相続対策には生前贈与が有効! 不動産を生前贈与するケースを解説

2026.03.02
金融資産家 土地持ち資産家 企業オーナー 相続対策

生前贈与は、相続財産を減らすことで相続税の負担を抑える効果があることや、相続財産の分け方を生前に決定する争続予防としての意味を持っていること等から、相続対策の一環として広く知られています。また、不動産を贈与する際には、評価方法や税負担、贈与後の活用方法など、知っておくべき実務的なポイントが多数あります。

本記事では、相続対策としての不動産の生前贈与に焦点をあて、基本的な仕組みから税制上の注意点まで、わかりやすく解説します。

不動産を生前贈与することで相続の準備に役立つ

ここでは、生前贈与や贈与税の特徴の他に、相続税の基礎控除に関して概要を押さえておきましょう。

生前贈与とは

財産を所有する人が、生前に財産の一部を特定の人に無償で与える ことが生前贈与です。相続とは異なり、財産を所有する人が存命中に自分の意思で財産の引き継ぎを行う制度になります。

生前贈与の対象には現金や株式の他に、建物や土地といった不動産も含まれます。不動産であれば、被相続人が存命中に名義変更することで、望む相手に対して確実に不動産を引き継ぐことが可能です。

生前贈与は、相続対策や相続人同士のトラブルを避ける目的で行われるケースがよくあります。生前贈与がなく、遺言書も作成されない場合は、被相続人が亡くなった 後に相続手続きを行います。 その際は、遺産分割協議で相続する財産に関して話し合いを行いますが、贈与者の意思がわからず協議が難航する恐れもあるため注意が必要です。

生前贈与で前もって贈与税を納付すると相続税を軽減できる可能性がある

贈与税は贈与が行われたときに、評価額に対して課税される税金です。将来値上がりしそうな不動産であれば、値上がりする前に事前に生前贈与を行うことで、相続税の納付額を軽減できる可能性があります。

また、家賃収入のある不動産の場合は、被相続人の財産が増えた後に相続すると相続税が高くなる場合があるため注意が必要です。負担が軽減できるかどうかは状況によって異なるため、税理士に相談しながら判断するとよいでしょう。

不動産の生前贈与で相続税を抑えられる可能性がある

被相続人から財産を引き継ぐ際に課される相続税には、全ての相続人が利用できる「基礎控除」という制度があります。

基礎控除額を求める計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」です。例えば、法定相続人が2人いるときの基礎控除額は、式に当てはめると「3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円」となります。この場合、相続する不動産を含めた相続財産 が4,200万円までなら相続税が発生しません。

生前贈与によって財産を減らしておくと 、その分の相続税も抑えられるでしょう。しかし、多額の生前贈与はそれに伴い贈与税も増えるため、検討が必要です。

生前贈与による争続予防とキャッシュフロー改善効果

生前贈与は、相続財産を減少させる点のほか、相続財産の分け方を生前に決定するという点で争続予防としての意味を持っています。被相続人の意思を明確にすることで、相続人同士のトラブルを未然に防ぐことができます。

また、収益物件の生前贈与では、家賃収入が受贈者に移転することで、被相続人の相続財産の増加を抑制するとともに、受贈者のキャッシュフロー改善にもつながります。

これらの効果を総合的に考慮すると、生前贈与は相続対策として非常に有効な手段といえます。

相続税以外に不動産の生前贈与で発生する税金

不動産の生前贈与でかかる税金は不動産取得税や登録免許税、贈与税等があります。以下で、それぞれの特徴を確認しておきましょう。

不動産取得税

有償・無償問わず、不動産の所有権を得たときに都道府県に支払う税金が不動産取得税です。具体的には、不動産の購入や交換、建物の新築、贈与などが該当します。生前贈与によって不動産を取得した場合でも、不動産取得税の納付が必要です。不動産取得税は、不動産を取得したときに一度だけ納付します。

不動産取得税の納税額の計算式は「課税標準×税率(4%)」です。式にある課税標準は原則として固定資産税評価額と同じになります。

なお、税率は4%とありますが、2025年8月現在では、住宅又は土地については「軽減特例税率の3%」が適用されています。また、同じく2025年8月現在では、宅地等の場合の課税標準は、固定資産税評価額×1/2です。

登録免許税

登記を行う際、国に納付する税金が登録免許税です。贈与などで不動産の所有権が移ったときに、登記手続きとして納める必要があります。

登録免許税の税率は、贈与による所有権移転登記の場合には2%が適用されます。他の登記(相続・売買など)では税率が異なります。不動産の生前贈与を行う場合は、法務局へ必要書類を提出するときに、収入印紙で登録免許税を納付します。

贈与税

個人の贈与者から受贈者に贈られた財産額が、1年間に110万円を超えたとき、超えた分の金額に課税されるのが贈与税です。不動産価格は、基本的に110万円を超えるケースが多いため、生前贈与の際は贈与税が課せられると判断して良いでしょう。

贈与税の税額は、贈与された財産額によって変わります。税務署に贈与税の申告をした後に贈与税額を納付しますが、財産額が1年間に110万円を超えない場合は贈与税がかからず 、申告は不要です。

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。暦年課税は、年間110万円の基礎控除額を設けた通常の課税制度です。もう一方の相続時精算課税は、一定の条件を満たすことで特別控除額2,500万円まで贈与税が非課税となり、贈与財産は将来の相続時に相続税の課税対象として加算・精算される制度です。

贈与税に関する制度については、次の項目で詳しく解説します。

不動産の生前贈与で利用できる制度

贈与税には、相続時精算課税制度と配偶者控除という制度が設けられています。ここでは、この2つの制度について概要を解説します。

相続時精算課税制度

60歳以上の親または祖父母から、18歳以上の子ども・孫へ贈与する財産のうち、2,500万円まで贈与税を非課税にする制度です。相続時精算課税制度では、2024年から年間110万円の基礎控除が新たに導入されました。これにより、制度選択後も110万円以下の贈与については申告・課税が不要となるケースがあります。

相続時精算課税制度を選ぶと、暦年課税への変更はできません。また、この制度を選択する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を提出します。

配偶者控除

婚姻期間が20年以上ある夫婦で、居住用不動産またはそれの購入資金の贈与があるとき、贈与税を2,000万円まで非課税にできます。配偶者控除は基礎控除 と併用できるため、合計すると2,110万円まで贈与税がかかりません。

相続対策以外に不動産を生前贈与するメリットとは

不動産を生前贈与すると、希望するタイミングで、贈与したい相手に対して確実に贈与できるのがメリットです。

希望する相手に望ましいタイミングで承継できる

自分の意思で行える生前贈与は、配偶者や子どもなど希望する相手に望ましいタイミングで承継できるところがメリットです。これにより、相続トラブルの発生も抑えられます。
ただし、実際に承継するときは相続人側の了承を得ておくことが必要です。

財産を確実に承継

生前贈与によって、存命のうちに不動産の名義変更を行えば、希望する相手に対して確実に不動産を承継 できます。財産を保有する人が存命中に相続の話し合いができるため、相続トラブルの予防にもつながるでしょう。生前贈与をしておらず遺言書もないと、遺産分割協議の話し合いで相続人同士が揉める可能性が高まります。

十分な判断能力があるうちに財産を承継できる

高齢になると、疾病や認知症などのリスクが高くなります。認知症により判断能力が低下すると、不動産の管理も難しくなるため注意が必要です。

そのため、財産を円滑に承継させたい場合は、贈与者が十分な判断能力を有しているうちに「生前贈与」を行うことが重要です。

生前贈与で不動産を取得する際の流れ

生前贈与で不動産を相続する流れは「必要書類の用意」「贈与契約書の作成」「登記申請」の3つのステップに分けられます。順番に確認していきましょう。

贈与する本人が必要書類を用意する

生前贈与を行うためには、以下の必要書類を贈与者・受贈者がそれぞれ準備します。

贈与者が準備する書類:

  • 本人確認書類
  • 登記識別情報通知(または登記済権利証)
  • 印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 固定資産評価証明書
  • 委任状(専門家に委任する場合)

受贈者が準備する書類:

  • 本人確認書類
  • 住民票の写し

共同で作成する書類:

  • 贈与契約書(登記原因証明情報)
  • 登記申請書

その他:

  • 収入印紙(登録免許税の分)

贈与契約書を作成する

贈与契約書とは、贈与する人と贈与を受ける人が合意した内容を記載した契約書のことです。双方の合意があれば、贈与契約自体は口頭で約束しても法律上では成り立ちますが、契約書を残すことで生前贈与が行われたことを公的に明示できます。贈与契約書を作成したら、贈与者と受贈者がそれぞれ署名捺印します。

また、不動産の名義変更時は、理由を示した登記原因証明情報が必要です。贈与契約書は登記原因証明情報に該当するため、その点も契約書を作成した方が良い理由になります。そのため、親族間であっても贈与契約書は作成しておいた方が良いでしょう。

不動産の名義変更のため登記申請を行う

贈与対象の不動産を管轄している法務局で、名義変更の登記申請を行います。登記申請は、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。申請方法は、窓口かオンラインでの申請になります。

不動産を生前贈与する際に注意するポイント

不動産の生前贈与を行う場合は「7年ルール」や「みなし贈与」といったポイントに注意しましょう。

生前贈与には「7年ルール」がある

相続開始前の7年以内に行われた生前贈与は、相続税の課税対象になり、受け継いだ財産は相続財産に加算されます。ただし、令和6年1月1日より前に行われた贈与については、3年以内の贈与のみが加算対象です。生前贈与では、贈与を行った時期に応じた期間を意識するようにしましょう。

生前贈与の金額が年間で110万円を超える場合は申告を行う

年間110万円を超える生前贈与の場合は、贈与税の申告が必要です。贈与した翌年の2月1日〜3月15日までの間に、所轄の税務署で申告書を提出します。

みなし贈与に注意

不動産を売買する際、時価と比べて『著しく低い価額』で取引した場合は、「みなし贈与」として贈与税の課税対象となる可能性があります。特に、親族間での不動産取引では、適正な価格設定が重要です。

小規模宅地等の特例が適用できなくなる

不動産を生前贈与すると、その不動産は小規模宅地等の特例を適用できなくなります。

生前贈与を検討する際は、小規模宅地等の特例の適用可能性も含めて、総合的に判断することが重要です。

まとめ

生前贈与は、現金・株式・不動産など多様な資産に対して活用できる相続対策の一つです。単に税負担を軽減する手段としてだけでなく、相続財産の分け方を生前に明確にすることで、相続人間の争いを未然に防ぐ「争続予防」としても有効です。また、収益性のある不動産や事業資産を早期に次世代へ移転することで、キャッシュフローの改善や資産活用の柔軟性向上にもつながります。

贈与の税務面では、相続時精算課税制度や配偶者控除などの制度を活用することが可能ですが、一方で小規模宅地等の特例が適用できなくなる点や「7年ルール」などの注意点も存在します。そのため、生前贈与と相続のどちらが有利かは、資産の種類や家族構成、将来のライフプランなど税務面以外の事情も総合的に勘案して実行の判断をすることが重要です。

生前贈与は、税務面、家族の安心や資産の有効活用等といった観点から、相続対策として多面的な価値を持つ手法です。状況に応じて柔軟に活用し、最適な承継方法を選択することが求められます。

青山財産ネットワークスではお客様のご希望に沿って、相続や資産の管理・運用に関するさまざまなご提案をしております。生前贈与をはじめとした相続対策にお悩みの方は青山財産ネットワークスにご相談ください。

相澤 光Aizawa Hikaru
コンサルティング事業本部 コンサルティング総合力推進室 室長

資産家の方々が抱える「資産を守り、次世代へつなぐ」という課題に向き合い、不動産や法人を活用した円滑な財産の承継・運用・管理をサポートしてきました。

私が何より大切にしているのは、「まずお話をじっくり伺うこと」。資産の規模や構成だけでなく、ご家族の想いや背景を丁寧に理解したうえで、収益性の向上や財産分割などを一緒に考えていきます。なぜなら、家族の数だけ“正解”があると考えているからです。

「〇〇が気になっている」「何から手をつければいいかわからない」といったご相談を多くいただきますが、「専門家に任せる」のではなく、「一緒に進めていく」スタイルを大切にしながら、これまで多くのご家族の資産承継に伴走してきました。

専門分野
土地持ち資産家、金融資産家向けコンサルティング
資格
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
著書
『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』
(青山財産ネットワークス刊)
資産承継における実務と心情の両面に寄り添った内容が評価され、2021年11月には紀伊國屋書店新宿本店のビジネス書ランキングで第1位を獲得しました。
相澤 光
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