2021.09.30
財産承継
「相続税を減らそう」にリスクが潜む。
資産と想いを遺す「人生100年時代の相続対策」
2021年11月11日、青山財産ネットワークスより、書籍『「5つの視点で資産と想いを遺す」人生100年時代の相続対策』(日経BP) を上梓します。

資産を次世代に引継ぎ、人生100年を明るく過ごしていただくために、アフターコロナ時代の相続問題を「5つの最適化」で解決する方法をご紹介しています。
著者である当社コンサルタント・相澤光が、書籍にも記したポイントとメッセージをお伝えします。

財産・事業を永続させるために、5つの視点で対策する

「相続税を減らしましょう」

資産家や企業オーナーの皆様は、幾度となくそんな言葉をかけられてきたのではないでしょうか。

私たち青山財産ネットワークスは財産保全や事業承継のコンサルティングサービスを提供していますが、そろばんをはじいて「こうすれば相続税が減ります」というご提案はしていません。
むしろ、相続税を減らすことに意識を傾けるのは危険である、と警鐘を鳴らしてきました。

特にこれからの時代、目先の節税対策だけでは相続・事業承継を乗り切ることはできません。
長期的視点で、いかに今持っている資産の価値を守り、さらに高めて永続させていくかを考えることが重要です。

私たちのコンサルティングにおいては、次の5つの視点に注目します。
●円滑な財産承継
●円滑な経営承継
●相続税の納税資金の確保
●財産の運用と保全
●まさかへの備え
それぞれの視点ごとに、現状を把握するためのチェック項目を設定。総合的に評価し、現状にもとづいたプラン設計を行います。
※書籍内にはチェックシートも収録しています。


この5つの視点とチェックシートは、最近の環境変化に応じ、内容をアップデートしています。
新たな問題が発生、あるいは、これまで潜んでいた問題がコロナ禍を機に顕在化してきているからです。

「財産承継」「経営承継」の視点では、「共有」による問題が顕在化

最近、ご相談が増えている問題をご紹介しましょう。

まず「円滑な財産承継」「円滑な経営承継」の視点においては、不動産や自社株式の「共有」がもたらす不安やトラブルが目立ちます。
例えばこのようなパターンです。

・コロナ禍の影響で収入が落ち込み、財産を守っていけるかどうか不安が強くなってきた
・本家や後継者が、不動産や自社株式を共有している身内が財産の分配を求めてくるのではないか……と、疑心暗鬼に陥る
・分家でも先行きへの不安が募る。以前は「長兄に後継を任せるから、私はこの程度もらえればいい」と考えていたが、さまざまな情報を仕入れて「もっともらえるのでは」と画策し始める
・お互いに不安を抱えているが、コロナ禍の中では会って相談することもままならず、意思の疎通ができない
・共有不動産について、活用法や修繕に関する意見がまとまらず塩漬けとなり、資産価値が下がっていく
・自社株式が分散している状態。財産保全や今後の事業展開のために買い戻す必要があるが、交渉が進まない

このように複雑化した状況においては特に、目先の対策では解決できません。
そこで私たちは5つの視点で現状を把握し、問題の根が深くなる前に不安解消のお手伝いをしているのです。

 

資産を大きく左右する「不動産」は、4つの方向性で分類する

「納税資金の確保」「財産の運用と保全」へ視点を移してみましょう。

冒頭でも触れたとおり、「相続税を下げる」ことだけを目的とすると、中長期的に不利益をもたらす選択をしてしまうこともあります。
中でも、判断を誤りがちなのが「不動産」です。資産家の皆さんの財産を拝見すると、不動産が占める割合は、多くの方が5割以上。状況によっては8~9割に達する方も少なくありません。

不動産の状況は収入にも多く影響するため、私たちは不動産の内訳をじっくり拝見します。
そして、財産全体を俯瞰した上で、不動産による収入と相続税を踏まえ、保有不動産を次の4つに分類します。

【A】利用する不動産
・収益性が高く安定稼働 
・いつでも売却可能
・相続税評価も低い

【B】次の代に残す不動産
・配偶者や子へ残したい財産
・家族が欲しい財産

【C】備える不動産
・相続税の納税に備える
・借入金の返済財源
・遺産分割に備える

【D】処分または改善する不動産
・収益性が低い
・維持管理が大変
・資産価値が低くなる財産
 
保有不動産をこの4つに分けてみると、お客様自身が考える分類と、私たちコンサルタントが適切と考える分類に大きな差が表れることがあります。

例として、店舗・アパート・駐車場・底地・未利用地など複数の不動産を所有するお客様のケースにおいて、お客様自身が作成された分類表と、当社が作成した分類表の比較をお見せしましょう。

もっともお客様は、ご自身で判断されたのではなく、第三者からの提案を受け入れているケースも多々あります。

例えば、建築会社や顧問税理士さんから「相続税が下がるから」と勧められ、もともと駐車場だった場所に賃貸住宅などを建てる。しかし、後々「失敗だった」と気付くこともあります。

ある資産家のケースでは、いざ相続の段になって、「駐車場のままだだったら高値で売却できたのに、借り入れをして建物を建ててしまったがゆえに手元に残る額が減る」という現実に気付かれました。
結果、本来とっておくべき土地を売らざるを得なくなったのです。

賃貸不動産の経営も難しい時代になりつつあります。賃料が下がり、空室率が高まる中、これまでのような安定した賃料収入は見込みづらくなっています。

収益不動産を購入する方も多いのですが、適正な借入額はどの程度なのか、10年20年にわたって安定した収益が上がるのか、20年後などに売却した場合、いくらで売れるのか――といった疑問にしっかり答えてくれる不動産業者さんから購入することをお勧めします。

なお、5つの視点のうちの一つ、「まさかへの備え」の点でも、不動産の見直しは重要です。
近年、温暖化の影響による大型台風の発生、豪雨が引き起こす洪水や土砂災害などが頻発しています。大規模地震も、いつ訪れてもおかしくない状況です。
ですから、自然災害による被害が予測される地域にある不動産は、早急に見直すことをお勧めしています。

あるお客様は、山林の崖地に土地を持っていらっしゃいました。相続に備え、その土地を処分しようとしていた矢先のことです。豪雨によって土砂崩れを起こし、下に建っていたマンションの塀をなぎ倒してしまいました。マンションの管理組合から損害賠償請求をされてしまい、資産も減らし、ストレスも抱えることとなり、他の対策も一旦ストップせざるを得ない状況に陥りました。

このように、所有不動産を一つひとつ見直すことはとても重要です。
そして、資産全体のバランスを見て、不動産だけでなく金融資産運用を検討することもお勧めします。
投資の対象・種類・時期・場所などをご自身のご年齢や経験に合わせて、許容可能なリスク内で「分散」させるべきと考えます。

人によって、不動産の購入をハードル高く感じる方もいれば、株式運用に対して警戒心を抱く方もいらっしゃいます。不安がある場合は、「民事信託」を活用して、後継者に資産管理・運用を委託する方法もあります。

近年、「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)」への意識が高まってきました。
「サスティナブル(持続可能な)」という概念は、まさに私たち青山財産ネットワークスが大切にしてきた理念と一致していると感じています。
次世代、次々世代と、資産価値を永続させていく。そのために私たちは、「中長期視点」「全体最適」で財産のバランス を考え、ご提案しています。

そして、Withコロナ/Afterコロナの時代を見据え、財産保全や資産運用の「新常識」に対応すべく、ノウハウをアップデートしていきます。

また近々「財産の手当と想いの共有」をテーマとした相続対策セミナーも開催しますので、ぜひご参加ください。さまざまなご家族のパターンについて、事例を交え課題と解決策をご紹介します。

相澤 光
コンサルティング第三事業本部 第二事業部 第一グループ長

2014 年に株式会社青山財産ネットワークスに入社。
入社後は 20 代からのグローバルな資産運用・不動産運用の経験を活かし、土地持ち資産家や企業オーナーの総合財産コンサルティングを中心に活躍。 幼少期に父親の相続を経験したことで、財産のみならず非財産の承継こそが一家の永続的発展に不可欠と確信し、資産家の想いの具現化を支援。節税目的が中心の相続対策に警鐘を鳴らし、相続全般の事前相談から事後対応をはじめ、全体最適のコンサルティングを幅広く手掛ける。 資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

※役職名、内容等は取材時のものです。


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