2024.03.27
財産承継
相続とは|相続財産や相続人、相続方法などの基礎知識を解説
相続とは、亡くなった方が所有していた財産や負債を受け継ぐことを意味します。相続の方法はさまざまで、生前からできる取り組みもあります。

また、相続にはさまざまな法律が関係するため、専門知識が必要です。遺族にとって大切な親族との別れを惜しみながら相続の準備を進めるのは、心身ともに負担になります。可能なかぎり早めに、相続に向けた取り組みを進めていきましょう。

こちらの記事では、相続の基礎知識を包括的にご説明します。相続対象になる財産や、遺産を相続できる人、相続の方法や必要な手続き、相談先などについて解説していますので、ぜひ相続に向けた準備に活かしてください。

相続とは

相続とは、ある人が亡くなった際、その人が生前に保有していた財産や権利・義務を、配偶者や子、孫などが受け継ぐことを指します。相続では、亡くなった人(財産を所有していた人)を「被相続人」、財産を継承する人を「相続人」と呼びます。

相続財産の対象になるもの



相続財産は、基本的に被相続人が所有していたあらゆる財産が対象となります。また、現預金や不動産といったプラスのものだけでなく、借金のようなマイナスの財産も引き継ぐことになるのがルールです。では、どのようなものが相続財産となるのでしょう。具体的な相続財産の例は、以下の通りです。

■プラスの財産

◎現金・有価証券など
現金、金融機関への預貯金、株式、配当金、出資金、貸付金、損害賠償請求権、慰謝料請求権 他

◎動産
自動車、貴金属、高級腕時計、骨とう品、家財、船舶 他

◎不動産
自宅の土地と建物、田畑、事業用不動産(事務所・店舗)、投資用不動産、借地権、借家権 他

■マイナスの財産

◎負債
借金、住宅ローン、未払い家賃、買掛金、損害賠償債務 他

◎未払いの税金
所得税、住民税、固定資産税などの未払い分

◎その他
被相続人が使用した電話代、水道光熱費、家賃、医療費などの未払い分

遺産を相続できる人

日本の相続では、遺言があるかないかが大きく影響します。遺言があれば、その内容が基本的に優先されるからです。一方、民法では法定相続人も定められており、被相続人の親族も相続の対象です。こちらでは、誰がどれくらいの割合で遺産を相続できるのかについて解説していきます。

受遺者

遺言書が残されている場合は、原則として遺言書に記されている内容が優先されます。従って、遺言書で遺産の受取人が指定されている場合には、その受取人(受遺者)が遺産を相続することになります。たとえば「配偶者にすべて相続させる」という遺言があり、子どもを含む他の受遺者が納得していれば、配偶者がすべての遺産を相続可能です。

また、民法で定められた法定相続人以外の人を指定することも可能です。ただし、法定相続人の一部には「遺留分」として最低限の金額を相続できる権利があるため、相続金額が遺留分を下回る場合、当該法定相続人は不足額に相当する金銭を、多めに遺産を承継して法定相続人の遺留分を侵害した受遺者などに対して請求できます。

法定相続人

◎配偶者(妻や夫)
亡くなった方の配偶者(妻や夫)は常に相続人になります。配偶者以外では以下の順序で法定相続人となります。

◎第1順位:子ども(直系卑属)
被相続人に子どもがいる場合は、子どもが法定相続人です。ただ、すでに子どもが亡くなっており、かつ孫がいる場合には、孫が子どもの代わりに相続することになります(代襲相続)。配偶者がいる場合は財産の2分の1を、配偶者がいない場合は財産の全体を、子どもの人数で均等に分割します。

◎第2順位:父母や祖父母(直系尊属)
子や孫といった直系卑属がいない場合、法定相続人は親です。両親が存命なら2人、片方だけが生存しているなら1人が相続します。両親が亡くなっていて祖父母が存命の場合は、祖父母が代わりに相続することになります。配偶者と親が相続人の場合、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1です。

◎第3順位:兄弟姉妹
被相続人に子どもがおらず、両親や祖父母も亡くなっている場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続します。兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、甥や姪が代襲相続します。配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

代襲相続人

代襲(だいしゅう)相続とは、被相続人よりも先に相続人となるべき人が亡くなっている場合、相続人の子どもなどが代わりに相続する仕組みです。この場合の相続人を「代襲相続人」と呼びます。

民法では、相続の第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹と定められています。たとえば子どもが死亡して孫が代襲相続人になると、孫の相続順位が死亡した子どもと同じ第1順位となり、親や兄弟姉妹よりも優先されます。
代襲相続人の相続割合は、被代襲者(先に死亡した相続人)と同様です。また、被代襲者が相続放棄した場合には代襲相続は発生しません。

相続の方法


遺産相続の問題においては、相続ができる人と同様に、相続の方法も重要なテーマです。相続方法にはいくつかのパターンがありますが、やはり遺言の内容が最も尊重されます。ただ、遺産相続はスムーズに決まるケースばかりではありません。たとえば遺言書がない場合は、各相続人の取り分を決める話し合い「遺産分割協議」が実施されることになります。それでは、具体的な相続の方法について見ていきましょう。

遺言による相続

被相続人には、遺言により財産を自分の意志に沿って処分することが認められています。つまり、遺産相続は、原則として遺言書に書かれている内容が優先されるということです。そのため、相続が発生した場合、まず遺言書があるかを確認することから始まります。そして遺言書の存在を知っている相続人は、他の相続人にも知らせなければならない義務が生じます。もし遺言書があることを隠したり、内容を偽造したりした場合には相続権を失う可能性があるので、慎重に扱うことが大切です。

なお、遺言書には自筆で作成する「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」があります。また、形式要件が民法で定められており、守っていない遺言書は無効になってしまうため注意が必要です。

法定相続

被相続人が生前に遺言書を作成していなかった場合、被相続人の財産は民法により定められた相続人が、決まった割合(法定相続分)で相続することになります。これを法定相続と言います。なお、配偶者は常に相続人になり、配偶者以外の家族には相続順位が定められています。また、相続人になれる人は法定相続人と呼ばれます。

法定相続分は民法で定められているものの、その割合はあくまで目安です。遺言がない場合には、法定相続人は遺産をどのように分割するのか遺産分割協議を通じて決めることが必要です。

遺産分割協議による相続

遺言書がなく、複数名の相続人がいる場合、特に相続人同士での遺産相続に関するトラブルを防ぎたいような場合などには、遺産分割協議を開催することになります。遺産分割協議は相続人が遺産分割について話し合う機会で、相続人全員が参加する決まりです。もし1人でも欠けていると、参加者の中で結論が出たとしても協議自体が無効となってしまいます。

協議をして遺産分割の内容が決定したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、誰がどの財産をどれだけ相続するかを記す書類で、相続人全員による署名捺印が必要です。遺産分割協議書は、すべてについて取り決めることも、一部について取り決めることもできます。たとえば、相続税の納税のために不動産の売却が必要な場合などは、便宜的に対象不動産のみの分割協議を行うこともあります。

生前贈与

財産を子どもなどの親族に残す手段として、生前贈与という方法もあります。生前贈与とは、存命中の人が自分の財産を他者に無償で与える行為です。被相続人が亡くなってから財産が相続人へ引き継がれる相続制度とは、仕組みが大きく異なります。

生前贈与の範囲は、子どもや兄弟姉妹など法定相続人以外の人物も対象となります。たとえば、直接は法定相続人にならない孫に財産を残したいのであれば、生前贈与を活用して財産を贈与することも可能です。
なお、贈与を行うと受贈者(贈与を受けた側)に贈与税を支払う義務が生じます。ただし、控除や特例によって贈与税がかからない場合もあり、税金の負担を軽減できるというメリットもあります。

自分が相続人となった場合の選択肢

親族がいる場合、自分が遺産を相続する立場になる可能性は大いにあります。相続はプラスの財産だけではなくマイナスの財産も引き継ぐことになるため、状況によってはどう対応するのが正解かわからなくなってしまうかもしれません。そこでこちらでは、自分が相続人となった場合の選択肢について解説していきます。

単純承認
単純承認は、相続人が被相続人のプラスの財産もマイナスの財産(負債)も引き継ぐことを意味しています。何かしら手続きを行わない場合、基本的に相続は単純承認として成立します。

限定承認
限定承認は、プラスの財産もマイナス財産も相続するものの、相続財産から被相続人の借金などを清算し、プラスの財産が残っていれば余剰分を相続するという方法です。マイナスの財産の方が多い場合は、プラスの財産の範囲内で借金などマイナスの財産を負えば問題ありません。ただし、共同相続人全員の申述が必要です。

相続放棄
相続放棄は、相続人が相続財産のすべてを相続しない方法です。借金などマイナスの財産が多く、金銭的な負担になるため財産を引き継ぎたくない場合などに選択することが可能です。

相続手続きの流れ

財産を所有する人が亡くなり誰かが遺産相続をすることになれば、さまざまな手続きが発生します。それでは、どのような手続きをいつまでに終わらせなければならないのでしょうか。具体的な例を紹介していきます。また、手続きには遅れたり申請をしなかったりするとペナルティが生じるものもあるので、注意が必要です。

相続登記・名義変更の申請

預貯金や不動産などの財産は、相続されると新しい所有者を登録する必要性が生じます。このプロセスが「相続登記」や「名義変更」です。この申請をする際には、遺言書や遺産分割協議書など証明できる書類が必要となります。

たとえば住宅や土地などの不動産を相続した場合、相続登記の手続きでは、登記事項証明書や住民票など各種書類が必要です。不動産の相続登記の手続きは、正当な理由なく一定期間以上放置すると過料(制裁金)を科される可能性があるため、申請を怠らないよう注意が必要です。

相続税の申告・納付

相続税が発生した場合、申告と納付をすることになります。期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」と決まっており、期限内に申告・納付ができなかった場合には延滞税などがかかるといったペナルティが発生します。遺産分割協議が終結していない状況でも、10ヶ月以内に申告と納税をしなければなりません。

相続税の申告と納付は自分で済ませることが可能です。しかし、相続人同士で主張が対立している場合や手続きが複雑な場合は、自分自身で対処することは現実的ではありません。そうした状況では、相続の専門家へ依頼するという選択肢もあります。

相続に関する相談先


遺産相続の当事者のなった場合、専門家の力を借りることは賢明な判断と言えます。ただ、相談をしたくても、誰に相談すればいいものかわからないかもしれません。相続問題は、相談内容や依頼したい業務によって適切な相談先は異なります。こちらの記事では、相続に関する相談先と、それぞれの対応範囲や得意分野などについて解説します。

弁護士

弁護士は、法律の相談から遺言書・遺産分割協議書の作成、交渉や調停の手続き、訴訟の対応など、相続に関するあらゆる法律問題に対処できます。中でも、相続の割合などに関して相続人同士で対立し、訴訟に発展したような場合は、弁護士のみが代理人として相手との交渉や調停に取り組むことが可能です。弁護士に対応を依頼することで、相続手続きにおける手間や精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。

司法書士

司法書士は、相続人の調査や相続財産の調査、遺言書の作成、遺産分割協議書の作成など、相続問題におけるさまざまな手続きを担える専門家です。中でも、不動産の相続登記を代理人として申請できるのは弁護士と司法書士のみです。不動産の登記は自分で行うことも可能ですが、多くの時間と労力がかかります。しかし、司法書士の手を借りると手続きはスムーズに進みます。このように土地や建物を相続する場合は、司法書士が心強い味方になってくれます。

税理士

税理士は税務のプロで、専門家の中でも税務に関連する業務を扱えるのは税理士のみ。相続税のアドバイスや申告書の作成などは税理士の業務の範疇です。さらに遺産分割協議書作成にも対応している場合もあります。相続税は、計算を誤ったり申告しなかったりすると重いペナルティが課せられる可能性があるので、相続税が発生する可能性があれば税理士に相談すると安心です。

コンサルティング会社

財産や税務などに関する課題解決に取り組んでいるコンサルティング会社も存在します。相続問題は、遺言や遺産の調査、遺産分割協議、相続登記、相続税の納税などさまざまなプロセスを着実に踏んでいかなければなりません。いずれも複雑で手間がかかる作業ですが、コンサルティング会社には法律や資産管理・運用、税務などの専門知識を持つプロが揃い、外部の専門家とも連携して対応しています。そのため、実績の豊富なコンサルティング会社であれば、安心して依頼できます。

まとめ

遺産相続は、多くの人が関わる可能性のある問題です。手続きも複雑で、法律の知識が必要な部分も数多くあります。また、相続財産が多かったり、相続人が複数いたりする場合には、相続人同士の意見が対立してトラブルになることも否定できません。このように、相続問題に対峙するには相当な労力が必要です。当事者になる可能性があるのなら、あらかじめ準備しておくことが大切です。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が 150 名以上在籍し、30 年以上の豊富な実績に基づき、お客様のご希望に沿って、相続や資産の管理・運用に関するさまざまなご提案をしております。お客様とその親族の方々にとって最良の結果になるようプランをご提案いたします。

\相続にまつわる相談・解決事例はこちら/

監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2024年3月時点のものです。

おすすめ記事はこちら