2021.12.09
財産承継財産運用
「不動産共有」はリスク大。
相続前に予防、すでに共有しているなら早期の解消を

今は問題なくても、将来的にトラブルを生む

「兄弟に平等に財産を分け与えたい」

子どもへの相続の際、そのように考える方は多くいらっしゃいます。
ところが、そんな親心が後々、兄弟間で、あるいはその子~孫の代でトラブルを発生させる種になり得ます。
どのようなリスクがあるか、事例を交えてお話しします。

かつて、日本の「家族制度」では、当主が全財産を相続し、それ以外の兄弟などには法定相続分に応じた「代償金」を支払う形をとるのが一般的でした。
しかし、近代ではその制度が崩れ、兄弟に均等に財産を分割することを望む家族が増えています。

資産家が保有する財産のうち「不動産」が多くを占めるケースは多数。そこで、兄弟に不動産を共有名義で相続しようと考える方が多くいらっしゃいます。

このようなご相談を受けた場合、私は「不動産共有はお勧めしません」とお伝えしています。
後々、トラブルを引き起こす事例を数多く見てきたからです。
不動産共有を避けたほうがいい理由は次のとおりです。 

兄弟の経済状況や関係性は変化する可能性がある

「うちは兄弟仲がいいから大丈夫。トラブルになどならず、話し合いで解決できる」

そう考える方も多いのですが、今は良くても、10年後20年後はどうなるかわかりません。
兄弟の誰か、あるいは全員の経済状況が悪化した場合、冷静な話し合いができなくなる恐れもあります。

経済状況だけではありません。兄弟の配偶者が「もっとこちらの取り分を増やせるのでは」と、専門家を立てて協議を申し出ることもあります。そこから争いに発展し、兄弟の仲まで壊れてしまうケースもあります。

兄弟の「想い」「価値観」が異なることもある

兄弟ともに経済状況に問題がなくても、「想い」「価値観」にズレがあると、不動産の処分・活用方法で意見をまとめられないケースもあります。
多く見られるのは、その不動産に対する「思い入れ」のギャップです。

これは、300坪ほどの土地と、そこに建つ住宅を共有していたご兄妹のケースです。兄(50代)は家族と別の場所に住んでおり、その住宅では独身の妹(40代)が一人暮らしをしていました。
借入金が多かったため、兄はその土地・建物を売却して一気に返済してしまいたいと考えました。
しかし、妹は売却に反対。妹にとっては、すでに他界したお母様と長年2人で暮らした家であるため、思い出を大切にしながら住み続けたかったのです。
このように、兄弟でも所有する不動産に対する想いが異なり、話し合いが平行線となるケースは少なくありません。

ちなみに、このご兄妹の案件では、長方形の土地の真ん中に建っていた住宅を曳家(建築物をそのままの状態で移動する建築工法)によって端に寄せ、空いた土地を分割交換によって兄だけの所有とし、売却する……という方法をご提案し、円滑解決に至りました。

子・孫の代になると、トラブル発生のリスクがさらに高まる

兄弟で不動産共有している間はトラブルがなくても、子や孫、さらに先の代でトラブルが発生することもあります。相続の度、ネズミ算式に共有名義人の数が増えていくためです。
物理的に分割ができない建物などは、売却する場合、共有名義人全員の同意が必要となります。10人いれば10人が同意しなければ、売却ができないのです。修繕や賃貸なども、単独での判断ではできません。

数年前、ある共有土地のご相談を受けたことがあります。幹線道路に面する一等地でしたが、面積が小さくいびつな地形であったため、活用されず長年放置されていました。
所有権をたどっていくと、明治時代までさかのぼり、相続人にあたる人は100人以上に上りました。
これでは登記の名義変更もできず、活用もできません。

これは極端な例ではありますが、次世代・次々世代へと枝分かれしていくにつれて、共有不動産がトラブルにつながる確率は高まっていくのです。

「二次相続」にも注意が必要

「子どものためによかれと思って」の相続が裏目に出るケースは他にもあります。

両親のいずれかが亡くなったとき、その配偶者と子への相続を「一次相続」、その後、もう一方の親が亡くなって子に相続することを「二次相続」といいます。

人によっては、「一次相続では子に財産を渡したくない」と考え、配偶者のみへの一次相続を選択するケースもあります。
子どもがまだ若い場合、「社会経験が浅いうちに大きな財産を手に入れるのは、子のためにならない」といった想いからです。あるいは、相続する不動産が生産緑地である場合、「子どもが農業を続けるかどうかの決断をするまでに時間の猶予が必要」と考えるのです。

この時点では、まだ親の意思でコントロールが可能です。ところが、残った親が亡くなり、二次相続となった場合、兄弟間でもめるケースが多いのです。それぞれの感情や価値観が噴出し、歯止めが利かなくなって、どこまでも平行線の協議が続いていくことになりがちです。

いずれにしても、まだ相続前の場合、不動産の共有を避ける形で検討することをお勧めします。
例えば、次のような方法があります。

●不動産は一人の相続人の単独名義にし、他の遺産を他相続人間で分割する
●不動産を売却し、利益を分割する  

そして、すでに共有名義で不動産の相続をしている場合、このまま次世代へ受け継ぐ前に、次のような対処方法があります。

●共有名義を解消し、分筆して各人単独名義とする
●共有者に相応の金銭を支払い、持分を放棄させる
●持分売却し利益を分配する

「100年コンサルティング」で、「財産」と「想い」の継承を支援

私たちが不動産共有の問題解決をお手伝いする際には、次のポイントを大切にしています。

①それぞれの想いを汲み取る

経済合理性の観点で数字の検証を行いますが、それがすべてではありません。名義人の方それぞれの想いをお聴きし、尊重した上で、解決法をご提案します。

②想定し得るシミュレーションを作成し、検証を繰り返す

さまざまな手法について、「これを選択すればこうなる」と、先を見据えたシミュレーションと検証を行います。選択肢のバリエーションをご提示した上で、最終的にはご本人様に納得のいく方法を選択していただきます。

③「全体最適」と「部分最適」をかんがみ、最適解を導き出す



「相続税対策」とうたわれる商品や資産運用手法などは、単体ではプラスの効果を生んでも、全体で見るとむしろマイナスになってしまうこともあります。
例えば、金融機関は「融資したい」、ハウスメーカーは「自社で建築してほしい」など、それぞれの論理と目的で提案をします。個々の提案は優れていても、「部分最適」を積み上げるやり方では、バランスが崩れることもあります。

私たち青山財産ネットワークスが提供できる価値として、「ワンストップでの組み立て」があります。
お客様にとっての「全体最適」を目指し、個別案件ごとに不動産・金融・財務・法律・保険などの外部専門家と連携して対応する体制を築いています。
土地の有効活用手段として建物を建てる場合も、パッケージ商品を勧めるハウスメーカーも多い一方、私たちのサービスではお客様の想いに応えられる設計者や建築業者を個別に選択することができます。

先ほどもお話ししたように、現時点では問題ない資産が、次世代・次々世代へ引き継がれていく中で不具合やトラブルを生み出すケースは多々あります。
だからこそ私たちは「100年コンサルティング」を掲げ、長期に渡るパートナーでありたいと考えています。
相続問題に直面したときにのみコンサルティングを提供するだけでなく、顧問契約などの形で、随時気軽にご相談いただけるサービスもご用意しています。

常にお客様に寄り添い、次世代・次々世代へ、「財産」はもちろん「想い」を受け継いでいくお手伝いを致します。

※「不動産共有」の問題を解決した事例を、動画でもご紹介しています。

●兄は売却したいが、弟は反対――兄弟の不動産共有問題を解決し、借地人や負動産所有者も満足する等価交換&高値売却を実現
 →https://www.azn.co.jp/column/detail.html?itemid=1515&dispmid=904&TabModule905=0

●「負動産」を自身の代で解消したい――将来の相続を見据え、分割しやすい資産構成にポートフォリオを組み替え
 →https://www.azn.co.jp/column/detail.html?itemid=1518&dispmid=904&TabModule905=0


二俣 圭輔

コンサルティング第二事業本部 第一事業部 第二グループ グループ長

教育サービス業のコンサルタント、マンションコンサルタントを経て、青山財産ネットワークスに入社。
底地人/借地人との交渉、土地活用提案、建物保善提案などのサポートを得意とする。
宅地建物取引主任者・管理業務主任者・FP2級・簿記2級・DCプランナー2級

※役職名、内容等は取材時のものです。

\相続にまつわる相談・解決事例はこちら/

おすすめ記事はこちら