2021.10.06
財産承継
相続対策には不動産がベスト?対策方法と注意すべきポイントを解説

相続の際に、実際にいくらが遺族の手元に残るかには、税金が大きく関係します。
特に不動産の相続の場合は、不動産の評価額に対して税額が決まるため、不動産の評価を下げることで税額が大きく変わります。
さらには、不動産の状況や住まい方によっては特例や控除を受けられるため、「相続対策には不動産がおすすめ」と言われているのです。

この記事では、不動産で相続対策をする方法から、適用要件、注意点まで詳しく解説します。
「知らなかった」だけで負担が増える可能性があるのが相続です。最後まで読んでしっかりと対策方法を検討しましょう。 

不動産を相続したら税金はいくら払う?

不動産を相続すると、「相続税」と「登録免許税」が発生します。
登録免許税は不動産の名義を変更するための税金であり、税額も「課税標準である固定資産評価額×0.4%」とそこまで高くはありません。重要なのは相続税です。

相続税とは、相続によって取得した財産に対して発生する税金です。
そのため、不動産も土地や建物の評価によって金額が与えられ、その金額に対して相続税が課税されるのです。
相続税は全ての相続人に発生するわけではありません。
相続によって取得した財産の評価金額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)以上の場合のみ、納税義務が発生します。
仮に、相続人が1人で、財産評価金額が3,000万円であれば相続税は課税されません。

相続時だけではなく、不動産を所有していることで発生する税金もあります。
「固定資産税」と呼ばれる税金です。エリアによっては、「都市計画税」も併せて課税されます。
これにも課税の条件があります。課税標準額総額が一定額未満(土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円)の場合には、固定資産税は課税されません。
相続する不動産に賃貸物件などが含まれる場合、所得税と住民税が別途必要になります。相続した不動産を売却するとなると、また別の税金が発生します。
このように、不動産の相続には、相続時のみならず相続後も税金が密接に関わっているのです。

現金よりも不動産の方が相続対策になるって本当?

相続対策には、現金ではなく不動産で相続をした方が効果的です。
これには、不動産への「評価」という考え方が大きな理由となっています。
相続する資産の評価額が低ければ課税も低く、評価額が高ければ課税も高くなります。
そのため、不動産での評価が低くなり、結果的に課税が減ることが、不動産による相続対策の考え方です。
株式のような有価証券は対象の会社の景気によって価格が上下しますし、実際には動きのない株式には一定の評価方法が適用されたり、いくつかの計算方式で評価額は変動します。
そして現金では、100万円は100万円、1,000万円は1,000万円と評価されます。

一方不動産は、「相続税評価額の引き下げ」という仕組みが利用できます。
不動産は、売却時の価格(時価)よりも相続税評価が低くなることが多いのです。
これによって、現金より土地で相続をするほうが得になると言われています。

それでは、その評価方法について詳しくご説明していきます。

1.土地の評価方法

土地の評価には「路線価方式と倍率方式」があります。
路線価方式とは、土地の1平方メートルあたり評価額をいい、国税局長によって決定されています。
対象区域の路線価が設定された道路に面した土地の総面積を乗算して算出します。また、土地の形状が間口より奥行きが狭まっていて建設が困難な土地形状においては減額するなど補正がなされます。
倍率方式とは固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる方法で、路線価が設定されていない土地もあります。
それぞれの土地の路線価は国税庁ホームページで確認することができます。
参考:国税庁公式サイト No.4604 路線価方式による宅地の評価

2.建物の評価方法

建物については、固定資産税評価額に一定倍率を乗じた金額が評価額とされます。
固定資産税評価額は、お住まいの所在地の市町村役場で確認できます。
評価額は固定資産税に所定の倍率をかけた計算で算出されますが、この「倍率」は、現在、全国一律で1.0倍とされていますので、結局、固定資産税評価額=評価額となります。

不動産の相続対策をご紹介 

それでは、実際に不動産を相続する上で、相続対策となる方法をご紹介いたします。

小規模宅地等の特例を利用する
アパート・マンションを建てる
「相続時精算課税制度」を利用して不動産を贈与する

一つずつ、適用要件や注意点を詳しく解説していきます。

小規模宅地等の特例を利用する 

特例の一つである「小規模宅地等の特例」は、最大80%の課税価格の減額という大きな減額であることから細かく要件が指定されています。
長く住んでいた居住宅で同居の母が亡くなって相続をするという状況で、住宅メーカーから賃貸建設などで借入を行えば相続税が減額できると勧められることがあります。
しかし、小規模宅地等の特例を受ければ相続税が0円になることもあるのです。「相続対策といえば賃貸経営」という先入観を持たずに、この制度を知っているかどうかで負担が大幅に減少します。
小規模宅地等の特例では住んでいた土地、事業をしていた土地、貸していた土地などさまざまな要素で減額率が算出されます。
●特例の適用要件   
特定居住用宅地等は、亡くなった人、または亡くなった人と同じ生計の親族が住んでいた土地が対象となります。 亡くなった人が亡くなる時点で自宅に居住せず、老人ホームに入居していた場合でも、亡くなった人が要介護認定を受けているなど一定の要件を満たしていれば適用が可能です。 また、息子が大学進学のため地方へ転出し住んでいたマンションが親所有のものであれば、親が亡くなったとき、息子が住んでいた地方のマンションは特定居住用宅地等に該当します。 この特例が適用されるのは、上記の特定居住用宅地の他に、「特定同族会社事業用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」があります。 住居に限らず、駐輪場などの事業に活用していた土地も含まれますので、詳細は国税庁のホームページよりご確認ください。

参考:国税庁公式サイト No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
●特例の効果     
この特例を利用することによって、居住用・事業用の宅地に関しては80%、事業用として他人に貸し付ける土地に関しては50%減額されます。
いずれもいくつかの条件で算出されますが、これを最大限に生かせば大幅な相続対策が可能となります。
 
土地の評価額が大きければ、納める課税額も大きくなります。
不動産の評価額が下がることは、結果として財産総額評価に対する税額も下がることになります。
小規模宅地等の特例を上手に使用すると、納税額に数千万円もの違いが出る事もあります。
納税の額面が大きく変わってきますので是非とも知っておきたい制度です。
要件を満たしているかどうかをよく調査したうえで、活用を検討しましょう。
●注意点
この特例の注意点としては、「同居」と一言に言っても住まい方によっては特例が受けられない可能性もあるということです。

例えば、二世帯住宅で生活スペースを分割しており、「共有登記」ではなく「区分所有登記」をしている場合はこの特例は認められない場合があります。
また、完全に同居をしていても転勤などで子供が全員家に住んでいない状態で親が亡くなると、同居と認められずこの特例は受けられなくなります。
被相続人が老人ホームに入所した後で、元の自宅を他人に貸してしまったという状況においても適用外となります。

このように、細かい条件が決められているので申請手続きの前に国税庁の公式サイトで適用要件を細部まで確認するようにしましょう。

アパート・マンションを建てる  

相続対策にはいろいろありますが、建物が建っていない土地を相続したい方にとってはアパート・マンションを建設経営するという方法がおすすめです。
アパート・マンションを建てると、マンションローンなどで銀行よりの借入が増え、総財産の評価額が下がることによって、納める課税額が減少します。あわせて賃貸収入も入ってくることになり、長期的に高い経済効果が見込めます。
 
賃貸収益が増すと、所得税の納税も必要ですので、相続対策にアパートを建てて借入れしたものの、経営負債のほうが増してしまっては本末転倒です。
賃貸経営でどのくらい相続対策できるのかを考えつつ、収益や利回り、デメリットなどを考慮して賃貸経営を失敗しないための方法を模索しましょう。
●土地、建物の評価が下がり控除額が上がる   
アパートを建築した場合、第三者が賃貸物件を利用し、建っている土地を保有している場合は、さらに課税対象額が低くなります。
第三者が利用する賃貸物件は「貸家建付地」と定義され、「借地権割合」と「借家権割合」によって、課税評価額の減額措置を受けることができます。
アパート経営をする場合、入居者を住まわせることで、土地だけを持っている場合に比べて相続税を減額することができます。
 
自分で住んでいる建物と同様に、固定資産税評価額をもとに相続税が計算され、賃貸として使用されている場合はそこからさらに減額措置が適用されるというわけです。
ただ、建物に関しては、実際に貸し出されているもののみが減額措置の対象で、空室は対象外となりますので注意が必要です。

ただ建てればいいというわけではなく、入居者がいなければ相続対策にはなりません。
必ず満室運用が見込める場合のみ、この手段を検討するようにしましょう。
●注意点
注意点は、相続対策としてはリスクが高い手段であることです。
他の特例のように、手続きをすれば相続時に減税されて終わりではなく、将来的に賃貸経営を続ける見通しが必要になっていきます。

アパート・マンション建設は資産を生み出す未来への投資を兼ねていますので、その品質にも気を遣ったほうがいいでしょう。
建設時のコストをできる限り抑えるのも支出節減のポイントとして考えられますが、コスト削減ばかり重視しておろそかな品質のアパートが出来上がると、のちに補修修理や苦情対処の工事などが続出して、思いがけない出費が発生することになります。
そうなると、改善修理のためにオーナーが破産に追い込まれる事態となることも珍しくありません。

不動産の相続対策としてはオーソドックスな方法の一つではあるため、相続対策を兼ねた土地活用としてプロフェッショナルに相談をすれば解決できることが多いでしょう。
不動産会社だけでなく、不動産の相続に特化したコンサルティング会社に早めに相談をすれば、リスク回避が望めます。

「相続時精算課税制度」を利用して不動産を贈与する

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の被相続人から20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合、限度額の2,500万円以下であれば贈与税が課税されない特例です。
贈与の時点で課税はされないで、相続時に財産に応じて相続税が発生するので、相続時精算課税を使って生前贈与をすれば、贈与税がかからず相続対策となるのです。
相続税の課税は相続する時点での贈与税の時価で決定されます。ですからあらかじめ価値が上昇するであろう財産を控除範囲内で贈与しておくことで相続時の課税額を減らし大幅な相続対策となります。
●相続税はかかるが、贈与税がかからない
生前贈与は、110万円以下であれば贈与税がかからない基礎控除があるものの、やはり贈与税による税額が大きく敬遠されがちでした。
しかし、近年の高齢化の進展に伴って、相続による資産移転を早い段階で行うことで若い世代による経済活動の活性化に繋がるという観点から、この「相続時精算課税制度」が制定されました。

●注意点
この特例の注意点は、贈与時は非課税でも相続時に相続税が発生するシステムであることです。 もともと贈与税というものは、贈与そのものに相続税を減少させる効果があるため、相続税を補完する役割があるとも言えます。 そのためこの特例でも、税金が全額免除になるというわけではないことは被相続人、相続人ともにきちんと理解した上で活用するようにしましょう。

相続開始前でも対策は可能

このように、不動産の相続対策は税金の特例から賃貸住宅建設まで、さまざまな方法があります。
全てに共通しているのは、「相続開始前、できるだけ早いうちから対策を始める」ことが重要という点です。
「持病などから自身の死期を悟って初めて相続について考え、慌てて対策を行う」というケースが多いですが、相続対策には冷静かつ公平な判断が求められます。
特に不動産に関する内容は、健康な内から、親族内で話し合いを行うことが得策です。

また、相続の直前になって「相続税を少しでも減らすために少しずつ生前贈与をする」という考えを持つ方もいますが、これはあまり良い方法ではありません。生前贈与に、「3年内加算のルール」というものが制定されたためです。
生前贈与をしてから3年以内に、贈与をした方(被相続人)が亡くなってしまった場合には、贈与額に関係なく全て相続税が加算されるというルールです。
参考:国税庁公式サイト No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

生前贈与で相続をしたいのであれば、先ほどご紹介した「相続時精算課税制度」を利用してまとめて贈与をする方法をおすすめします。

相続後にできる対策には限界がある

では、相続後にできる対策は無いのか?というと、そうではありません。
今回紹介した中では、「小規模宅地等の特例」は相続発生後にも行うことができる対策です。
その他には、
土地の減額要因を探して評価額を下げる
土地を分筆する
といった方法なら、相続後でも行えます。

土地の評価額が下がれば課税額は減少するため、土地の評価の減額要因を見つけ出すことが相続開始以後にできる相続対策の一つの手段です。
また、土地の分筆により、土地形状を意図的に不整形にしたり、あるいは接する路線の数を減少させたりすれば、土地の評価額は下がり、相続税の納税額は減少します。
ただし、現実の土地の利用状況を無視するような分筆は、不合理分割と認定され、減額効果がない場合があります。
 
このように、不動産に関しては相続後にできる対策に限りがあります。

相続対策は生前から準備をすることがベスト

不動産に限らず全ての相続に言えることですが、対策を講じるのであれば早めに始めることが一番です。
特に不動産は、対策のためにアパートを建てることを決めたとして、そこから実際に入居者が入って経営が安定するまでは何年もかかります。
さらに、死後の賃貸事業継承者の決定、本人への指名まで生前に行っておく必要があります。
ここをきちんと決めないまま相続が発生すると、遺族間で遺産の分割を争う「争族」となりかねません。

控除や特例の対象外となってしまう場合や、相続対策のための土地活用に気が進まない際は、売却をすることも視野に入れましょう。

まとめ

今回は、不動産の相続対策について、詳しく解説いたしました。
不動産は時価に比べ評価額が低く、結果的に課税額が減少するため、評価が低くなる手段をとれば確かに相続対策にはなります。
一方、対策の中には賃貸経営といった別のリスクが発生するものもあります。
相続対策のために実施したことによって、逆に遺族の負担を増やしてしまうことがないように、所有している不動産に最適な対策方法を慎重に決めることが大切です。

不動産の相続にお困りでしたら、専門家に相談をするというのも一つの手です。
とは言っても、弁護士か、または司法書士か、相談先に迷ってしまうこともあるでしょう。
相続という、直接自身の財産に関わる内容ですから、気楽に他人に話せることではありません。
そんな時は、不動産の相続を専門的に取り扱うコンサルティング会社へ相談してみましょう。
不動産相続のプロフェッショナルなら、あらゆるケースに対応できます。

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