「売却」がためらわれる先祖代々の土地。 キャッシュフロー分析で、守るべき土地を将来に受け継がせることを実現

2025.08.21
土地持ち資産家 現状分析 相続対策 不動産購入・売却

資産や収入の大半が思い入れのある不動産であり、維持費や相続時にかかる資金の工面が悩ましい......というお悩みは、当社のお客様からも多数寄せられています。

特に、ご家族で代々受け継がれてきた土地は、自分の代で手放すことへの罪悪感以外にも、近隣の方の目が気になることなどもあり、例え収益性が低い土地であっても簡単に「売却」という選択肢に対して慎重になられる方は少なくありません。

しかしながら、資産の「売却」は、決してネガティブな面ばかりではないのです。

今回は、キャッシュフロー分析で財産を見える化し、今後の財産やお子様のことを考え、「先祖代々の土地を売却する」という大きな決断に至ったケースをご紹介します。

ご状況
お住まい 東京都内
資産額
(相続税評価額)
約7億円
うち不動産約6億円、現預金 約1億円
課題 ・次代への相続時に必要となる納税資金が不足していること
・現預金が増えていかない財産構成であること
提案
結果
・キャッシュフロー分析に基づいた資産全体の運用と承継プラン

ご相談時の状況

東京都内にお住まいのA様は、ご自宅をはじめ、隣接するご実家や、広大な土地に建てられた賃貸用物件、駐車場など、お住まい周辺に複数の不動産を所有されており、それらはすべて先祖代々受け継がれてきたものでした。

10年前に、先代にあたるお母様からA様への相続に関して当社にご相談があり、承継プランを立案・実行いたしました。その後、お母様がご逝去され、A様への相続は滞りなく済んでいましたが、数年経過した2021年に、

「有効活用が出来ていない実家と相続のことで、また相談があるんです」

と、再びお声がけいただきました。

まもなく70代となられるA様ご自身の年齢も鑑みて、万が一、急に相続が発生した場合についても心配しておられました。

当社の対応とその結果

実は再びお声掛けいただく前から、A様に相続が発生した場合、納税資金が不足するため不動産を売却する必要があることと、お母様のご自宅を有効活用できていない点は課題でした。

お母様からA様が財産を相続した段階で、既に多くの銀行借入の負担があり、キャッシュフロー分析から5〜20年後のどの局面においても、相続時に納税資金が不足してしまう見立てをお伝えしておりました。

そこで当社は、当時お母様のご自宅を更地にして、

  • 賃貸用戸建て
  • 商業施設(ミニスーパーやドラッグストア)
  • コインパーキング
  • ガレージボックス、レンタルスペース

などを新設して有効活用した場合のプランに加え、

  • 売却し、新たな資産へと組み換える

というプランも含めて選択肢をご提示しました。

代々受け継いできた土地を、自分の代で売却することには消極的だったA様。
約半年間、複数のプランをじっくりと比較検討されました。

しかし折り悪く、賃貸用物件に大規模修繕が必要となり、新たな借入を作ることに。
ここでまた収益不動産の建築のために借入を増やすのは難しい判断となりました。

しかしながら、2年後、
「有効活用が出来ていない実家と相続のことで、また相談があるんです」と、冒頭に記載したとおり、再びお声掛けいただくことになりました。

A様のお悩みは、元を辿れば、資産の大半が不動産という換金性の低い資産であったことが一因です。
この構成を改善しなければ、今後もまた資金調達で苦悩されることは必然でした。

そのため今回は、保留にしていたお母様のご自宅の活用プランを再検討すると同時に、賃貸用物件の「売却」も比較検討することになりました。

キャッシュフロー分析では、ご負担となっている総額2億円以上・計5本の借入について、それぞれの返済期間や残債を一覧にしてご説明しました。
そこで「土地を売却された手残りでこの借入を返済することで返済額が減りキャッシュフローがこのぐらい改善できますね」というように、収支の変動予測をわかりやすく「見える化」した資料を作成し、各プランを確認していきました。

同時に、将来の分割・承継面も考慮し、3人の子供たちには残った資産をどのように分配するのか、キャッシュはどのくらい残すことができるのか......など、相続時のシミュレーションも入念に行いました。

売却した手残りの活用方法については、土地の有効活用の自己資金や、お子様世代も含めた金融資産運用の情報提供を行い検討頂きました。

様々な投資先と、それぞれのメリット・デメリットをお伝えし、ご不安やリスクを少しでも軽減できるような資産の組換えプランをご提示しました。

すると、長らく「売却=手元から無くなってしまう」という点でためらわれていたA様のお考えが、売却「後」の運用や、財産の分割・承継に関するイメージを具体的に掴めたことで、「売却しても形を変えて引き継ぐことができる」というように変化されていったご様子でした。

最終的には、お母様のご自宅を売却し、不動産小口化商品に組み替えて行くプランを選ばれたA様。

長らく固定資産税を負担しているだけの土地を売却することで、新たな資産への組み換えを行うことができ、借入の返済も減り、今後の生活にもゆとりが生まれました。

解決のポイント

代々受け継がれてきた土地の整理は簡単なことではありませんが、決して負の側面ばかりではありません。

A様のように、ご家族にとって最良の選択肢を見つけるには、キャッシュフロー分析により正確な情報を把握し、客観的な視点で、長期的な予測に基づく戦略を練ることが重要です。

同様のお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一緒に、様々な可能性を探らせていただけたらと思います。

相澤 光Aizawa Hikaru
コンサルティング事業本部 コンサルティングサービス室 室長 兼 第四事業部 ダイレクトグループ グループ長

不動産や法人を活用した財産防衛策の立案・実行に従事し、財産と想いを次世代に承継するための支援を提供。最適な選択肢を見つけられるよう、中立的な立場で家族全体の意向調整もサポートすることを信条とする。
当社の30年にわたるナレッジを集約した書籍を発行し、セミナー登壇実績も多数。
趣味:学び(税理士資格の勉強中)、ギター、サウナ

専門分野
土地持ち資産家、金融資産家向けコンサルティング
資格
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
著書
「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策
相澤 光
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