2021.11.02
事業承継
事業をたたむことを決めたら。
M&Aを検討すべき理由とは?税や負担についての違いを解説

事業の継続が見通せない時は、事業をたたむことが頭をよぎるかもしれません。
しかし、それには様々なリスクが伴います。自身や従業員の生活を考えると、別の手段も検討したいものです。
そこで候補となってくるのが、廃業もしくはM&Aによる事業承継です。

今回は、事業をたたまなくてはいけない状況になった時、廃業を選ぶのか、またはM&Aを選ぶのか、2つの選択肢について比較しながら解説していきます。

廃業する企業が増加中

内閣府が2020年度に発表したデータによると、倒産する企業の数は年々減少傾向にありますが、逆に廃業する企業が増えています。
倒産は、資金繰りの問題等で行き詰まり事業継続ができなくなった状態で、一方廃業は任意に事業を終了するという違いがあります。このことから、会社が経済的に破綻する前に、何らかの理由で事業の存続を諦めた、または止めたケースが増加していると言えます。
その原因とリスクについて、次項からより詳しく解説いたします。

出典:内閣府 倒産・廃業と開業  

社長の高齢化による影響

近年では、廃業に至る原因として、社長の高齢化が最も多くなっています。
先程の内閣府のデータから、廃業した会社の内訳を見ると、社長が60代を超えている企業が8割以上を占めていることがわかります。
もちろん、高齢でも元気な社長・事業主もいますが、全体の傾向はそうではありません。社長が年を取っている分、会社も古くなっていますから、新陳代謝が行われずに業績が低下しているケースが多いのです。
加えて現代社会は急速に変革が進んでいますから、トップが高齢では新たな成長戦略を明確に描くのが難しいケースも多いでしょう。事業の先行きに不安があると、後継者不在の時はもちろん、社長に子供がいても世代交代による将来性は考えにくく、事業の継続を諦める会社が続出しているのです。

出典:内閣府 倒産・廃業と開業

後継者がいないため廃業するケースが多い

現在は多数の企業で、後継者が見つかっていない状況にあります。
この状態で経営者が引退を決めた場合、後継者が不在ないし未成熟のままで状況を改善できず、廃業に至るケースが多いです。
特に深刻な問題になりやすいのが、取引先への影響とされます。取引先やクライアントは経営者と個人的な信頼関係を結んでいることも多いため、世代交代によりこれまでとは関係性が変わり、取引が終了するおそれがあります。社長の交友関係や人望に依存した取引を行っていた企業であれば、これは死活問題です。
もしも後継者がいないか、確かな経営力を備えていない場合、このような状況には対処できません。結果的に事業の見通しが立たず、倒産をする前に廃業を選ぶこととなります。

廃業のメリット・デメリット 

廃業のメリットは、倒産する場合に比べて周囲への負担が軽い点にあります。
財政状況が健全なうちに事業を終えるため、取引先への債務を完済したり、従業員に給料を払ったりと、資産的には有利です。また、倒産と違って自身で引き際を決めるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。
一方、デメリットは経営資産が正当に評価されない点です。いわゆる「倒産品」と似た状況となり、在庫品や設備などが買い叩かれてしまいます。

しかし、ここ最近は、あえて廃業を選ぶ経営者も多く、デメリットの多い結末には限らなくなっているようです。


廃業は決してネガティブな終わり方ではない

廃業というと、ネガティブなイメージが拭いきれません。
しかし、現在廃業をする企業が増えている背景には、「前向きに廃業を選択する」という企業が増加しているからという理由もあるのです。
前向きな廃業とは、一体どのような状況なのでしょうか。

正しい経営判断として廃業を選ぶ

事業をたたむことになる理由はさまざまですが、廃業を選ぶのは最後の手段ではなく、経営者の前向きな判断であることが多くなっています。
例えば、従業員の引き継ぎや事業の処理をきちんと行った上で廃業し、経営者が新たな第二の人生を歩み始めるといったケースです。
限界まで経営を続けると、このような最後の処理ができずに倒産という形になってしまいます。きちんと手続きや債務の清算ができるうちに廃業をするということは、正しい経営判断としての前向きな廃業と言えるでしょう。

廃業せずに事業が続けられる「M&A」という選択肢

廃業以外にぜひ検討したいのが、M&Aという選択肢です。
会社の合併や譲渡などにより、新しい後継者を探すための手段となります。現在は中小企業においても、自社で後継者を確保できない場合に事業を存続させるため使われるケースが増えてきました。
近年は行政も、後継者不在によって、黒字の企業が次々と廃業していることに危機感を覚えており、M&Aによる事業承継を推進しています。対策の一環として、補助金などの制度を用意しているため、以前に比べて更に魅力的な選択肢になりました。

事業承継ができるM&Aとは        

M&Aは「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略称です。一時期は国際的な大企業が行うイメージでしたが、最近では中小企業も事業承継のための一手段として積極的に活用しています。 文字上では合併・買収となっていますが、実際には株式移転や会社分割など多彩な方法があるため、自社に最適な形を検討できます。 M&Aなら、経営者の子孫や従業員に承継させるのとは違い、既に経営知識が豊富な事業主や投資家を探せるのが特徴です。また、経験豊富な企業に譲渡すれば、より良い相乗効果が期待できます。 自社単独では無理だったビジョンを描くことができ、業績の回復や将来性の向上なども期待できるのは大きな魅力です。  

M&Aのメリット

M&Aのメリットは多岐にわたります。確かに事業承継に適した企業を探すのには労力が必要ですが、それに見合う以上の恵沢が期待できるので、多数の企業が活用しているわけです。 経営者の老後や従業員の生活、取引先・仕入れ先のことを考えても、メリットは豊富でしょう。しかも、承継する企業にとっては短期間で戦力を高められるので、双方に利益があります。 単純に事業を延命させるだけではなく、今後の発展も充分に見込めますから、まずは、具体的なメリットを確認していきましょう。

1.事業が残る

これまで作り上げてきた事業が、存続するのは大きなメリットの一つです。これまで積み上げてきた事業が消滅するのは、経営者にとって精神的に大変辛いものです。
特に老舗の場合は、自分の代で経営を終えるのは無念でしょう。M&Aを活用すれば、そのような思いをせずにすみます。
経営者が大切にしてきた事業への想いや取り組みも、譲受企業が引き継ぐ形で、後世に残すことが可能です。
もちろん、代々引き継いできたブランドも、残せる可能性がでてきます。このように、事業を次の経営者にバトンタッチし、新しい時代に向けて送り出せるのがM&Aの魅力です。 

2.従業員の雇用が守られる

 M&Aなら、従業員の雇用も守れます。
新しい経営者のもと、同じ職場で働くことがほとんどなので、再就職先探しで苦戦したりすることがありません。従業員は、自分自身はもちろん、家族のためにも働いていますから、その全員の生活を守れるのは経営者にとって望ましい選択肢ではないでしょうか。
ただ、経営者が変わったことに従業員が不満を感じるというケースは珍しくないので、譲受企業を探す時には、損得以上に事業とのマッチングを重視すべきです。 

3.取引先・仕入れ先にも負担を与えない

付き合いがある取引先や仕入れ先を守るためにも、M&Aは役立ちます。
例えば、老舗の鞄メーカーが、鞄に使う金具を、優れた技術を持つ1つの工場だけに発注していたとします。その工場も、老舗鞄メーカーがメインの卸し先となっています。そんな状況で、老舗鞄メーカーが廃業してしまうと、同時に金具工場も廃業せざるを得なくなってしまうのです。
このように、高い技術を求められる専門性の高い製造業などは、1社の廃業によって協力会社も倒産や連鎖廃業に追い込まれるケースは珍しくはないのです。
そこでM&Aを活用すれば、従前のように取引契約を続けることができるので、協力会社や工場に損失を与えるリスクが低くなります。

廃業とM&Aの税金の違い

廃業の場合は会社の解散手続きを行いますから、それに関連して各種の納税義務が生じます。
まず、解散登記や清算人登記などに関する免許税がかかりますし、廃業する場合でも法人税・消費税・地方税の申告は必要です。
これに加えて、清算手続きの後に残った資産は、残余財産として分配しますが、これにも税金がかかる可能性があります。
M&Aの場合は、承継手段によって課税内容が異なります。基本的には法人税や所得税、消費税などがかかりますが、株式譲渡なのか、それとも事業譲渡なのかに応じて内容が変わってくるのです。また、納税額も資本金の額や残余財産の額などによっても変わります。 

事業をたたむことを決める前に。M&Aと廃業をしっかり検討   

事業の見通しが厳しく、しかもコロナ禍などで融資も難しい時には、事業をたたむことが頭をよぎるかもしれません。同時に、せっかく続けてきた事業を終わらせることへの葛藤と、従業員の生活も心配したりと、経営者は様々な点で苦慮されているはずです。
事業を終わらせることを検討している場合、経営者は自身の事業に大きな価値が見出せず、譲渡しや後継者探しをどこか諦めているケースが多々あります。しかし、実際には会社資産よりも遥かに高値がつくこともあるのです。したがって安易に決断せずに、事業承継のコンサルティング会社に相談して第三者の意見も聞きつつ、M&Aを検討してみましょう。 

M&Aと廃業、迷ったときは事業承継のプロに相談しよう

廃業を考えている時に、経営者一人で悩まずにコンサルティング会社へ相談をすることをおすすめします。資産や経営に比較的余裕があるうちから相談をすることで、廃業に対するイメージもきっと変わるでしょう。

もちろん、事業承継のプロならM&Aについても相談ができます。
M&Aは会社法などに基づいて複雑なルールが定められている他、譲受会社の選定や従業員への配慮など、気を付けたい部分が少なくありません。
これらの部分をないがしろにすると、「自分で経営しておけば良かった」と後悔してしまう可能性もあるので、ここはプロのサポートを考えましょう。
M&Aについて実績が多く、ノウハウがあるコンサルティング会社が頼りになります。自社株式の株価資産や、従業員への対応など、幅広く支援してくれます。当然、資産の精算や納税に関する作業も、スムーズに行えるでしょう。
実績があると多彩な企業とのパイプがあるので、それだけ信頼できる相手を探しやすくなります。計画から実行までの支援はもちろん、アフターフォローもあるので万が一の時にも安心です。 

まとめ 

 廃業とM&Aの違いについて紹介してきました。
事業の将来に不安を感じたら、前向きに廃業とM&Aの可能性を探ってみるのがベストです。赤字だったり純資産が少なかったりしても、自身が思うより遥かに高評価されることもあるので、先入観から断定しないことが大切でしょう。
M&Aを成功させた場合には自身の収入も安定しますし、従業員や取引先などのメリットも大きいです。このため、まずは事業承継のプロフェッショナルに相談して、M&Aの可能性を模索してみてはいかがでしょうか。

青山財産ネットワークスは創業30年以上、上場している独立系の総合財産コンサルティング会社として、事業承継・相続・不動産の様々な課題解決のご支援をしています。
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