2022.08.09
財産承継事業承継
不動産M&Aの仕組みを買い手と売り手の目線でわかりやすく解説


不動産の売買が活況となっている中で、不動産の取得を目的に実施される「不動産M&A」という手法が大きな注目を集めています。この記事では、不動産M&Aの概要や、事業の売り手と買い手の双方にもたらされるメリット・デメリット、実際に不動産M&Aを手がける業種などについて、解説します。また、不動産M&Aや資産運用、事業承継の相談をお考えの方は、ぜひ当社への無料相談をご検討ください。
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不動産M&Aの概念

不動産M&Aとは、対象企業そのもののM&Aを実行し、対象企業の保有する不動産を取得・譲渡する手法のことです。一般的なM&Aとの違いは、不動産の取得に重きを置いている点といえるでしょう。不動産M&Aを検討する背景には、いくつかの動機があります。不動産M&Aの概要や、買い手と売り手の双方が実施を検討する動機について解説します。

不動産M&Aとは?

不動産M&Aは、対象企業そのもののM&Aを実行し、対象企業の保有する不動産を取得・譲渡するという手法です。一般的に株式譲渡のスキームが用いられ、不動産売買のように法人が所有する不動産のみを売却・購入するのではなく、株式の譲渡によって株式と不動産を売り手となる企業から買い手となる企業に移動させます。不動産M&Aは、基本的に不動産関係の企業間で実施されるケースが多い手法ではありますが、不動産業界以外の企業も実行する可能性があります。 

一般的なM&A

M&A(エムアンドエー)とは、英語の「Merger(合併)and Acquisitions(買収)」を省略した言葉です。つまり、2つ以上の会社が1つになる、ある企業が他の企業を買収することを意味しています。
M&Aは、企業にとって事業拡大や経営基盤の強化、後継者問題の解決など、企業経営者の課題を解決するために有効な手段です。企業が将来的な存続と発展を実現するために、積極的に活用されています。

不動産M&Aを検討する動機 

不動産M&Aを実施する背景には、さまざまな動機があります。売り手としては、「不動産を所有しているが、将来的に売却したい」「相続などを見据えた株主集約を視野に入れている」、「本業と不動産を切り分けたい」といった理由があてはまります。一方で買い手には、「好立地の不動産を取得したい」「法人の設立と同時に不動産を購入したい」という理由が考えられます。

不動産M&Aのメリットとデメリット

不動産M&Aには、売り手と買い手の双方にメリット・デメリットがあります。以下、売り手と買い手のメリット・デメリットを詳細に解説いたします。 

売り手のメリット

まずは売り手のメリットから解説します。売り手にとっては、手取額の増加と廃業コストの削減、従業員の雇用維持という3つのメリットがあげられます。

手取額の増加が期待できる

売り手の最大のメリットは、手取額の増加です。一般的な不動産売買では、不動産の売却益には法人税が課されます。さらに、税引き後の金額を経営者に配当して分配する場合は所得税等(住民税含む)もかかるため、利益の大きさに応じて税率は最大で55%になります。
しかし、不動産M&Aの場合は法人の株式譲渡という形式での取引となります。法人で所有している不動産を法人の株式ごと譲渡するため、税額は株式の譲渡益×税率となり、原則20.315%になります。 そのため、条件により異なりますが、単純な不動産売買よりも手取額を増やすことが期待できます。

廃業コストを削減できる
企業が事業を廃業する場合、さまざまな費用が発生します。オフィス内の設備や在庫の処分、賃貸契約で店舗を運営している場合は原状回復など、多額のコストがかかります。しかし、不動産M&Aで会社ごと買い手に譲渡する場合は、事業を譲り渡すことになるため、廃業時に必要となる費用や手間はかかりません。このように不動産M&Aには、売り手にとってコストの負担を軽減できるというメリットもあります。
従業員の雇用を維持できる可能性がある
事業を廃業する場合には、従業員は解雇されることが一般的です。しかし、不動産M&Aで買い手が自社の子会社として事業を存続させる場合、従業員の雇用が維持される可能性があるのです。売り手にとっては、従業員の解雇という判断をせずに済むかもしれません。

買い手のメリット

買い手にとっても不動産M&Aのメリットが3つあります。購入費用を抑えられる可能性があること、各種手続きが不要であること、市場に出回りにくい物件を取得できる可能性があること、それぞれについて解説します。
購入費用を抑えられる可能性がある

通常の不動産売買においては、売却により売り手の得る収益が大きく、取得価格との差が大きいほど税額は大きくなります。売却時の利益にかかる法人税に加え、利益を個人に配当する場合に累進税率による所得税・住民税がかかるためです。

一方で不動産M&Aでは株式譲渡の形を取るために税率は一定となり、通常の不動産売買よりも税額が小さくなります。
そのため、売り手が手取額を多く獲得するために、割安な価格で売却する可能性があるのです。買い手としては、本来の不動産価値より低い価格で購入する機会となります。 

各種手続きが不要

不動産を購入することで、不動産取得税や不動産の登録免許税、印紙税、登記申請などの税金や費用が発生します。しかし、不動産M&Aは会社ごと買収することになるため、買い手が新たにこれらの手続きをする必要がありません。手続きにかかる手間を省くことができ、一般的に不動産を取得することで発生するさまざまな費用も抑えることが可能です。

市場に出回りにくい物件を取得できる可能性がある
企業の自社ビルなどは、売買目的で保有されているわけではありません。そのため、不動産売買の市場には出回りにくい物件とされています。一方で、都心の一等地など不動産の開発や投資の対象として魅力的な物件を保有している企業は多いため、通常の不動産売買では見つからないような価値の高い不動産を取得できる可能性がある点は、不動産M&Aならではのメリットといえるでしょう。


売り手のデメリット

不動産M&Aにはデメリットもあります。売り手にとっては、取引成立までに時間がかかること、買い手が簡単には見つからないことがネックとなる場合があります。

取引成立まで時間がかかる

通常のM&Aでは、買収候補の選定から交渉、デューデリジェンス(買収監査)といったプロセスを経て成約するまで、半年から1年程度の期間を要します。さらに、新設分割を成立させるための手続きも必要なため、不動産を含めた資産をできるだけ早く売却したいと考えている場合はデメリットとなるでしょう。

買い手が簡単には見つからない

M&Aの場合、買い手となる企業や仲介する企業と守秘義務契約を結んだうえで交渉に臨むことになります。基本的に水面下で進めていくことになるため、広く買い手を募ることが難しく、多くの候補から条件にあう企業を選ぶことは現実的ではありません。M&Aを希望しているとしても、買い手となる企業が見つからないまま時間が過ぎてしまうリスクが考えられます。

買い手のデメリット

最後に、買い手にとってのデメリットを2つ解説します。取得するのは不動産だけではないこと、手間と時間がかかることを認識したうえで、不動産M&Aを検討する必要があります。

取得するのは不動産だけではない

買収の対象が事業全体になるため、その事業に含まれるさまざまなリスクも引き継ぐ可能性がゼロではありません。たとえば、稀に簿外債務が発生するケースも考えられるため、あらかじめ注意が必要です。買い手と売り手の双方が納得し、お互いがメリットを享受できるよう、不動産M&Aを仲介するアドバイザーなどその道の専門家に間に入ってもらうことをおすすめします。

手間と時間がかかる
M&Aのプロセスにおいて、買い手は売り手の資産価値を評価するためにデューデリジェンスを行う必要があります。買い手にとっては手間が大きく、かつ成立するまでには1年程度の期間を要する場合もあります。時間をかけずに買収したい場合、M&Aは向かないといえるでしょう。

会社分割を活用した不動産M&Aという手法もある

不動産M&Aには、不動産や事業をそのまま買収するだけでなく、会社分割により組織再編を行う手法もあります。 

会社分割とは

会社分割とは、組織再編を実行するための手法の1つです。事業の権利義務の一部、あるいはすべてを切り離し、他の会社に承継するという考え方です。会社分割には、会社を新規設立して不動産や事業などを承継する新規分割、既存の会社に承継する吸収分割の2種類があります。

会社分割を活用した不動産M&Aの流れ

会社分割(分割)と株式譲渡を組み合わせることで、不動産のみ、あるいは不動産を中心とする事業を切り離して不動産M&Aによる譲渡が可能となります。新会社を設立し、不動産を所有している会社と分離させ、
不動産M&Aと同様に、単なる不動産の売買ではなく、不動産を所有している会社の株式を買い手に売却するという流れです。

売り手にとってのメリット

不動産M&Aは、売り手側は不動産だけでなく事業や保有資産、従業員などすべてを買い手に譲渡することになります。しかし、不動産だけ売却したいと考える売り手もいるでしょう。その際は、会社分割を行うことで、不動産の事業のみを売却することが可能です。売却して得られた資金は、本業に投入して自社の経営を強化する、あるいは後継者の負担を軽減させるなど、さまざまな使い方が想定されます。

売り手にとってのデメリット

株主総会の特別決議を行い、株主の3分の2以上から賛成を得られなければ会社分割は実行できません。そのため、株主から会社分割の理解を得るための対応が必要になります。しかし、場合によっては株主と対立構造が生じるというリスクがあります。事前に入念な準備をしたうえで特別決議を行うことが、会社分割をスムーズに実施するための重要なポイントです。

買い手にとってのメリット

買い手にとって不動産の取得の優先順位が低い場合、不動産を切り離すことで買収するコストを抑えることが可能になります。また、要件を満たした場合は不動産取得税が非課税になるため、コスト削減などの効果も期待できます。

買い手にとってのデメリット

業種によっては、許認可の再取得が必要となる点はデメリットといえるでしょう。業種によりますが、再取得が必要な許認可が異なり、新たな許認可を取得しなければいけないケースもあります。不動産M&Aを実行する目的の1つである利益の獲得がスムーズに進まない可能性を考慮し、慎重に検討したうえで実行することが重要です。


 

不動産M&Aはどこに相談すべきか

不動産M&Aでは、不動産と株式の両方を売買することから、どちらの領域においても高い専門知識を持つ相談先を見つけることが重要です。主な相談先として、M&Aアドバイザーや金融機関、事業承継コンサルタントがあげられます。いずれも専門性に加えて得意領域を持っているため、自身が検討する不動産M&Aや依頼したい内容に適したパートナーかどうか見極める必要があるでしょう。

不動産M&Aを実行するために求められるスキル・知識

不動産M&Aにおいては、譲渡資産に不動産が含まれています。そのため、実際の取引を仲介する業者には、不動産に関する高度な専門知識が求められます。一方で、株式の売買という取引も発生するため、M&Aについての知識や経験も不可欠です。不動産の売買仲介を主に手がける宅地建物取引業者は、事業会社のM&Aについては専門外のため、その知識や経験については十分でない場合があります。同様に、一般的なM&Aを手がける企業も、宅地建物取引士の資格を有していない、不動産売買の知識や経験に乏しいというケースがあり、不動産の価値やリスクを適正に評価するのは難しいかもしれません。

これらの理由から、不動産M&Aという業務は、不動産取引とM&Aの知見を併せ持つ専門家のアドバイスを受けながら進めていくことが重要です。
M&Aアドバイザー
M&Aに関するさまざまな業務について、依頼者へのアドバイスや取りまとめを行い、成約までサポートする専門家がM&Aアドバイザーです。M&Aの相手探しからデューデリジェンス、契約書など各種書類作成、条件の取り決め、相手側との交渉など、M&Aのプロセスで欠かすことのできない業務を担ってくれる存在です。大手の法人では多くのアドバイザーやコンサルタントが在籍しており、実績も豊富です。
金融機関
金融機関、たとえば銀行や証券会社などは、一般的に大規模なM&Aを得意としており、相談からM&Aの成約までトータルにサポートしています。ただし、メガバンクなどのM&Aアドバイザリー業務は手数料が高く設定されている場合が多いため、依頼する際にはあらかじめ料金体系について確認することをおすすめします。
事業承継コンサルタント

「自社には後継者がいないものの、事業自体は存続させたい」「事業の一部を売却して資金を調達したい」という悩みを抱える企業経営者を支援するのが、事業承継コンサルタントです。事業承継のソリューションはさまざまなパターンに分類されますが、そのなかでも第三者への承継がM&Aであり、事業承継コンサルタントは売却を希望する企業と買収を検討している企業の橋渡し役として活躍します。

まとめ

不動産M&Aは一般的なM&Aと異なり、不動産の譲渡が主たる目的といえます。そのような不動産M&Aは、単純な不動産の売買と比較して、売り手と買い手の双方にさまざまなメリットをもたらすことが期待されます。

しかし、取引が成立するまでには長い期間と手間を要します。また、売り手であれば興味を持ってくれる相手を見つけることは難しく、買い手であれば必ずしもメリットだけを享受できるとは限らない点は注意が必要です。そのため、不動産M&Aを安心して進め、無事に成功させるためには、専門家に相談することをおすすめします。

青山財産ネットワークスでは不動産M&Aなどを支援するコンサルティングサービスを提供しています。30年以上の実績から得られた「5つの視点」と「全体最適」の考え方をもとに、お客様にとっての最適なご提案と、継続的なフォローを行っております。

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