。前提としているポイントが異なるのです。
私たちが大切にしているのは「企業の永続的発展」。企業が永続的に発展するための仕組みとして、資産管理会社の活用を提案しているのです。
オーナー家の資産管理会社で、オーナー家の財産を保全し、運用していく。その目的は、将来の承継のための納税資金の確保と事業会社の「まさか」への備えです。このような視点で資産管理会社の活用を考えるのが、私たちならではの特徴と言えます。

では、資金管理会社に還流した資金をどう運用するのがよいのか――私たちは運用方法の提案もしています。例えば、オーナー家が財産を保全しながら運用するために有効な運用方法は、都心不動産への投資です。安定収入を得ながら、価格の安定性も確保できる都心不動産は、株式などの流動性の高い運用と比較して、安心して投資できると考えています。不動産以外の様々な運用方法も提案しており、財産の運用までサポートする体制を整えています。

次世代への承継時に、大きな差が表れる

具体的な事例をご紹介しましょう。
非上場企業XのオーナーであるAさんは、約2億円近い役員報酬を受け取っていらっしゃいました。これまで様々な方法で節税を試みておりましたが、近年の繰り返される税制改正による節税の封じ込めに、対策の限界を感じておられました。

そんなAさんに私たちは、「役員報酬を思い切って下げる」ことを提案しました。そして、役員報酬のかわりに資産管理会社へ配当という形で資金還流する方法をお勧めしました。当社には「健全な財務」というコンサルティングメソッドがありますので、役員報酬をいくらまで下げて、資産管理会社へいくら配当すればよいのか、事業会社で借入金をどのくらいすればよいのかなどについても、明確に提案することができます。当社の考え方をお伝えしながら、話し合った結果、Aさんは役員報酬を8000万円まで下げて、事業会社の余剰資金を含めて5億円を資産管理会社へ配当することになりました。
これにより、資産管理会社では、事業会社から切り離された資金で、事業会社の「まさか」に備えながら、次の承継のための対策を行うことが可能になりました。資産管理会社で不動産投資をすれば、結果的に株価対策にもなりますので、次の世代への承継にも有利に働きます。

Aさんがおっしゃるには、「これまでは、会社が儲かったら報酬を払って、法人税を安くしてと、それしか頭になかった。実際は資産を減らしてしまっていたんだね」――とのことでした。

事業承継対策や資産運用には、さまざまな手法があります。皆さんも、複数の手法をご存じかと思いますし、いくつかを実行していらっしゃると思います。
ところが、それらの手法が「部分最適」で選ばれたものだと、トータルで見てマイナスに作用しているケースもあります。それに気付かず、資産を減らしてしまう結果になっている例を、数多く見てきました。

私たちは、常に「全体最適」にこだわりながら、企業の永続的発展につながるよう支援させていただいております。

松川 洋平
コンサルティング第三事業本部 第一事業部 第一グループ グループ長/税理士

大手税理士法人での税務申告業務・相続事業承継コンサルティング業務を経て、2018年に当社入社。 現職では、事業承継専門に上場企業から中小企業まで、企業オーナー向けのコンサルティングを行っている。
「難しい内容をわかりやすく伝えること」がモットー。

※役職名、内容等は取材時のものです。

後編では、「株式分散」から生じる問題を解決し、企業の永続的発展を目指す「ファミリーオフィス」の必要性をテーマにお話しします。