2022.05.25
事業承継
【事例で学ぶ縮小型事業承継②】出版社のケース

縮小型事業承継とは?

後継者が不在でM&Aでも相手が見つからない、そういった会社はどうなってしまうのでしょうか。

社長の体力の限界とともに衰退の一途をたどる、つまりは廃業する道しかありません。
しかしながら、廃業せざるを得ない会社の中には、優れた技術やノウハウを持っている会社が数多くあります。それにもかかわらず廃業してしまうことは、非常にもったいない事ではないでしょうか。
通常のM&Aは会社の全てを譲渡します。一方、廃業は事業が全てなくなってしまいます。ただ、100か0の選択肢だけでは解決できないことがたくさんあります。
そのような時にご検討いただきたいのが、青山財産ネットワークスの「縮小型事業承継」です。
このサービスは将来に残すべき価値のある部分があれば、その部分の承継を目指していくものです。私たちは100と0の間に40や50という、M&Aと廃業の間に選択肢があっても良いと考えています。

事例で学ぶ縮小型事業承継に引き続き、
ここからは実際の縮小型事業承継の事例をご紹介します。

事例紹介:出版社のケース

C社は業歴50年以上の老舗出版社です。主に業界向けの情報雑誌や書籍を出版しています。
過去の業績が順調であった事から、内部留保は厚く、本社ビルを所有する等、財務内容は健全な会社です。
しかし、近年では出版不況や当該企業が得意とする業界でも情報収集の媒体が紙からネットへ急速に変化して行きました。そのため看板雑誌の発行部数が減り、業績も徐々に悪化、利益もほとんど出ない状況に陥りました。
C社も変化に対応すべく書籍のデジタル化に取り組んでいますが、デジタル化に対応できる人材の不足や資金面での制約等から十分に対応できているとは言えない状況でした。長い業歴の中で社長は親族承継から役員承継へ変化していました。その中で、現D社長も就任10年近くとなり引退時期が到来しました。

M&A、買い手候補現れず

今までの社長は、銀行から借入を行い、歴代の社長から株式を取得してきました。D社長も優良な財務基盤と好調な業績によって株式の価値向上から数千万円の借入を行い、先代の社長から株式を取得しました。
先代の社長までは自分の就任期間に業績を伸ばし、次の社長に、より高い価格で株式を引き継ぎ、キャピタルゲインを得てきました。しかし、事業環境の激変により業績が急速に悪化する中、数千万円で株式を引き受ける役員が現れません。
D社長は貧乏くじを引いた形になってしまいました。そのため、D社長は社内での承継をあきらめ、M&Aを決断しましたが、買手候補は現れませんでした。
同業社からみると編集者や雑誌については魅力があるものの、利益がほとんど出ていない状態では、本社等の資産を含んだ価格では到底手が出ない価格になってしまう事が原因でした。

投資のポイントはバランスシート

私たちにはC社のFA(フィナンシャルアドバイザー)より相談がありました。一般的な事業承継ファンドでは、事業の成長性やキャッシュフローの改善余地等に着目して投資を行います。端的に言うとPL(損益計算書)と将来性を見ています。
それに対し、私たちのファンドでは、BS(バランスシート)を投資のポイントに置いています。
C社のFAがこのような当社のファンドの特性を理解していたので、私たちに相談してきてくれました。私たちのファンドは、縮小型事業承継での対応が可能と考え、投資を決断、D社長から株式を取得しました。
C社はPLについては苦戦しているものの、業界では知られた雑誌のタイトルを複数所有して、編集者も優秀な人材が揃う等、事業面でキラリと光る資産を持っています。しかしながら、都市に本社を所有する等、事業と資産がアンバランスな状態なため承継が進まないと考えました。

事業と資産の分離が奏功、引受先候補現れる

縮小型事業承継の手法では、事業と資産を分離する事から始めます。
C社の場合、出版の仕事は賃貸でもできるので事務所を本社から移転しました。そして、本社を売却して借入金の返済等に充当しました。また、赤字の雑誌については廃刊し、雑誌の原価見直し等を行い、収益構造の改善も並行して行いました。
その結果、利益はまだ少ないながら、BSの軽い会社となりました。事業価値と資産価値が一致してきたことから、引受先候補が現れ、現在、M&Aの話が進行しています。

ご相談は青山財産ネットワークスへ

M&Aを含めて、事業承継先がなかなか現れなくてもあきらめないでください。
資産が負債を上回っていれば、縮小型事業承継にトライすることでM&Aや社員承継が可能になるかもしれません。
逆に負債が資産を上回ってしまうと廃業で軟着陸することもできなくなり、一部の法的整理・私的整理を除いて倒産しかありません。
後継者が見込めず、赤字基調に陥った場合には、売却のタイミングを逃さないように早めの検討必要です。
ぜひ私たち青山財産ネットワークスにご相談ください。

(M&Aオンラインより抜粋し再編集)

  

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