相続対策に不動産は有効?仕組み・活用方法・注意点をわかりやすく解説

2026.07.28
土地持ち資産家 相続対策

相続対策を考えるとき、「現金より不動産のほうが有利と聞くが本当か」「不動産を活用すれば相続税を抑えられるのか」と悩む方は少なくないでしょう。

実際に、不動産は相続対策として有効になり得ますが、すべての方にとって有効とは限りません。

まず一般的に有効とされる理由は、現金と異なる評価の仕組みがあり、相続税評価額が時価より低くなることが多いためです。さらに、土地の使い方や住まい方によっては小規模宅地等の特例などの制度を使える可能性があり、相続税の負担に大きな差が生じることがあります。

ただし、不動産は評価を抑えやすい一方で、固定資産税や維持費、空室リスク、共有や承継の問題など、現金にはない論点も抱えます。相続税だけを見て不動産を選ぶと、結果として相続人にとって不利になることがあります。

よって、大切なのは「不動産が得かどうか」ではなく、「どの資産を、どのように持ち、誰に、どう引き継ぐか」を全体で考えることです。

本記事では、不動産が相続対策として有効といわれる理由、不動産の相続時に関わる税金、不動産を活用した代表的な相続対策、注意したいポイント、生前・相続後にできることを整理します。税額の話だけでなく、何を優先して判断するべきかという視点も含めて解説していくため参考にしてみてください。

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この記事で押さえたいポイント

  • 不動産は、時価より相続税評価額が低くなりやすく、現金より相続対策に向くことがあります。
  • 代表的な対策は、小規模宅地等の特例の活用、賃貸不動産化、相続時精算課税制度の活用です。
  • ただし、不動産は評価だけでなく、維持費、管理負担、共有、活用リスクまで含めて考える必要があります。
  • 相続対策は、できるだけ生前から準備する方が選択肢を広げやすくなります。

不動産を相続すると、どんな税金が関わる?

不動産を相続したときにまず関係するのは、相続税と登録免許税です。

登録免許税は、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記の際にかかる税金です。税率自体は比較的シンプルですが、不動産を相続した以上、手続きとして避けて通れません。2024年4月より相続登記は義務化されており、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要がある点には注意が必要です。

このように、不動産を相続することで登記に関する手続きや費用が発生します。

一方で、金額インパクトが大きいのは相続税です。相続税は、相続で取得した財産の評価額が基礎控除額を超える場合に課税されます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、相続人の人数によって課税ラインが変わります。

また、不動産は相続時だけでなく、保有中にも固定資産税や都市計画税がかかる場合があります。賃貸不動産であれば、相続後は不動産所得に対する所得税・住民税も関係してきます。さらに、相続後に売却すれば譲渡所得税の問題も生じます。

つまり、不動産は「相続時だけの税金」で終わる資産ではないため、相続対策のひとつとして不動産活用を検討している方は注意する必要があります。相続税だけでなく、保有・運用・売却まで含めて税金と付き合う必要がある資産だという前提を持つことが重要です。

現金より不動産のほうが相続対策として有効といわれる理由とは

相続対策として不動産が有効といわれる理由は、現金と不動産では評価の仕方が異なるためです。

現金は、相続税評価額が額面金額と一致するため、100万円なら100万円、1,000万円なら1,000万円として評価されます。
一方、不動産は土地・建物ごとに定められた評価方法に基づいて相続税評価額を算定するため、時価より低い水準になりやすい傾向があります。

この「時価と評価額の差」が、不動産が相続対策に使われる大きな理由です。たとえば、同じ1億円相当の資産でも、現金なら1億円で評価されますが、不動産であれば相続税評価額がそれより低くなる可能性があります。評価額が低くなれば、その分だけ相続税の計算上は有利になります。

ただし、ここで注意したいのは、不動産であれば何でも有利というわけではない点です。不動産の種類、立地、用途、使い方、借入の有無、将来の活用可能性によって、相続対策としての効果は大きく変わります。

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そもそも不動産の評価はどう決まる?

不動産が相続対策として有効とされる理由の一つに、相続税評価額の仕組みがあります。

現金は額面そのままで評価されるのに対し、不動産は評価方法によって時価より低く算定されるケースが多いためです。

この評価額の仕組みを理解することで、なぜ不動産が相続対策として使われるのかがより明確になるため、土地と建物それぞれの評価方法を整理していきたいと思います。

土地の評価方法

土地の評価は、主に路線価方式または倍率方式で行われます。路線価方式は、その土地が面する道路ごとに設定された1平方メートルあたりの価額をもとに計算する方法です。土地の形状や奥行き、使い勝手によって補正が入ることもあります。

路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定倍率を掛ける倍率方式が用いられます。

土地は、同じ面積でも、形状や接道状況、利用のしやすさによって評価が変わります。そのため、相続では「面積だけで見ない」ことが重要です。

建物の評価方法

建物の評価は、一般に固定資産税評価額をもとに考えます。建物の相続税評価額は時価そのものではなく、固定資産税評価額ベースで決まるため、これも時価より低くなることが多い領域です。

さらに、建物が賃貸に供されている場合には、一定の減額要素が働くことがあります。つまり、土地も建物も、「どう使われているか」によって評価が変わり得ることが、不動産相続の特徴です。

不動産を活用した主な相続対策とその注意点

不動産を使った相続対策として代表的なのは、次の3つです。

  • 小規模宅地等の特例を活用する
  • 賃貸不動産化(アパート・マンション建築等)を検討する
  • 相続時精算課税制度を活用して生前贈与する

いずれも有効な場面がありますが、前提条件や注意点を理解しないまま選ぶと逆効果になることがあります。

小規模宅地等の特例を活用する

相続対策の中でも、税額インパクトが大きい制度の一つが小規模宅地等の特例です。

この特例は、一定の要件を満たす宅地について、相続税評価額を大きく減額できる制度です。居住用や事業用の宅地では大きな減額が受けられる可能性があり、相続税額に数千万円単位の差が出ることもあります。

特に「相続対策といえば賃貸経営」と考えがちですが、もともと特例が使える宅地であれば、アパート建築などの大きな投資をしなくても、相続税負担が大きく抑えられることがあります。つまり、先に確認すべきは「何かを新しくやること」ではなく、今の資産状態で使える特例があるかどうかです。

どのような土地が対象になるか

代表的なのは、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた土地です。一定の要件を満たせば、被相続人が老人ホームに入所していた場合でも対象となることがあります。

また、事業に使っていた土地や、貸付事業用の土地が対象になるケースもあります。居住用に限らず、事業や貸付の実態によって評価が変わる点が、この制度の重要なポイントです。

注意点

小規模宅地等の特例は、減額効果が大きい反面、要件は細かく定められています。たとえば「同居」といっても、住まい方や登記の仕方によっては適用できないことがあります。

二世帯住宅でも、登記の状態や生活の独立性によっては特例が受けられない場合がありますし、被相続人が老人ホームに入所した後に自宅を第三者へ貸してしまうと対象外になることもあります。

この制度は、「知っているかどうか」で差が出る典型例です。相続税対策として新しいことを始める前に、まずは自宅や事業用地にこの特例が使えるかを確認することが重要です。

アパート・マンションを建てる

更地や自用地をそのまま持っている場合、賃貸不動産化によって相続税評価額を抑えるという考え方があります。アパートやマンションを建てると、借入が発生することにより純資産ベースでの評価が下がる可能性があり、さらに土地・建物ともに賃貸用としての評価減が働くことがあります。

賃貸中の建物や、その敷地に関する評価には一定の減額要素があるため、条件が揃えば相続税評価を抑える手段になり得ます。

なぜ相続対策に有効とされるのか

ポイントは、土地だけを持っているときよりも、第三者に貸し付ける建物が建っている土地の方が、相続税評価額が下がる可能性がある点です。建物自体も、賃貸用であれば一定の評価減が見込める場合があります。

また、賃貸収入が入ることで、資産運用としての意味も持たせやすいことから、相続対策と土地活用を兼ねた手段として検討されることが多くあります。

注意点

ただし、アパート・マンション建築は、相続対策としてはリスクの高い手段でもあります。特例のように、手続きが終われば完了というものではなく、その後の賃貸経営が継続することを前提に考えなければなりません。

入居が決まらなければ、空室リスクを抱えたまま借入返済だけが続く可能性があります。品質の低い建物を安く建てれば、将来の修繕費やクレーム対応が増え、結果として家族の負担を大きくすることもあります。

つまり、賃貸不動産化は「相続税が下がるから建てる」のではなく、「長期的な賃貸経営として成立するか」を前提に判断するべき対策です。相続対策であると同時に、事業判断でもあるという認識が欠かせません。

相続時精算課税制度を活用して不動産を贈与する

不動産の生前対策としては、相続時精算課税制度を活用した贈与も選択肢になります。

この制度は、一定の年齢要件等を満たす贈与者から子や孫へ財産を贈与した場合に、一定額までは贈与時点で贈与税を抑えつつ、相続時に精算する仕組みです。

不動産の場合、将来的に値上がりが見込まれる資産や、早めに持ち主を移しておきたい資産について使われることがあります。贈与時点で移しておくことで、その後の価値上昇分を次世代側へ乗せやすくなるからです。

注意点

ただし、相続時精算課税制度は「贈与税が一切かからない制度」ではなく、相続時に精算される仕組みです。税金が完全に消えるわけではないという点は正しく理解しておく必要があります。

また、相続対策として生前贈与を考える際は、「亡くなる直前の小口贈与で何とかしよう」と考えないことも大切です。相続開始前の一定期間に行った贈与については、相続税計算で加算対象になることがあるためです。

つまり、生前贈与を使うなら、相続直前の応急処置ではなく、早い段階から計画的に行う方が効果を出しやすいといえます。

不動産を活用した相続対策は相続開始前でも可能

不動産の相続対策は相続開始後ではなく、生前から準備する方が、圧倒的に選択肢が広がります。

たとえば、小規模宅地等の特例を使えるように住まい方や利用状況を見直す、賃貸不動産化を計画する、相続時精算課税制度を使った贈与を検討する、家族で財産の分け方を話し合うといったことは、いずれも生前だからこそできることです。

不動産に関する対策は、決めてすぐ完了するものばかりではありません。建物を建てる場合は、計画、建築、入居、運営の安定まで時間がかかりますし、家族間の認識共有にも時間が必要です。相続対策は「必要になってから始めるもの」ではなく、「余裕があるうちから考えるもの」と捉えた方が、結果的に納得感のある着地になりやすくなります。

不動産を活用した相続対策は相続後では限界がある

相続後にまったく対策ができないわけではありません。たとえば、小規模宅地等の特例は相続発生後に要件を確認し、申告時に適用を検討する制度です。また、土地の減額要因を見つける、土地の分筆を検討するなど、一定の見直し余地があるケースもあります。

ただし、相続後にできる対策は限られます。現実の利用状況を無視した分筆は不合理と判断されることがありますし、相続発生後にできることは、すでに持っている資産の見方を調整する程度にとどまることも多いです。

不動産相続では、相続後に何とかするより、生前から備える方が圧倒的に有利です。相続後にできることがゼロではない一方、相続後だけで十分な対策を打つのは難しい、という理解が現実的です。

相続対策には「不動産がベスト」ではなく「全体最適」で考える

ここまで見ると、不動産は相続対策として有力に見えるかもしれません。確かに、不動産は評価上のメリットがあり、特例や活用方法によって相続税負担を抑えられる可能性があります。

しかし、重要なのは「不動産がベストかどうか」ではありません。現金の方が、自由度が高いケースも、金融資産の方が分けやすいケースもあります。また、不動産のまま持つ方がよいのか、法人化した方がよいのか、売却した方がよいのかも、家族構成や資産内容によって変わります。

青山財産ネットワークスが重視しているのは、相続税の多寡だけで判断しないことです。納税資金をどう確保するか、誰が管理するか、次世代が維持できるか、共有を避けられるかまで含めて、財産全体で見て考えることが大切です。

つまり、相続対策における不動産は「ベストかどうか」で考えるのではなく、「全体最適の中でどう位置づけるか」で考えるべき資産です。

よくある質問(FAQ)

相続対策では、現金より不動産の方が必ず有利ですか。

いいえ。不動産は相続税評価額を抑えやすい一方で、維持費や管理負担、共有、空室リスクなどの論点があります。現金より有利になることはありますが、常にベストとは限りません。

相続対策として、まず何を確認すべきですか。

まずは、現状の財産評価、相続税の発生可能性、使える特例の有無を確認することが重要です。新しい対策を始める前に、今ある資産で使える制度がないかを整理した方が合理的です。

小規模宅地等の特例は誰でも使えますか。

いいえ。住まい方や利用状況、相続人の要件など、細かな条件があります。減額効果が大きい制度だからこそ、適用要件の確認が重要です。

相続対策のためにアパートを建てれば安心ですか。

必ずしもそうではありません。賃貸経営として成立するか、空室リスクや修繕負担を負えるかまで見なければ、相続税対策が家族の負担増につながることがあります。

相続時精算課税制度を使えば、税金はかからないのですか。

その場での贈与税を抑えられる場合はありますが、相続時に精算される仕組みです。税金が完全になくなるわけではありません。

まとめ|不動産を活用した相続対策は、税額だけでなく相続後を見据えて判断する

不動産は、現金に比べて相続税評価額を抑えやすく、特例や使い方によって相続対策として有効に働くことがあります。特に、小規模宅地等の特例、賃貸不動産化、相続時精算課税制度などは、状況に応じて大きな効果が出る可能性があります。

一方で、不動産は税金だけ見ればよい資産ではありません。維持費、管理負担、空室や修繕のリスク、共有、承継後の運営まで含めて考える必要があります。相続対策のために選んだ方法が、かえって家族の負担を増やしてしまうこともあります。

だからこそ、相続対策で不動産を活用するかどうかは、は「税金が下がるか」だけで決めるべきではありません。何を残し、誰が管理し、どう引き継ぐのかまで含めて、財産全体の中で最適な方法を考えることが重要です。

青山財産ネットワークスが支援できること

青山財産ネットワークスは、創業30年以上の独立系総合財産コンサルティング会社として、相続・事業承継・不動産に関するさまざまな課題解決を支援してきました。

不動産の相続では、相続税の試算だけでなく、土地・建物の評価、特例の適用可否、家族間の分け方、納税資金の確保、売却や活用の判断まで、複数の論点が同時に絡みます。

青山財産ネットワークスでは、会計士、税理士、弁護士等の国家資格保有者を含む専門家が連携し、相続税だけに偏らず、財産全体の最適化という視点から支援しています。不動産を残すべきか、組み換えるべきか、活用するべきかまで含め、総合的に整理したい方は、お早めにご相談ください。

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