日本のファミリービジネス事業承継実態調査(前編)

2026.06.09
プレスリリース

事業承継の課題は「ヒト」へ、相談は税理士に集中
― 専門領域の連携に関する課題が示唆 ―
【日本のファミリービジネス事業承継実態調査】

個人資産家や企業オーナーを対象に財産コンサルティングを提供する株式会社青山財産ネットワークス(本社:東京都港区、代表取締役社長:蓮見 正純、以下「当社」)は、全国のファミリービジネス経営者369名(マクロミルモニタ、20歳以上、従業員10名以上の企業の経営者で、親族内承継を検討している層)を対象に、事業承継に関する意識調査を実施しました。回答者の内訳は、創業者が約5割、2代目以降の経営者が約5割で、年代は50〜60代が中心となっています(※回答者属性は図表①参照)。

■調査結果サマリ―

調査の結果、回答者の85.1%が事業承継について具体的な検討を進めており、そのうち48.4%が「後継者を決定し、具体的な準備を進めている」ことが明らかになりました。

本調査は、親族内承継を検討している経営者を対象としていることから、検討そのものは前提となりますが、その中でも約4割が後継者を決定している点から、事業承継は検討段階にとどまらず、実行フェーズへ移行している実態がうかがえます。

不安・課題の内訳を見ると、「財産・税務」などの領域(60.7%)を上回り、「後継者の育成・経営能力」などの人的領域(68.8%)に関する不安を抱える割合が高い結果となりました。すなわち、事業承継における最大の論点は"ヒト"であることが示されています。

一方で、事業承継に関する相談先として最も多かったのは「顧問税理士・会計士」(36.3%)でした。さらに、「財産周り以外の相談」に限って見ても、「顧問税理士・会計士」への相談が26.3%で最多となっており、人的・経営的な課題が上位に挙がる中でも、相談行動が税務領域の専門家に集中している実態が確認されました。

これらの結果から、事業承継の準備自体は進んでいる一方で、課題の中身(ヒト)と相談先(税務専門家)との間には役割分担や連携が十分に進んでいない可能性がある構造が示唆されました。

■ 調査結果のポイント

① 事業承継は「検討」から「準備・実行」段階へ
― 検討層(85.1%)のうち48.4%が「後継者を決定し、具体的な準備を進めている」
― 60代においては過半数が「後継者決定・準備段階」に到達

② 課題の中心は"財産・税務"ではなく"ヒト"の領域
― 財産周りの不安・課題:60.7%
― 財産周り"以外"(ヒト領域)の不安・課題:68.8%
― 個別課題への最多回答は「後継者の育成・教育・研修」(32.8%)

③ "ヒト"の課題が上位に挙がる一方、相談は税理士・会計士に集中
― 相談先1位は「顧問税理士・会計士」(36.3%)
― 財産周り以外の相談でも「顧問税理士・会計士」が最多(26.3%)
― 事業承継支援会社への相談は1割未満

④ 課題と相談先の間に構造的なギャップ
― "ヒト"の課題が中心である一方、相談行動は税務領域に偏在

⑤ 家族間コミュニケーションと課題認識には相関
― 普段の話し合い:79.9%が「できている」
― 会議形式の話し合い:74.8%が「できている」
― 約2割は十分に話し合いができていない

⑥ 約5割が「特に理由なく」相談していない
― 「特にない」が5割超
― 「相談するほどの問題ではない」が2割超

図表① アンケート回答者の属性(n=369)

■ 調査結果の詳細

① 事業承継は「検討」から「準備・実行」段階へ

本調査では、回答者の85.1%が事業承継について具体的な検討を進めていることが明らかになりました。

さらに、その検討層のうち48.4%が「後継者を決定し、具体的な準備を進めている」と回答しており、事業承継は検討段階にとどまらず、実行フェーズへ移行している企業が約半数にのぼります。

年代別に見ると、60歳以上では過半数が実行段階にある一方で、40〜50代においても同様に一定数が後継者決定に至っており、事業承継が「引退間近の課題」にとどまらず、現役世代における経営判断として前倒しで進められている実態がうかがえます。
※本調査は親族内承継を検討している層を対象としており、その中でも一定割合が実行フェーズに移行している点に特徴があります。一部年代はサンプル数が限られるため参考値。

② 課題の中心は人的領域へ

財産周りの不安・課題(60.7%)を上回り、財産周り以外の不安・課題(68.8%)が最大となりました。

個別課題では「後継者の育成・教育・研修」(32.8%)が最多となり、課題の重心が財産・税務から人材・組織へと変化していることが確認されました。

③ 相談先は税理士・会計士に集中

事業承継に関する相談先として最も多かったのは顧問税理士・会計士(36.3%)でした。財産以外の相談に限っても26.3%で最多となっており、相談行動が特定の専門領域に集中している実態が確認されました。
税理士は最も身近で信頼性の高い相談先である一方、後継者育成やガバナンスといった領域については、単独では対応が難しいケースもあると考えられます。

④ 課題と相談行動に分業不足

課題は多様化している一方で、相談先は特定の専門家に集中しています。
財産・税務については専門家の支援を受けながら検討が進む一方で、後継者の育成方針や意思決定プロセスについては、経営者個人の判断に委ねられる場面も見られます。

こうした領域は数値化しにくく、結果として対応が後回しになる傾向があります。

この結果から、課題の内容と相談行動との間において、専門領域の役割分担や連携が十分に進んでいない可能性が浮き彫りになりました。

⑤ 家族間コミュニケーションの影響

家族間コミュニケーションについては、79.9%が「普段のやり取りの中で話し合いができている」と回答し、会議形式の話し合いも74.8%と一定程度実施されていることが分かりました。
一方で、約2割は十分に話し合いができていないと回答しており、こうした層では不安や課題を抱えている割合が高い傾向が確認されました。

このことから、事業承継における人的領域の課題は、後継者個人の問題にとどまらず、家族間のコミュニケーションのあり方や意思決定プロセスとも関係している可能性が示唆されます。

⑥ 約5割が「特に理由なく」相談していない

相談していない層に理由を尋ねたところ、「特にない」が5割超、「相談するほどではない」が2割超でした。必ずしも課題が存在しないわけではなく、現時点で相談の必要性を感じていない、あるいは自社内で対応可能と認識されている可能性も考えられます。
こうした結果は、課題の内容や優先順位が十分に整理されていない可能性も示しており、事業承継における意思決定の難しさの一端を表していると考えられます。

■ 調査結果の示唆

本調査から、事業承継における課題は、財産・税務に加え、後継者育成や意思決定といった人的領域へと広がっていることが確認されました。
一方で、相談先としては税理士・会計士が中心となっており、課題の変化に対して専門領域間の分業や連携が十分に進んでいない可能性があります。
事業承継は単一の専門領域で完結するものではなく、税務・法務・経営・人材といった複数の観点から統合的に検討することが求められます。
こうした背景から、"ヒト"の課題が中心となっているにもかかわらず、それに対応できる専門家への相談や連携が十分に進んでいないことが、事業承継を円滑に進める上での障壁となっている可能性があります。

■ 調査概要

• 調査方法:インターネットリサーチ
• 調査期間:2025年12月12日~12月17日
• 対象:親族内承継を検討する経営者
• 回答者数:369名

■ 調査背景

日本企業の多くを占めるファミリービジネスにおいては、経営者の高齢化が進む中で、事業承継への関心が高まっています。

また、近年は経済産業省においてもファミリーガバナンスに関する研究会やガイダンスの検討が進められており、事業承継における意思決定や後継者育成のあり方についての議論が広がっています。
一方で、承継に向けた準備の進捗や、経営者がどのような課題や不安を抱えているのかについては、実態が十分に可視化されていない側面もあります。

こうした背景を踏まえ、本調査では、事業承継に向けた準備状況や課題認識、相談行動の実態を把握することを目的として実施しました。

■ 青山財産ネットワークスのコメント

本調査から、事業承継は多くの企業においてすでに検討段階を超え、実行フェーズへ移行している一方で、後継者育成や家族間の意思決定プロセスといった"ヒト"の課題に対して、適切な専門家への相談や支援が十分に届いていない実態が浮かび上がりました。

特に、後継者育成や経営能力といった"ヒト"の課題が中心となっているにもかかわらず、相談行動は税理士・会計士といった税務領域に集中している点は、課題の内容と相談行動との間において、役割分担や連携が十分に進んでいない可能性がある状況を示しています。

また、こうした"ヒト"の課題は、個人の能力の問題というよりも、家族間のコミュニケーションや意思決定プロセスに起因するケースが多く、課題として認識されにくく、顕在化しにくいことが、相談行動に影響している可能性があります。

当社では、財産・税務といった従来の領域に加え、ファミリーガバナンスの観点から、意思決定のあり方や後継者育成を含めた"ヒト"の課題に対して横断的に支援を行っています。事業承継を単なる手続きではなく、企業の持続的成長に向けた経営課題として捉え、適切なタイミングで適切な支援につなげることが重要であると考えています。

次回は、後継者側の視点をまとめた〈承継される側〉の調査結果をお届けします。

【株式会社青山財産ネットワークス 概要】

個人資産家と企業オーナーに対し、財産承継と事業承継コンサルティング、財産運用、管理の総合財産コンサルティングサービスを提供しています。顧客の資産規模平均は10億円で、財産コンサルティング分野における数少ない上場企業として、約30年に渡りコンサルティングサービスを提供してきました。2024年11月に発表したチェスターグループとの業務提携並びに経営統合により、今後さらに多くのお客様にコンサルティングサービスを提供してまいります。

会社名:株式会社青山財産ネットワークス
代表者:蓮見 正純
設立:1991年9月17日
所在地:東京都港区赤坂8丁目4番14号 青山タワープレイス3階
資本金:12億7,166万円 ※2025年12月末時点
事業内容:財産コンサルティング,事業承継コンサルティング,不動産ソリューションコンサルティング

【株式会社青山ファミリーオフィスサービス 概要】

青山財産ネットワークスグループが提供する、ファミリーガバナンスの構築と運用の支援に特化したコンサルティングサービスです。青山財産ネットワークスの財産の承継・運用・管理に対するご支援と組み合わせ、お客様のファミリーオフィス立ち上げをサポートすることで、お客様ご一族とご一族事業の永続的繁栄を可能にする仕組み作りと運用に貢献しています。

会社名:株式会社青山ファミリーオフィスサービス
代表者:蓮見 正純
設立:2021年1月25日
所在地:東京都港区赤坂8丁目4番14号 青山タワープレイス3階
事業内容:企業経営コンサルティング,非財産コンサルティング

【本件に関するお問い合わせ】

(株)青山財産ネットワークス 広報担当
広報メールアドレス:azn-pr@azn.co.jp
TEL:03-6439-5824

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