今回は「不動産特定共同事業」(匿名組合型)について、紹介します。
上記目次に倣い、法務上のポイント、税務上のポイントを交えながら解説していきます。
不動産特定共同事業とは
不動産特定共同事業
不動産特定共同事業とは、複数の投資家が出資等を行い、不動産会社などの専門家(事業者)が事業主体となって実物不動産取引により運用し、収益の分配を行う事業のことをいいます。事業者は「金融庁長官・国土交通大臣」、「国土交通大臣」または「都道府県知事」に対して許可申請を行い、厳しい条件を満たした事業者だけがの不動産特定共同事業法に基づく許可を得ることができます。また、事業年ごとに事業報告書の提出が求められており、厳格な規制のもと、事業を行っています。
- ※青山財産ネットワークスは、金融庁長官・国土交通大臣第59号の許可を取得しております
契約類型
不動産特定共同事業の契約類型は、主に以下の2つがあります。
- 1.任意組合型
- 2.匿名組合型
①任意組合型
投資家が事業者と任意組合契約を締結して金銭や不動産の共有持分を出資し、不動産を共有するとともに、当該事業者が投資家(任意組合員)から委任を受け、不動産取引を営み、その収益を投資家(任意組合員)に分配します。
②匿名組合型
投資家が事業者と匿名組合契約を締結して金銭を出資し、事業者は当該金銭をもとに不動産を取得して不動産取引を営み、その収益を投資家(匿名組合員)に分配します。
- ※任意組合型及び匿名組合型の他に、賃貸借型の契約類型もあります。
賃貸借型は、投資家(組合員)が事業者から不動産の共有持分を取得し、当該不動産の賃貸を事業者に委任し、事業者はその収益を投資家(組合員)に分配することになります。
各契約類型の比較
法務観点
任意組合型 | 匿名組合型 | |
---|---|---|
法的性格 | 組合出資持分 | 組合出資持分 |
根拠条文 | 民法667条 | 商法535条 |
不動産の名義 | 事業者(※1) | 事業者 |
出資方法 | 金銭出資、現物出資、労務出資 | 金銭出資 |
収入 | 不動産所得 | 雑所得 |
責任範囲 | 無限責任 | 有限責任 (出資金額の範囲) |
相続・贈与時の評価 | 相続税評価 | 時価 |
概要図 |
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|
- ※1.共有持分による現物出資の場合、不動産は組合財産として共有となりますが、登記は投資家名義でされます。
- ※2.任意組合型においては、事業者も含めた全組合員が一つの組合契約を締結します。
- ※3.匿名組合型においては、組合員との二者間契約となります。
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- ※不動産特定共同事業法に基づく任意組合型における組成累計額シェア(2021年12月末時点)
税務観点
組合事業に係る所得は最終的に投資家(任意組合員・匿名組合員)に帰属します。
しかし、法律の建て付けの違いがあります。任意組合投資の対外的な法律行為は、投資家(任意組合員)が行います。
一方、匿名組合投資の対外的な法律行為は、匿名組合の営業者が行います。
このような法律の建て付けの違いや契約内容の違いから、課税関係に違いが生じます。
任意組合型 | 匿名組合型 | ||
---|---|---|---|
組成 | 登録免許税 不動産取得税 |
課税あり | 課税なし (分配金に反映) |
消費税 | |||
運用 | 所得税等 | 不動産所得等 (総合課税)(※1) |
原則雑所得 (総合課税) |
法人税等 | 法人の所得(※2) | 法人の所得(※2) | |
消費税 | 資産の譲渡等・ 課税仕入れ等として課税 |
ー (納税義務なし) |
|
相続贈与 | 相続財産・ 贈与財産 |
組合財産の土地等・ 建物等の共有持分 |
匿名組合出資 (債権) |
地位譲渡 | 所得税等 | 組合財産の土地・ 建物等の譲渡 (分離課税) |
権利の譲渡 (総合課税) |
法人税等 | 法人の所得 | 法人の所得 | |
消費税 | 非課税 | 非課税 | |
組合財産譲渡 | 所得税等 | 組合財産の土地等・ 建物等の共有持分 (分離課税) |
原則雑所得 (総合課税) |
法人税等 | 法人の所得(※2) | 法人の所得(※2) | |
消費税 | 資産の譲渡等 として課税 |
ー (納税義務なし) |
- ※1.一定の個人組合員に帰属する組合事業に係る損失は、個人組合員の他の組合事業の所得や他の不動産所得との内部通算の他、他の所得とも損益通算はできません。
- ※2.一定の法人組合員に帰属する組合事業に係る損失は、法人匿名組合員の損金とならない場合があります。
匿名組合型の不動産特定共同事業(法務)
匿名組合は「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」(商法535条)契約であり、営業者(事業者)と出資者(組合員)との二者間の合意により成立します。出資は金銭その他の財産のみによって行い、任意組合と異なり労務による出資は認められません(商法536条)。
- ポイント ①
- 不動産特定共同事業の匿名組合型の場合、各投資家と営業者(事業者)がそれぞれ匿名組合契約を締結します。
- ポイント ②
-
匿名組合契約に基づき投資家(匿名組合員)が事業者に金銭を出資し、営業者(事業者)は当該資金をもとに不動産を取得し、登記も営業者(事業者)名義でされます。
そして、営業者(事業者)は不動産の所有者として管理・運営を行い、事業から得られた収益を投資家(匿名組合員)に分配します。
- ポイント ③
- 匿名組合契約の締結から一定期間経過後に、不動産の売却等により匿名組合契約が終了となり、投資家(匿名組合員)に出資金が償還されることになります。
匿名組合型の不動産特定共同事業(税務)
匿名組合契約に基づいて営まれる組合事業に係る損益は、最終的に分配割合に応じて各匿名組合員に帰属し、各投資家(各匿名組合員)が課税対象者となります。
匿名組合の営業者が法人である場合、営業者は法人税・消費税の納税義務者となりますが、組合事業に係る損益については、法人税課税が生じない仕組みとなっています。
次頁以降、組成から運用に至るまでのフェーズごとの取扱いについて、解説いたします。
- ※匿名組合は投資家(匿名組合員)と有能な経営者(営業者)を結びつける企業形態(箱)で、実際に匿名組合事業を営むのは営業者です。
- ポイント ①
- 匿名組合は、納税義務者である人格のない社団等には含まれないため、法人税・消費税の納税義務がありません。
- ポイント ②
- 匿名組合の営業者(法人)には法人税・消費税の納税義務があります。ただし、組合事業に係る損益に対する法人税課税については、パススルー課税によって、投資家(各匿名組合員)が課税対象者となる仕組みがとられています。匿名組合の営業者(法人)に課される消費税の計算については、パススルー課税のような仕組みはありません。
- ポイント ③
-
匿名組合の営業者に焦点をあてると、組合事業に係る損益(損益分配調整前)がプラスの場合には、投資家(匿名組合員)に分配する損益分配を損金算入して、組合事業に係る損益をゼロとすることができます。
一方、組合事業に係る損益(損益分配調整前)がマイナスの場合には、投資家(匿名組合員)に分配する損益分配を益金算入することで、組合事業に係る損益をゼロにすることができます。
①組成時の取扱い
組合財産としての土地・建物等の取得に係る登録免許税・不動産取得税(流通税)の納税義務者は、匿名組合の営業者です。
匿名組合事業に属する課税仕入れ等については、営業者が単独で行ったことになります。
②運用時の取扱い
匿名組合契約に基づいて営まれる組合事業に係る損益は、最終的に分配割合に応じて各投資家(各匿名組合員)に帰属します。各投資家(各匿名組合員)に所得税等・法人税等が課税されます。店舗や事務所の賃貸収入に係る消費税の納税義務者は営業者となります。営業者が課税事業者の場合には、消費税の申告と納税を行います。なお、投資家(匿名組合員)が受取る分配金は消費税の課税対象外となります。
- ポイント ① 居住者個人
-
組合事業に係る損益がプラスとなった場合、営業者側から利益分配金を支払う際に20.42%の源泉徴収をします。投資家(匿名組合員)には、源泉徴収後の分配金が支給されます。
組合事業に係る損益がマイナスとなった場合、他の雑所得との内部通算はできますが、他の所得との損益通算はできません。
- ポイント ② 内国法人
- 一定の投資家(法人匿名組合員)に帰属する組合事業に係る損失は、投資家(法人匿名組合員)の損金とならない場合があります。
③個人所有の匿名組合出資の相続時・贈与時の取扱い
投資家(匿名組合員)が匿名組合出資を相続・贈与した場合、相続税・贈与税の計算上、相続時・贈与時において匿名組合契約を解除したものと仮定して、投資家(匿名組合員)が返還を受けることができる価額(債権)により評価します。
匿名組合出資の評価方法は、国税庁の質疑応答事例「匿名組合契約に係る権利の評価」の取扱いが参考になります。この質疑応答事例では、主に以下3点が記載されております。
- ポイント ①
- 投資家(匿名組合員)の有する財産は、利益配当請求権と匿名組合契約終了時における出資金返還請求権が一体となった債権的権利であり、その価額は営業者が匿名組合契約に基づき管理している全ての財産・債務を対象として、課税時期においてその匿名組合契約が終了したものとした場合に、投資家(匿名組合員)が分配を受けることができる清算金の額に相当する金額により評価します。
- ポイント ②
- 清算金の額を算出するに当たっては、財産評価基本通達185(純資産価額)の定めを準用して評価します。
- ポイント ③
- 匿名組合には、法人税が課税されないことから、法人税等相当額を控除することはできません。
- ※上記は国税庁質疑応答事例 匿名組合契約に係る権利の評価に基づき作成
④法人所有の匿名組合出資の相続時・贈与時の取扱い
投資家(法人匿名組合員)の法人株式を相続・贈与した場合には、その法人株式の評価の過程で匿名組合出資の評価が必要となります。評価方法は、個人所有の匿名組合出資の評価と同じです。
⑤地位譲渡時の取扱い
投資家(匿名組合員)としての地位を譲渡した場合には、組合員の権利を譲渡としたものとして、譲渡損益に所得税等・法人税等が課税がされます。なお、消費税法上における旧投資家(旧匿名組合員)の出資持分の譲渡は、有価証券に類するものの譲渡として非課税取引となります。
- ポイント ① 居住者個人
-
投資家(匿名組合員)の地位譲渡により生じる所得は、総合課税の譲渡所得として取り扱います。総合課税の譲渡所得は、所有期間が5年を超える譲渡所得とそれ以外の譲渡所得に分けます。前者は長期譲渡所得に分類され、後者は短期譲渡所得に分類されます。
長期譲渡所得は、収入金額から取得費・譲渡費用・特別控除額を差し引いた額の1/2が課税対象となります。短期譲渡所得は、収入金額から取得費・譲渡費用・特別控除額を差し引いた額が課税対象となります。総合課税の譲渡所得は、最大50万円の特別控除額が認められています。
- ポイント ② 内国法人
- 一定の投資家(法人匿名組合員)に帰属する組合事業に係る損失は、投資家(法人匿名組合員)の損金とならない場合があります。
⑥組合財産である事業用不動産譲渡時の取扱い
匿名組合が組合財産である事業用不動産を譲渡した場合に、最終的に分配割合に応じて各投資家(各匿名組合員)に帰属し、所得税等・法人税等が課税されます。組合財産である建物等の譲渡に係る消費税の納税義務は、匿名組合の営業者にあります。
- ポイント ① 居住者個人
-
組合事業に係る損益がプラスとなった場合、営業者側から利益分配金を支払う際に20.42%の源泉徴収をします。投資家(匿名組合員)には、源泉徴収後の分配金が支給されます。
組合事業に係る損益がマイナスとなった場合、他の雑所得との内部通算はできますが、他の所得との損益通算はできません。
- ポイント ② 内国法人
- 一定の投資家(法人匿名組合員)に帰属する組合事業に係る損失は、投資家(法人匿名組合員)の損金とならない場合があります。
- ※詳細については、税理士・税理士法人等の専門家や所轄の税務署等にお問い合わせ下さい。
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