事業承継で起きやすい16のトラブルと対策を一挙解説

2025.09.23
企業オーナー 現状分析 親族承継 M&A

中小企業の事業承継では、大小さまざまなトラブルに直面するおそれがあります。なかには、会社の屋台骨を揺るがしたり、家族間の仲違いを招いたりするなど、後々まで深刻な影響を及ぼすものもあります。

事業承継を控えたオーナー経営者の皆様が、こうしたトラブルを未然に防ぐためには、まず、どのような問題が起こり得るのかを正しく理解しておくことが不可欠です。

そこで私たちは、実際に発生した事業承継のトラブルを分析し、特に深刻な事態に発展しやすい16の代表的な事例と、その対策ポイントを整理しました。

これら16のトラブル事例は5つのテーマに分類し、それぞれ独立した記事として掲載します。本記事では、イントロダクションとして事業承継に共通するトラブルの背景をまとめるとともに、5テーマ16トラブルの全体像を示します。

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なぜ事業承継ではトラブルが発生しやすいのか

まずは、事業承継においてトラブルが生じやすい根本的な要因について説明します。これは、すべてのオーナー企業に広く通ずる問題であり、あらかじめ背景を理解していただいた上で、各テーマ別の記事をお読みいただくと、よりスムーズに全体像がつかめるはずです。

1-1.同族企業では事業と相続を不可分で考えなければならない

非上場企業の多くは、少数の同族(親族)関係者が株主総会議決権の過半を握っている「同族企業」です。会社の代表者(社長)が、同時に大株主として経営支配権を持っている状態であることから、「オーナー企業」あるいは「オーナー経営」とも呼ばれます。多くの場合、オーナー企業における事業承継は、企業組織における経営の承継であると同時に、親族内での財産承継の取り組みでもあります。この2つの側面は、本質的にはまったく異なる事柄であるにも関わらず、実際には、両者を複雑に組み合わせて考慮しながら進めなければならないのが、オーナー企業の事業承継の特徴です。そしてその複雑さ故に、様々なトラブルの発生に直面するケースが多くなるのです。

1-2.財産権と経営権という異なる2側面を持つ自社株の性質

それを象徴するのが、オーナー企業の株式(自社株)の承継問題です。一般的に、オーナー企業においては、経営者が自社株の多くの割合(過半数あるいは3分の2超)を保有して経営支配権を押さえておくことは、経営安定化のために重要です。

一方、自社株は財産価値を有する資産でもあり、相続財産として遺産分割や相続税・贈与税の課税対象ともなります。さらに、課税上は財産価値が認められるにもかかわらず、実際には(上場株式などとは異なり)売却により換金することが困難だという特殊な性格を持ちます。

このように経営支配権と財産権の2つの側面を持ち、しかも換金性が低いという複雑な性格を持つ自社株の承継という点だけでも、細心の注意を払っておこなわれなければなりません。

自社株の扱い以外にも、オーナー企業の事業承継ではトラブルを引き起こす様々な要素があります。そこで、次項では、オーナー企業でよくある典型的なトラブル事例と、その対応策を、5つのテーマにわけてご紹介します。

事業承継で起こる16のトラブルとは

中小企業でよく見られる、しかも深刻な事態に発展しやすい16のトラブル事例を、以下の5つのテーマに分類して、それぞれ独立した記事として掲載します。

経営(人)の承継

事業承継の中心は、現経営者から後継者へ経営業務の執行を引き継ぐことにあります。それはモノの入れ替えや制度変更とは違って、「人」が変わるという本質的な変化です。そのため、コミュニケーションのすれ違いや感情のもつれ、あるいは健康上の問題など、人間関係に起因したトラブルが避けがたく生じるときがあります。

  • トラブル1 後継者が不在で廃業に追い込まれる
  • トラブル2 後継者になると信じていた子にその気がないと知ってあわてる
  • トラブル3 社長が認知症をわずらい事業承継ができなくなる
  • トラブル4 信頼していたナンバー2が相続後にクーデター

経営支配権の承継

株式会社においては、株主が保有する株式数(=議決権数)に応じて経営支配権を持ちます。この基本的なルールを軽視し、安易に株式を移転したり、複数の人が株式を保有する状態を放置したりすると、経営支配をめぐるトラブルの火種となります。

  • トラブル1 自社株を、複数の子に公平に相続したためにお家騒動が勃発
  • トラブル2 自社株の生前贈与の後に親子が仲違いし、悔やんだ社長
  • トラブル3 事業承継後に知らない株主がやってきて、経営に参画させろと要求

財産の承継(相続)

株式は経営支配権を示すだけでなく、会社の財産に対する権利でもあり、財産的価値を持ちます。会社の業績が好調であればあるほどその株式価値は高まりますが、それに比例して株式の移転コストも増大します。それが承継時に大きな障害となる恐れがあります。

  • トラブル1 自社株を相続した後継者が相続税を支払えず、事業を売却
  • トラブル2 高額な自社株式を相続して"ありがた迷惑"の遺族
  • トラブル3 遺族のために準備した社長の死亡退職金が支払われない

M&Aに関するトラブル

親族にも社内にも後継候補者がいない場合に、第三者承継の手段として選択されるのがM&Aです。多くの経営者がM&Aを経験するのは一生に一度きりであり、知識や準備が不十分なままで進めてしまうことが多々あります。そのため、近年のM&A増加に伴い、トラブル事例も増加しています。

  • トラブル1 M&A後に前社長の個人保証が解除される契約だったのに、解除されない
  • トラブル2 テール条項により、契約終了したM&A仲介会社から無駄な仲介手数料を請求される
  • トラブル3 M&A後に表明保証違反で損害賠償を請求される

節税対策に関するトラブル

事業承継や相続においては、一定の課税コストは避けられません。経営者として無駄な課税を避けようとする姿勢は当然ですが、節税にばかり目がいってしまうと、本来の目的である「円滑な事業承継」が損なわれかねません。そんなトラブル事例を紹介します。

  • トラブル1 銀行に勧められて持株会社を作ったが、キャッシュが流出
  • トラブル2 事業承継税制を利用して手足を縛られる後継者
  • トラブル3 相続時精算課税を利用したために、資料を紛失した20年前の贈与の税務調査を受け、追徴課税された

トラブルを防ぐには? 専門家に早めの相談を

事業承継のプロセスでは、様々なトラブルに直面する可能性があります。しかし、よく生じるトラブルにはどんなものがあるのかを知っていれば、それを避けることもできます。また、不可抗力によりトラブルに直面してしまった際も、落ち着いた対処が可能となるでしょう。

なるべくトラブルを避けられるように万全の準備をしておきたい方や、トラブルに遭遇した際に専門的なアドバイスを受けたい方は、事業承継サポートの経験が豊富な青山財産ネットワースにご相談ください。

松川 洋平Matsukawa Yohei
執行役員 コンサルティング事業本部 第一事業部 部長

1983年兵庫県生まれ。早稲田大学 商学部 卒業。
辻・本郷税理士法人にて、相続・事業承継の税務業務に従事、デロイト・トーマツ税理士法人にて、事業承継のコンサルティング業務に従事する。
2018年に株式会社青山財産ネットワークスに入社し、上場・非上場問わずオーナー経営者に対して、財産の承継・運用・管理の総合コンサルティングを提供している。

専門分野
企業オーナー向けコンサルティング
資格
税理士
著書
事業承継 親の心子知らず 子の心親知らず~19の失敗事例から導く「思い」「理解」「感謝」のない対策の行方~
松川 洋平

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