2022.07.08
財産運用
底地とは?今さら聞けない底地を解説!

土地の種類として「底地」というものがあります。
底地には、一般的な不動産と比べると制約が多く、売却や担保提供がしづらいといった注意点があります。また、「借地」という土地の種類との違いが曖昧になってしまうケースもあるでしょう。

土地を他人から借りている、もしくは貸しているという人は、権利の内容や法律の規定を知っておくことで、さまざまなトラブルを防ぐことができます。
本記事では底地の基本情報や性質、よくあるトラブルについて詳しく解説いたします。

 

底地とは?

「底地」とは、第三者が建物を所有することを目的とした賃借権や地上権が設定されている土地のことです。
「底地」という言葉は、一般的には地権者側からの立場で用いられることが多く、第三者の建物所有者に土地を貸している状況のことを「底地を所有している」といいます。
底地を所有しているということは、通常は賃貸借契約や地上権設定契約など何らかの根拠となる契約が結ばれるため、底地所有者は家主から賃料収入を得ています。
 

底地権について

前述したように、第三者の賃借権や地上権が設定されている建物が存する土地のことを底地といいますが、その土地に対して持っている権利(所有権や賃料請求権など)を総称して「底地権」といいます。
底地権もれっきとした資産ですので、相続の対象となる権利です。
底地権の根拠となる賃貸借契約や地上権設定契約は建物をたてることを目的とした契約ですので、数十年単位という長期契約になることが一般的です。
これだけ契約期間が長いと、契約期間中に書類を紛失するなどのトラブルが発生し、契約内容がわからなくなってしまうケースも少なくありません。
底地の所有者は、法律上の位置づけ、メリット・デメリットをしっかり理解しておく必要があります。
 

底地権のメリット

底地権は賃料収入が得られることはもちろん、更新料や契約料等の一時金を受け取ることができることや、相続税評価額が更地に比べて低くなるというメリットがあります。
相続税評価額は自用地(他人が使用する権利のない土地)と比較し通常で20~50% 低くなりますが、土地の上に住宅用・特定事業用・貸付事業用の建物が存在している場合、小規模宅地等の特例が適用できるとその底地の評価から最大で80%減額になるという軽減措置があります。
この軽減措置は、自分が住んでいなくても一定の要件を満たせば適用され、一戸建て以外のアパートやマンションでも対象となります。ただ、それぞれの宅地の種類によって、減額される割合と減額される面積の限度が定められていますので注意が必要です。
また、同じ収益物件でも賃貸アパートなどにくらべると維持・管理の手間がかからないというのもメリットの一つです。
税金の負担を軽減しつつ、比較的安定した収入を得られるというのが底地権の強みでしょう。
 

底地権のデメリット

底地権は、一般的な不動産財産とくらべて流動性が著しく低いというデメリットがあります。
つまり、現金が必要ないざというときに土地を売却しようと思ってもなかなか買い手がつかないということです。
土地を購入する人のほとんどは自分で活用することを目的とする人ですので、第三者の建物が存在する土地は更地に比べて価値が低いという評価がされてしまいます。
また、土地に第三者の建物が存在する以上は、借地借家法という法律に基づき原則としてその所有者に対して自由に退去を求めることができません。最近では、地価が上がっているにもかかわらず地代を改定できず、充分な地代をもらえていないケースも多くなっています。
建物所有者との解約の合意がなければ、自分で土地を活用することが半永久的にできないというのもデメリットの一つです。
ただし「正当事由」が認められれば底地権者から建物所有者へ強制的に解約を請求できるという規定もありますが、いずれにしても借地権者とのトラブルになることが多いこともデメリットになります。
 

底地と借地の違いは?

底地という名称と併せて理解しておきたい「借地」という概念があります。
一つの土地に対して、立場や状況に応じて「底地」ということもあれば「借地」ということもあります。
どちらも「地」という字がついており、似ている言葉なので混合されがちですが、この2つの言葉は全くもって似て非なるものです。
底地と借地にはどのような違いがあるのでしょうか。その違いについて解説します。
借地は、賃貸借契約や地上権設定契約を根拠として他人の土地に建物をもつ権利で、一般的には建物所有者側からみた言葉として用いられます。
ここまでの話をまとめると、土地と建物の所有者が異なるケースにおいて、土地所有者から見た土地のことを「底地」といい、建物所有者から見た土地のことを「借地」ということになります。
底地と借地とはそれぞれ表裏をなす表現となっており、これらに付随する権利を総称して「底地権」「借地権」といいます。
 

底地の売却


底地の所有者は、その土地を他人に売却することが可能です。
底地を売却するときは、その所有権と併せて貸主としての地位も購入者に承継することとなります。売買契約成立後、所有権が移転したときから、新所有者が家主に対して賃料を請求できます。
底地の所有者が変わったからといって新所有者から家主に退去を請求することはできません。トラブルにならないためにも、借地の契約内容について新所有者にしっかりと引き継ぐ必要があります。
▽底地売却のメリット・デメリットについてはこちら
底地を売却するメリットとデメリットは?売却施策も併せて解説

底地の評価額の決め方

法律上、底地を売買することは可能ですが、一般的には第三者の建物が存在する土地を好んで購入する方は多くないと言えます。
ほとんどの方が自分で建物を建てるなどの活用を見込んで土地購入を希望するからです。そのため、底地は更地に比べて評価が大きく下がります。
底地評価の明確な算出方法は存在しませんが、目安として路線価と地積から算出することが可能です。まず所有する土地の更地評価額を「路線価×奥行価格補正率×地積」で算出します。そこに割引率をかけることによって底地の売却額を算出することができます。
あくまでイメージですが、おおよそ更地価格の30〜50%くらいで取引されることが一般的です。
更地状態だと5000万円の価格で取引できる土地なら、底地だと約1500〜2500万円の価格で評価されます。
ケースによっては、借地権者から建物を買い取って(もしくは立ち退き料を支払って立ち退きをしてもらい)更地にしてから売却した方が得ということもあるでしょう。

底地の相続税の算出方法

底地の相続税課税評価額は、更地に比べて低くなります。
国税庁によって設定されている借地権割合という数字を用いて、以下の式で算出されます。

更地の場合の評価額×(100%-借地権割合)

借地権割合はエリア(路線価)によって細かく定められており、低いところで30%、高いところで90%と大きく開きがあります。
たとえば、借地権割合が30%の土地で自用地評価が5,000万円の場合、「5,000万円×70%」という計算で評価額は3,500 万円になります。
ちなみに、定期借地権の場合だと契約年数や時期などによって評価額 が変動します。(残存期間が残り少なくなっていくにつれて更地の評価に近づいていきます。)
 

底地を売却する場合の注意点

底地を売却する場合、トラブル防止のためにも借地の契約内容を新所有者へしっかりと引き継がなければなりません。
できれば土地売買契約のなかで借地契約の条件を明記し、その一切の内容を買主が承継するという旨の特約を付しておくことが望ましいです。
売買が完了したら、借地権者に対してその旨を通知するということが必ず必要となります。底地売買があったことを知らずに、借地権者が元の底地権者に賃料を支払ってしまうとトラブルの原因になるため、くれぐれもご注意ください。

底地、借地は担保にできる?

不動産を所有していると、物件を担保にして何らかの融資を受けるというシーンがあります。
一般的な更地や土地建物なら担保物件として一定の評価を得られますが、底地・借地の場合は担保にすることができるのでしょうか。
融資する側の目線になって考えると、万が一返済不能となったときに担保物件からきちんと弁済が受けられるかということが重要になります。
それを踏まえた上で、底地・借地の担保物件としての価値を検討しましょう。

底地の場合

底地でも、担保として提供して融資を受けることは可能です。
ただし、債務者が返済不能に陥ったときのことを想定すると、底地を差し押さえたとしても更地価格よりもかなり安い金額でしか売れないため、満足に弁済を受けることができないと言えます。
そのため融資機関から見た底地の評価は低く、担保物件としてはあまり有効ではないかもしれません。

借地の場合

借地でも担保として提供して融資を受けることは可能です。
ただし、前項と同様に債務者が返済不能に陥ったときのことを想定すると、差押えにより借地権を取得した人は原則として今存在している建物を使用する権利を取得するということになるため、建物と共同担保という形でなければ意味をなしません。
つまり、借地権単体ではあまり価値がないとも言えます。また、借地権を取得しても原則として対象建物のリフォームや建替えができないので、建物の築年数や状態によっても価値が変わるでしょう。そのため、取り扱う不動産会社も少なくなっています。
土地所有権つき建物よりも権利関係が複雑なので、融資機関から見た借地の評価も低く、融資を受けるのが難しいのが現状といえます。

底地にまつわるトラブル

底地というのは、所有不動産として特殊なケースとなるので、さまざまなトラブルが発生しがちです。しかし、事前によくあるトラブル事例とその対応策を知っておくことで、いざという時も落ち着いて対応ができるでしょう。

多くのトラブルが、以下の3パターンに分けることができます。
1. 賃料に関するトラブル
2. 更新に関するトラブル
3. 立ち退きに関するトラブル
この3つの具体的なトラブル事例は、後述の「借地権者とのトラブル」にて詳しくご説明いたします。

先に、底地ならではの相続時のトラブルについて解説いたします。

相続でのトラブル

底地は、一人で所有することもできますが、複数人で権利を共有することも可能です。
相続時の資産に底地があった際に、一人が相続をすると偏りが発生してしまうことから相続人の間で共有する判断を下す場合がありますが、これは後々トラブルの元となってしまいがちです。ただでさえ権利関係が複雑な底地ですが、複数人で共有することで、さらに複雑化してしまうためです。相続人同士の共有によって底地を相続してしまったことで、関係が悪化してしまうだけでなく、底地を売却するとなった際に誰がどれだけ収益を得るかという点でも揉めてしまいます。

借地権者とのトラブル 

底地を所有する「底地権者」と借地権を有する「借地権者」は、同じ土地の上で異なる権利を持つ者同士となるため、トラブルが発生しがちです。先ほど述べた3つのケースに沿って、よくある事例をご紹介します。

賃料に関するトラブル

賃料に関するトラブルで多いのが、底地権者が固定資産税の増加などによりやむを得ず地代を値上げしようとしたものの、賃料交渉に時間がかかりなかなか値上げができないというケースです。

更新に関するトラブル

底地の所有者は、契約満了のタイミングで借地人に更新料を請求することができますが、借地権者から「支払わない」と断られてしまう、というケースです。
このトラブルが発生する原因の一つとして、不動産の更新料は法的な縛りのある請求ではないという点が挙げられます。

立ち退きに関するトラブル

更新料の支払いを断られたことで、契約満了時に借地権者に立ち退きを命じた際に、立ち退きに応じてもらえないというトラブルも考えられます。
または、契約満了時にも関わらず立ち退き料を請求されてしまうという場合もあります。

▽借地権のトラブルを回避するには?
今さら聞けない借地権とは?トラブル回避のためのイロハ

 

トラブルへの対応策

賃料や更新といった支払いのトラブルは、賃貸借契約の契約条項に地代の値上げや更新料の支払い義務について明記をしておくことで防ぐことができます。

しかし、契約条項に含んでおらず、これらのトラブルが既に発生してしまった場合には、どのように対応するべきなのでしょうか。
まずは、「専門家への相談」または「底地の売却を検討」という手段が考えられます。

借地権者とのトラブルが立ち退きの話まで進んでしまった場合でも、「底地権のデメリット」でお伝えした通り、正当事由と認められれば解約をすることができます。
正当事由と認められるかの判断は専門家へ相談してみましょう。

このようなトラブルが発生したことを踏まえて、今後も底地として所有をし続ける必要性があるかを検討し、場合によっては売却も検討しましょう。

底地に関してのトラブルを未然に防ぐなら専門家へご相談を

「底地」と「借地」は言葉が似ているので混合されがちですが、その意味合いは似て非なるもので、それぞれに特徴があるということがわかったと思います。
一般的な更地や土地建物とくらべて制約が多いので、売却や担保提供がしづらいという点に注意しておかなければなりません。
また、借地・底地は賃貸借契約や地上権設定契約が根拠となるものです。
長期継続的な契約は当事者間の信頼関係も重要ですので、お互いに契約内容を遵守し、良好な関係を築いておくということも大切になります。

底地に関するお悩みをお持ちの方は、不動産売却・活用のプロフェッショナルに相談するという手もあります。現在底地を所有しており、未然にトラブルを防ぎたいという方も気軽にカウンセリングを受けることができるでしょう。
不動産相続のサポートに長けている専門家なら、底地の相続に関する悩み・トラブルにも対応してくれます。

ご相談は青山財産へ

底地の売却や契約でお困りの際は、青山財産ネットワークスにご相談ください。
底地という大切な資産の売却であっても、お客様の目的達成を第一に考え、総合的にサポートいたします。
「まだ売却までは考えていないけど、所有している底地を今後どうするか決めたい……」このようなご相談でも、お気軽にお問い合わせください。

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