2021.09.29
事業承継
「M&Aを検討しているが買手が見つからない」課題を解決へ。

事業と資産のバランスを見直し、将来性のある事業を残す「縮小型事業承継」
雇用を実質的に承継し、自身の生活も守る事前準備型の「幸せな廃業」

 
2021年10月30日(予定)、青山財産ネットワークスより、書籍『後継者不在、M&Aもうまくいかないときに 必ず出口が見つかる「縮小型事業承継と幸せな廃業」』(日刊工業新聞社) を上梓します。

本書でお伝えしたいのは、「後継者不在でM&Aも上手くいかない」「あちらこちらに相談しても解決策が見つからない」という悩みを抱えている方々も、必ず出口を見つけられる方法です。
著者である当社取締役執行役員・島根伸治が、書籍にも記したポイントとメッセージをお伝えします。

M&A市場は活性化。しかし買手が見つからない企業も多数

「会社を継いでくれる人がいない。M&Aの道を探っているが、なかなか買い手が現れない」

私たちのところには、そんなご相談が多く寄せられます。

2021年版「中小企業白書」によると、2020年時点での後継者不在率は6割を超えます。
「子どもがいない」「子どもがいるが、会社を継ぐ気がない」「子どもがいるが、苦労をさせるので継がせたくない」――そうした背景から、M&Aを前向きに検討する経営者が増えています。

近年、M&A市場は活性化しており、中小企業のM&Aは増加傾向。第三者に会社を売却しようとすると、成長性がある業種・企業であれば10社、20社と買手候補が挙がることもあります。
しかし、斜陽の業種、赤字が続く企業、技術革新に取り残された企業などは、なかなか買手が見つからない現実があります。
特に、業容は縮小したものの、資産規模が従来のままで大きすぎる企業の場合、買収金額がふくらみ、M&Aが成立しづらくなっています。

日本では、構造的な問題により、成長産業より衰退産業が増加。さらに、コロナ禍によって多くの業種・企業が打撃を受けました。 こうして売却を希望する企業が増えるほど、買い手市場となっていきます。結果、多くの企業が売却しきれず、廃業・倒産の道を歩むことになります。 2020年の休廃業・解散件数は49,698件。2019年の43,348件と比べ6000件以上増加しました。 さらにさかのぼって2013年(34,800件)と比較すると42.8%増となっています。 (※東京商工リサーチ 2020年「休廃業・解散企業」動向調査より) 「資産が残っていて畳めるうちに畳もう」――そう考える経営者が増えている実情が見てとれます。今後、ますます増えていくでしょう。

優位性があるものを残し、全体の縮小を図ることで、M&Aが実現しやすくなる

「M&Aの道を探るも、買手が見つからない」
そんなお客様の悩みを解決するために、私たち青山財産ネットワークスが取り組むのが「縮小型事業承継」です。
縮小型事業承継とは、自社の競争力や能力に合わせて、事業規模を縮小させて会社を承継するという考え方のことです。

例えば、不採算商品や店舗から撤退して赤字をなくしたり、資産売却でスリム化したりする。一方、「優良な取引先」「信頼を獲得している顧客」「熟練した技術」「地域に根付いたブランド(看板)」などは残す。
このように取捨選択を行い、全体規模を縮小し、譲渡価格を小さくするのです。そして、買手に「買うメリット」を感じさせます。これによってM&Aが成立し、承継に成功した事例はいくつもあります。

つまり私たちは、承継できない原因を改善し、ピカピカに磨くというよりもむしろ縮小均衡を図って事業承継を可能にします。

M&A専門企業の場合、多くは「企業丸ごと」の売却を図ります。その企業の強み・弱みを仕分けし、「縮小均衡」へ持っていくには手間と時間がかかりますので、そこにパワーを注ぐことはまれです。また、資産を移動したり、従業員の再就職を支援したりするためには、会社法・税法・労働法など、幅広い専門知識が必要となります。

縮小型事業承継の仕組みを実現できているのは、長年にわたって事業承継の支援を通じ、経営状態や資産状況の分析力・課題解決力を磨いてきた私たちだからこそ、と自負しています。

「縮小型事業承継」のメリット

「縮小型事業承継」のメリットはどこにあるか。大きく2つ挙げられます。
1.売却しやすくなる
M&A仲介会社に相談しても買手が見つからないケースでも、適切な形で縮小することで売却につながることがあります。例えば「事業から不動産を切り離して売却する」「赤字店舗は閉鎖してから売却する」などです。
2. 多くのものを守ることができる
赤字のためM&Aなどが成立しない場合、そのまま放っておくと「倒産」に至ります。倒産となれば、事業(取引先・技術・人材など)は霧散してしまいます。
早めに縮小したり計画的に廃業したりすることで、部分的に、あるいは分解して承継していける可能性があります。

過去には、廃業を覚悟したうえで事業縮小を進めていたところ、幹部社員が「会社を継ぎたい」と手を挙げてくれたケースもありました。売却金額は大きくはありませんでしたが、事業と雇用が部分的にでもそのまま引継がれ、経営者の精神的な負担が大きく軽減されました。縮小部門の社員へも割増退職金と再就職斡旋プログラムを提供し、雇用が中断されずに継続されたことは、社会的にも有意義だと考えています。

また、オーナー経営者の生活面においても、倒産となれば債務保証を履行し、個人財産も失います。しかし、自主的に縮小・廃業すれば、残余財産などにより生活の糧を確保することができます。





ただし、縮小型事業承継の場合、買手候補が複数ある一般的なM&Aよりも売却価格は低くなります。
しかし、そもそも縮小型事業承継は、買手が現れず一般的なM&Aが成立しない場合に取られる手段ですので、単純に売却価格だけで比較することはできないでしょう。

M&Aの見通しがつかなければ、通常は廃業するしかありません。そこで、「M&A」と「廃業」の隙間を埋めて、承継を実現するのが縮小型事業承継であると考えています。

縮小型事業承継における成功のポイントとは

縮小型事業承継を成功させるためのポイントをご紹介します。
●なかなか承継ができない原因を認識して、対応する
当社には、「M&A仲介会社に売却先を探してもらっているが、なかなか買手が現れない」というご相談が多く寄せられます。
その原因はさまざま。本業の赤字を不動産賃貸で補う構造だったり、事業規模に比して本社や設備が高価であったり、技術が陳腐化していたり。そこで、売れない原因を分析し、短期的に改善できるものは改善することが重要です。
その際、承継する側(買手)の視点に立って改善策を検討実行すること、できれば知見のある第三者の意見も聞いて行うことがポイントです。
●縮小しても承継が難しい場合、計画的な廃業がベストの選択
M&Aを含めてなかなか事業承継できず、縮小したとしても難しそうな場合には、廃業するのがベストの選択です。心情的にすぐに決断しがたいことも理解できるのですが、特に赤字が続く場合には、早急に計画を立てて実行に移すことをお勧めします。

資産超過で資金に余裕があれば、先に述べたように清算手続きの中で一部事業の譲渡や社員の承継などが可能になりますし、退職する社員に割増退職金や再就職斡旋プログラムを提供したりもできます。
また、残余財産(資金)が残れば残るほど、オーナー経営者のセカンドライフの生活設計も行いやすくなります。

通常、廃業資金を銀行が積極的に出すのは難しいため、とにかく資金がある早い段階での決断が重要です。
私たちは廃業を実行しきることで、実質的に様々なものが引き継がれ、経営者に感謝していただいた経験を多数しています。したがって、ポジティブな一つの選択肢と捉えています。
●早めの現状把握と選択肢の検討が大切
私たちが相談を受ける時点では、承継の方針が決まっていない方、決まっていても上手く行っていない方が圧倒的に多いです。
その理由をうかがうと、顧問や金融機関などに相談して色々な意見を聞くうちに迷いが出てきたり、家族に相談を切り出しにくかったりするようです。

黒字企業はまだ良いのですが、赤字基調の企業は一刻も早く現状を把握し、どんな選択肢があるかを出しておくことが肝心です。資産超過で資金に余裕があれば良い結果につながることが多いからです。家族のため、社員や取引先のため、そして経営者自らのため 、一歩を踏み出してください。


――以上、縮小型事業承継の概要をお伝えしました。
10月末発売予定の書籍『後継者不在、M&Aもうまくいかないときに 必ず出口が見つかる「事業承継と幸せな廃業」』では、実際の事例も交え、さらに詳しくご紹介しています。 

M&Aを含めて、事業承継先がなかなか現れなくてもあきらめないでください。
資産が負債を上回っていれば、縮小型事業承継にトライすることでM&Aや社員承継が可能になるかもしれません。
逆に負債が資産を上回ってしまうと廃業で軟着陸することもできなくなり、一部の法的整理・私的整理を除いて倒産しかありません。後継者が見込めず、赤字基調に陥った場合には、売却のタイミングを逃さないように早めに検討を開始したいものです。ぜひ私たちにご相談ください。

島根 伸治(公認会計士)
取締役執行役員 コンサルティング第四事業本部長

大手監査法人、メーカーを経て2001年当社グループに入社。
多くの企業オーナー様と会社の将来について話し、長きにわたり財務・資本政策や事業承継のご支援を実施。経済ショックや自然災害なども多発する今の成熟社会においては、必ずしも「成長」でなく、「縮小均衡」させて承継を図ることも有用と実感している。
他社様と「縮小型」の事業承継ファンドを運営し、株主となってご支援する例もある。

※役職名、内容等は取材時のものです。


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