2022.04.27
財産承継財産運用
生産緑地とは?2022年問題や相続した場合の対処法を解説

生産緑地とは、農地の保全を目的として制度化された農地のことです。一般市街化区域農地に比べて固定資産税、都市計画税などの税額が低く、要件を満たせば贈与税や相続税の納税猶予を選択することができるため、税負担を軽減しながら農業を営むことが可能です。
 
農地の一斉売却が懸念された2022年問題は法改正によって解決に向かい、生産緑地の指定継続が10年毎になったためさらに活用しやすくなりました。
本記事では、そんな生産緑地の概要や指定を受けるメリット・デメリット、相続するときの手続きなどわかりやすく解説していきます。 

生産緑地とは?

生産緑地とは、市街化区域内にある農地などで、農業を継続すれば税制優遇が受けられる土地のことです。良好な都市環境の形成を図るために、市街化区域内農地の緑地としての機能を活かし計画的に農地を保全していくために定められました。
まずは生産緑地の定義や、「2022年問題」について解説いたします。

生産緑地の定義

生産緑地は、生産緑地法第3条にて、以下のように定められています。

  • 良好な生活環境の確保に効果があり、公共施設などの敷地に適している
  • 500㎡以上の面積がある(各市町村の条例によっては300㎡以上)
  • 農業等の継続ができる条件がそろっている
生産緑地は、市街化区域内の農地で上記の条件を備えていれば指定を受けることができます。簡単に言うと、都会にある農地で、農業が継続されていて公共施設も建てられるほど広い面積がある土地ということです。生産緑地の指定を受けると、農業を続けなければなりませんが税制優遇が受けられるようになります。

生産緑地と一般市街化区域農地の違い

生産緑地のほかに、一般市街化区域農地と呼ばれる農地もあります。それぞれの違いについて見ていきましょう。
 
生産緑地は農業をするために利用される農地であるのに対し、一般市街化区域農地はいつでも転用が可能であるため、宅地と同等に扱われる農地です。生産緑地は税制優遇が受けられますが、一般市街化区域農地は通常の土地と同様に扱われるため税額が高くなるという特徴があります。

生産緑地2022年問題で懸念されたことと現状

2022年問題とは、現在ある生産緑地が2022年に大量に指定解除され、農地が一斉に宅地として売却されたり、宅地活用され土地価格が急落したり緑地が急速に減少する可能性があるという仮説のことです。
現在、存在する生産緑地のほとんどは、1992年の生産緑地法の改定により指定されたものです。このとき生産緑地に指定されてから30年の間は税制優遇が受けられる代わりに土地を売却したり、活用することができませんでした。
しかし、2022年には多くの生産緑地が指定から30年経過することで税制の優遇措置や制約がなくなるために一斉に売却されてしまう可能性があり、不動産の地価が急激に下落してしまうのではないかということと、緑地の減少が懸念されていました。
 
この懸念を受け2017年には生産緑地法が改正され、新たに導入された特定生産緑地制度によって税制優遇を10年単位で延長できるようになりました。30年では負担が大きいですが10年毎の更新になれば将来を見通しやすくなるため、ほとんどの農家が特定生産緑地に移行しました。こうして農地が一斉に売却されてしまうという懸念は払しょくされ、2022年問題は解決に向かっています。

生産緑地指定を受けるメリット

生産緑地指定を受けるメリットは、税制優遇を受けられる点にあります。具体的には、固定資産税の減免、贈与税や相続税の納税猶予です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

固定資産税の減免

生産緑地は固定資産税が減免されます。一般的な市街化区域内農地は宅地並課税とされているのに対し生産緑地の固定資産税は農地評価及び農地課税とされており、税額は低く設定されているのです。
農地区分とそれぞれの評価方法、負担調整措置の違いを表にまとめました。

農地区分   評価方法  負担調整措置
 一般農地  農地評価  農地課税
 市街化区域農地  生産緑地  農地評価  農地課税
 一般市街化区域農地  宅地並評価  一般農地に準じた課税
 三大都市圏特定市の
市街化区域農地
(特定市街化区域農地)
 宅地並評価  宅地並課税


生産緑地以外の市街化区域農地は宅地になることが想定されているため従来の土地と同じように宅地並評価がなされます。これに対し、生産緑地は農地として保全する目的で指定されているため、一般農地と同様に評価されるのです。
生産緑地はその他の市街化区域農地と比べても数百分の1程度と大幅に軽減されています。 

贈与税の納税猶予

生産緑地であれば、一定の要件下において一定額の納税猶予を受けることができます。
具体的には、3年以上農業を営んでいる農地の所有者が、農業を引き継ぐ相続人に農地を一括して贈与し、相続人がその農地で農業を続ける場合に贈与者死亡の日まで贈与税の納税が猶予されます。
 
このとき贈与者と相続人(受贈者)には以下の要件があります。

贈与者  贈与する日まで引き続き3年以上農業に従事している
※例外要件あり
 受贈者 ・贈与者の推定相続人の1人である
・贈与を受ける日時において18歳以上である
・贈与を受ける日までに引き続き3年以上農業に従事している
・贈与を受けた後すみやかにその農地の農業経営を行う
・農業委員会の証明の時において認定農業者等であること
 
また、納税猶予を受けるためには農地法第3条の許可が必要になるので、農業委員会に相談するようにしましょう。

相続税の納税猶予

生産緑地では、贈与税と同様に相続税の納税猶予を受けることもできます。大半の方は贈与よりも、この相続による納税猶予を受けるケースが多いです。相続された生産緑地を引き続き農業のために使用する場合、一定の要件下で一定額の納税猶予を申請可能です。相続税については、通常の評価額と農業投資価格の差額分が猶予されます。
 
農業投資価格とは、農地等が恒久的に農業用に使われる場合に、通常の取引が成立するとして公示された価格のことです。これにより生産緑地の評価はかなり低い水準になります。
 
また相続税は、以下の場合に免除、または打ち切りになることがあります。
 
相続税免除の要件
  • 相続人の死亡
  • 農業後継者に生前一括贈与
  • 市街化区域農地で20年以上農業を継続(生産緑地、三大都市圏特定市は終身)
相続税納税猶予の打ち切り要件
  • 農地を譲渡、転用、貸与する
  • 継続届出書未提出
  • 納税猶予を受けた相続税が免除になる前に相続人が農業を廃止
納税猶予が打ち切られた場合、相続時までさかのぼって相続税猶予分が課税されてしまい、さらに利子税が課税されるため注意が必要です。

生産緑地指定のデメリット

生産緑地は農地を保全するための土地なので、税制面で優遇が受けられるメリットがありますが、一方で農地の管理が必要であったり、農地以外の転用が不可能といったデメリットもあります。
デメリットもしっかりと把握し、生産緑地について理解を深めていきましょう。

農地の管理が必要

生産緑地法は、生産緑地の所有者に対して、生産緑地を農業等のために利用すること、および農業等の継続ができるよう設備を維持・管理することを義務付けています。生産緑地は指定を受けてから30年間は農業を行い、土地を管理し続けなければなりません。万が一農地としての管理がされなくなった場合にはメリットである税制優遇が受けられなくなってしまうのです。

現在では所有者自身だけでなく、要件を満たして農地の貸し付けを行った場合でも管理をしていると認められていますが、それでもずっと管理に携わらなければならないのはデメリットと言えるでしょう。 

行為制限により農地以外の転用が不可能

生産緑地は先述のように農地を保全するための制度なので、農業のために利用する義務があります。そのため農地以外の用途に転用・売却することが不可能となっています。また生産緑地で建物を建築したり土地造成工事をしたりするには市町村の許可が必要なため土地としての汎用性が低いこともデメリットだと言えます。 

生産緑地を相続した場合の対処法は?

税制優遇が受けられるメリットがある反面、農地の管理をし続ける必要があり行為制限も設けられている生産緑地。そんな生産緑地を相続した場合の対処法について見ていきます。具体的には、生産緑地指定を継続するか、一部またはすべて指定解除するかに分けられます。
2つのパターンごとに解説いたします。

1.生産緑地の指定を継続

まずは生産緑地の指定を継続する場合について見ていきましょう。生産緑地の指定を継続するとこれまで通り農業を継続し、農地を維持・管理し続ける必要がありますが、固定資産税の減免や贈与税・相続税の納税猶予といった税制優遇措置を引き続き受けることができます。
 
また、先述のように自身で農業を続けるだけでなく、一定の要件のもと農地として他の農家に貸し付けたり公衆利用のために貸し付けたりする方法も認められているため、現状を鑑みたうえで問題なければ指定継続することによるメリットが大きくなるでしょう。

2.生産緑地の指定を解除

生産緑地の指定を継続することが状況的に困難であったり、以下の2点に該当しなければ解除できません。
生産緑地の指定解除の要件は次の通りです。

  • 農業等の主たる従事者の故障等により継続ができなくなった場合
  • 生産緑地の指定を受けてから30年が経過した場合
生産緑地の指定を解除すると農地以外の用途に転用することができるため、土地の開発や売買、また宅地として貸し出すなど選択肢が広がります。一方、これまで受けてきた税制優遇措置が受けられなくなりますが、農地以外の用途に転用した方が利益が見込めるのであれば指定解除も検討してみましょう。  

生産緑地の相続に関する手続き

生産緑地の相続に関して、相続税の申告や納税猶予を受ける場合、生産緑地指定を継続または解除する場合で手続きが異なります。
必要書類から順に解説いたします。

継続・解除ともに必要な書類

生産緑地の指定継続・解除の手続き方法はそれぞれ異なりますが、必要書類はともに同じです。

所有権移転登記

生産緑地を相続したら、まずは不動産の所有権移転登記をする必要があります。所有権移転登記は管轄の法務局に必要書類を提出することで申請可能です。必要書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 被相続人の除票 または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 固定資産税評価額証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書
また合わせて登録免許税の納付が必要となり、税額は固定資産課税台帳上の価格に対して1,000分の4程度です。所有権移転登記は、相続した時点で遅延なく行うようにしましょう。

農業委員会へ届け出

法務局への届け出が済んだら、次に農業委員会へ届出書の提出が必要です。農業委員会は各市町村に1つずつ設置されていますが、市町村によっては複数存在したり設置されていなかったりする場合もあるので事前に確認しておきましょう。
また農業委員会への届け出は農地法によって義務付けられており、相続から10ヵ月以内に行う必要があるので注意が必要です。届出書は管轄の農業委員会にて入手することができます。また併せて生産緑地の変更届の提出も必要となることが多いので、漏れないようにしましょう。

指定を継続する場合の手続き

生産緑地は指定から30年経過したタイミングで指定を継続するか解除するか選択することができます。指定を継続する場合は、特定生産緑地として市町村長から所有者の意向を確認したのちに指定期限延長の公示が行われます。手続きは各自治体で行うことができますが、一定の期間を過ぎると延長できなくなってしまうので早めに市町村役場に相談してみましょう。

指定を解除する場合の手続き

生産緑地の指定を解除するためには、まず市町村に対して生産緑地の買い取り申し出をする必要があります。この場合は管轄の農業委員会にて「主たる従事者証明書」を発行してもらい、その後市町村に対して買い取り申し出を行います。
その後、申し出から1ヵ月以内に市町村が農地の買い取りをせず、また農業希望者へのあっせんが行われても売買が成立しなかった場合に、申し出から3ヵ月経過後に生産緑地の行為制限が解除されるようになります。つまり、買い取りの申し出をしたにもかかわらず市町村やその他の農家が農地を買わなかった場合に指定が解除され、転用などができるようになります。

相続税申告・納税猶予

被相続人から相続などにより農地を取得した人は、その課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合に相続税の申告をしなければなりません。相続を知った日の翌日から10ヵ月以内に税務署に申告書を提出し、納付税額がある場合にはそれを納める必要があります。相続税の申告に必要となる主な書類は以下の通りです。
  • 相続税の申告書
  • 被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本
  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明
申告が遅れた場合には追加で税金がかかってしまう場合があるので注意しましょう。
相続税の納税猶予を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出するだけでなくその納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供しなければなりません。主な必要書類は以下の通りです。
  • 相続税の申告に必要な上記の書類
  • 相続税の納税猶予に関する適格者証明書
  • 担保提供書および担保関係書類
  • 認定都市農地貸付けまたは農園用地貸付けに関する届出書およびその添付書類(都市農地貸付け等を行っている場合)
また納税猶予期間中は3年ごとに届け出が必要です。この場合の主な必要書類は以下の通りです。
  • 納税猶予の継続届出書
  • 農業を引き続き行っている旨の農業委員会の証明書
  • 特例農地等の異動明細書
  • 特例農地等にかかる農業経営に関する明細書
これらを期限までに提出しないと猶予されていた税額と利子税を納付しなければならないため忘れずに提出しましょう。     

まとめ

農地を保全するために制定された土地である、「生産緑地」について詳しく解説いたしました。
一般市街化区域農地に比べて税額が低く、指定期限を延長することで税制優遇を受けながら農業をすることができます。しかし、生産緑地は常に管理が必要だったり行為制限がされたりといったデメリットもあります。生産緑地の指定を解除することで農地以外に転用することもできるため、自身や家族の希望、状況を鑑みて行動を選択していきましょう。

農地の相続に関してお悩みなら、不動産相続のプロフェッショナルであるコンサルティング会社に相談することをおすすめします。
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