1991年に創立した青山財産ネットワークスは、今年35周年を迎えました。35年の間に時代は変化し、お客様の悩みも変化し続けています。しかし、お客様に寄り添い、何を未来へ残したいのかを一緒に考える私たちの姿勢は、35年間変わっていません。
事業承継を支援するコンサルタントが、今の時代の企業オーナーの課題への取り組み、これまでの歩みの中で大切にしてきた想いをお伝えします。
- 多和田 大紀tawada daiki
- 執行役員 経営企画本部 本部長 兼 経営企画部 部長
青山財産ネットワークスにて上場企業から中小企業まで、約20年に渡り事業承継を専門に100件以上のコンサルティングを展開。同社の事業承継コンサルティング部門を牽引。親族承継、社員承継、M&A等幅広く選択肢を提案するスタイルを信条とする。現在はコンサルティングを行う傍ら、当社の戦略策定やPDCA管理等を担う。2022年、ネクストナビ代表取締役副社長就任。

この20年で広がった、事業承継手段の選択肢
少子高齢化に伴う市場の縮小、テクノロジーの進化、「AI」の台頭――企業を取り巻く環境は大きく変わっています。事業承継を検討する企業オーナーにとって、「誰に引き継ぐか」だけでなく「会社をどのように存続させ、さらに成長させていくか」を判断することが難しい時代となりました。
一昔前は、子息への承継を前提とする経営者が多く見られました。しかし近年は、「継がせても苦労するのではないか」「本人は本当に継ぐことを望んでいるのか」といった葛藤を抱えるケースも増えています。そのため、親族内承継だけでなく、社員への承継や第三者への承継など、事業を未来につなぐための選択肢が広がっています。
事業承継を考える際、多くの経営者がまず願うのは、従業員の雇用を守ることです。加えて、取引先との信頼関係や地域とのつながり、地域への貢献も大切にしたいと考えています。また、創業理念や企業文化を重視する経営者もいます。創業者本人でなくても、先代から受け継いだものをきちんと次世代へ渡さなければならないという使命感を抱いている方は少なくありません。それは、昔も今も変わらない、経営者の想いです。
一方で、若い経営者の方々は、「会社をどう成長させるか」という視点も強く持っています。事業承継は単に経営者を交代するためのものではなく、企業の持続的な発展を実現するための重要な経営課題として捉えられるようになっています。そうした意味では、事業承継を事業戦略の一つとして捉える経営者は、以前より増えてきていると思います。
このように選択肢の幅が広がった企業オーナーを支援する立場として、私が常に意識していること。それは、お客様が語ることを表面上だけでなく、裏側にある想いを汲み取りながらお聴きすることです。「こうしようと考えている」というご相談に対し、「では、そのプランを考えます」とそのまま進めるのではなく、「本当にそれでよいのか」「ほかの可能性はないのか」という視点で考え、情報提供やご提案をしています。
また、私たちの事業のメインのミッションは「財産」に関する課題解決ですが、なるべく「経営」に近い課題もしっかりと捉えるよう努めています。経営に関わるご相談に対し、自分たちができることに取り組み、難しい部分についてはパートナーと連携しながら解決を図る。そんな姿勢を持って、お客様の幅広い悩みに寄り添うことを大切にしています。
劣勢の交渉で見えた、お客様が本当に守りたかったもの
私は青山財産ネットワークスの前身企業に入社して以来、約20年にわたり多くの事業承継案件に携わってきました。中でも忘れられないのが、まだ20代の頃に担当した、ある中堅企業のオーナーの案件です。当社代表の蓮見が長年にわたり支援してきたお客様で、私も入社後に担当チームへ加わり、決算支援などを通じてお付き合いを重ねていました。
転機は、その企業がほかの企業グループからの資本参加を受け入れたことでした。将来の成長を見込んだ提携でしたが、その後、相手側の経営環境が厳しくなり、提携関係がむしろ会社の将来を左右するリスクへと変わってしまったのです。オーナーは、資本関係を解消し、自らの手で経営の舵を取り戻すという大きな決断を迫られました。株式の買い戻しを含め、会社のあり方そのものを見直すプロジェクトであり、私がこれまでに経験した中でも五本の指に入るほど難航した案件です。
相手方には、大手法律事務所の弁護士やファイナンシャルアドバイザリーの専門家等が何人も並びました。一方、こちらは蓮見と私を含めてわずか3人。経験も体制も、差は明らかでした。お客様もそれを感じていたはずです。それでも私たちに任せてくださったのは、長い年月をかけて積み重ねてきた信頼があったからだと思います。自分の力不足を痛感しながらも、その「任せたい」という気持ちに何としても応えたいと考えていました。
プロジェクトの期間中は、ほぼ毎日のようにお客様とやりとりを重ねました。その日に受けたご相談には翌日までに答えを用意し、夜遅くまで準備をして翌朝の打ち合わせに臨む。そんな日々の繰り返しです。正直に言えば、お客様からお叱りを受けることも少なくありませんでした。それでも、不安や不満を遠慮なくぶつけていただける関係を築けたことに、私たちが提供できた価値の一端があったのかもしれません。
ある日、相手方の事務所での協議に、お客様と蓮見、私の3人で臨んだことがあります。高い位置から押し切ろうとする相手に対し、私たちは一歩も引かず、お客様の立場を最後まで主張し続けました。理屈だけでは割り切れない局面もありましたが、その根底には「お客様にとって譲れないものを守る」という強い意思がありました。互いの立場が大きくぶつかった緊迫の協議として、今も強く記憶に残っています。
交渉を重ねる中で見えてきたのは、お客様が守りたかったものは、株式や経営権そのものだけではないということです。グループを離れた後も従業員が安心して働き続けられること。長年支えてくれた取引先との関係を損なわないこと。そして、受け継いできた会社を、自分たちの意思で次の世代へつないでいくこと。条件やスキームをめぐる議論の背後には、常にそうした想いがありました。
最終的に、案件はお客様が納得できる条件で決着しました。私はその後担当を離れましたが、現在もそのお客様と当社とのお付き合いは続いています。
この経験から学んだのは、一見すると勝ち目が薄く見える局面でも、あきらめずにお客様の側に立ち続けることの大切さです。そして、「良い事業承継」とは専門家が正解を押し付けることではなく、お客様自身が納得して意思決定できる状態をつくることだ、ということでした。それは20年前も今も変わっていません。
コンサルタントとしての変化――「顧客起点」で考える
私は若い頃、自分を「専門家」という立ち位置で捉えていました。多くのことを学び、身に付けた知識をお客様に提供したいというスタンスで仕事をしていました。しかし今では、お客様を起点に考えるようになりました。目の前のお客様が何を考え、何を本当の課題としているのか。その課題に対して、自分が持っているもので何を提供できるのか。足りないものがあれば、新たに身に付けていかなければなりません。まずお客様ありきで、そこから自分にできることを考えるという姿勢に変わってきました。
その背景には、蓮見をはじめ、徹底して顧客起点を貫く先輩たちの姿を間近で見てきたことがあります。若い頃は「そこまでやらなくてもよいのではないか」と感じたこともありました。しかし、長くお付き合いするお客様との大きな仕事をいくつも経験するうちに、一つひとつの場面で懸命にお客様と向き合うことの意味が分かってきました。
また、自分自身も社内で経営に携わる場面が増えたことで、経営者が抱える課題を以前より理解できるようになったと思います。経営者がどのようなことで悩むのかが分かっているので、こちらから課題を引き出すこともできるようになりました。
長期にわたってお客様との信頼関係を築くことは大前提です。そのうえで、課題を解決するために重要なのは、最適な意思決定を、お客様自身に納得感を持ってしていただくことだと考えています。そのためには、必要な情報を提供するだけでなく、お客様の真意をきちんと引き出さなければなりません。ほかの選択肢も理解したうえで、「自分はよい決断ができた」と思っていただけるように、必要なお膳立てをすべて行う。それが、コンサルタントの重要な役割であると考えています。
事業承継を支援するこの仕事は、お客様ごとに状況や課題が異なり、取り組む内容が都度変わります。青山財産ネットワークスには、お客様の役に立つことであれば、裁量を持って自由に提案できる風土があります。難しい課題に対し、少し背伸びをしながら取り組むことで自分自身が成長できる。そうしてさまざまな提案を考え、創造性を発揮できることにやりがいを感じており、だからこそ、この仕事を長く続けてこられたのだと思います。自身の成長がお客様の満足につながることが、この仕事の喜びです。