2022.09.22
財産運用
ビルを売却するためのプロセスや注意すべきポイントを解説


事業用のオフィスビルの売却は、住宅などの一般的な不動産に比べ、売買価格が高額です。大きな利益を得られる可能性がある一方で、ビルの売却プロセスは複雑であるため、専門知識が必要となります。そのため、「収益性を高めるために自社が保有するビルを売却したい」、「物件の価格が高騰している間にビルを売却したい」、「自社ビルを売却して手元資金を確保したい」といった場合は、十分に準備することが欠かせません。

この記事では、ビルを売却する流れや、売却時にかかる各種費用、頼りになる相談先など、大切な資産であるビルの売却を成功させるためのポイントを解説します。

また、不動産の売買や財産承継、事業承継、M&A、資産運用などの相談をお考えの方は、ぜひ当社へのご相談をご検討ください。
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ビル売却の流れ

不動産の価値は、周辺地域の発展具合や土地の需要、社会状況の変化などで変動します。価値が変化するなかで、個人や法人として所有しているビルなどの不動産を売却することは、事業をさらに成長・飛躍させるための1つの手段と言えます。ビルの売却を検討するにあたり、売買が成立するまでの流れを把握することは重要です。こちらでは、ビル売却の基本的な流れや、一般的な不動産の売却との違いについて解説します。

ビル売却の基本的な流れ

ビルの売却は、市場の調査や売却先との交渉など、複数のプロセスを経て成立します。売却を考え始める際に取るべき行動から、契約・決済に至るまでの基本的な流れは以下の通りです。

1.ビル売却の目的および物件の状態の確認

ビルを売却する目的をすり合わせたり、物件の状態確認を行ったりするために、不動産売買仲介会社などのパートナーに相談します。売却する目的としては、単に利益を得るのみならず、共有持ち分の解消や相続時の分割対策など、オーナーの状況によって様々なものが考えられます。目的を考慮したうえでどのような売却の手段を取るべきかを相談しましょう。

2.ビルの売却価格の市場調査

最新の売却価格相場や、テナント状況などを踏まえた周辺ビルの価値、周辺賃貸物件の需要と供給の状況などを調査する必要があります。利益を優先し、相場よりも極端に高い価格に設定することで、かえって売却が難航する可能性を防ぐためにも重要なプロセスに位置付けられます。

3.ビルの売却提案と売却先(買い手)候補との交渉

不動産売買仲介会社などに相談し、ビル売却の提案内容を固めます。ビルの購入を検討する方から問い合わせがあれば、ビルの内覧や価格交渉などに立ち合い、売却先の選定を進めます。

4.売却先(買い手)の決定

売却先候補の中から、売却先を決定します。

5.契約・決済

ビルの買い手と売買契約を結びます。売買契約で定めた期限内にで決済と引渡しを行います。

一般的な不動産の売却と異なる点

ビルの売却には、家やマンションなど住宅を売却するプロセスと異なる部分があります。住宅を売却する場合は、不動産売買仲介会社に依頼をして買い手を広く募集し、金額を交渉するなどして売買を成立させるのが基本です。

一方で、ビルは一般的な不動産の売却と前提となる条件や要件が異なります。ビルは、所有者にとって収益を生む重要な資産です。特に企業オーナー様については、ビルを売却することで経営状況や資産状況を調査されてしまうというリスクが生じます。そうしたマイナスの影響を防ぐために、買い手を広く募るケースは少なくなります。そのため、ビルの売却では複数の不動産会社に依頼できる一般媒介契約ではなく、特定の1社にのみ不動産の売却を依頼する専属専任媒介契約で買い手を見つけることが多い傾向があります。時間をかけて、可能な限り高い金額での売却を目指します。

また、ビルの売却はマンションや戸建ての物件、土地よりも金額が高い傾向にあります。企業や店舗などテナントが入居しているケースも多く、賃貸借条件を引き継ぐことを前提とした売却というパターンもあるため、売却先のメインターゲットは個人よりも事業者であることが多くなります。

ビル売却の際のポイントと注意点


ビルの売り手としては、できるだけ高い金額での取引成立を目指します。そのためには、取引において周辺の不動産の価格相場を入念に調査したうえで価格を設定したり、テナントが入りやすい状況を整えたり、注意しなければならないポイントがあります。こちらでは、ビルを高く売却するためのポイントや注意点について、代表的なものを挙げて解説していきます。

ビルの価格相場を把握する

売却に際し、売り手は「この金額で売却したい」という希望売却価格を設定します。しかし、設定した金額が相場とかけ離れている場合、買い手は見つかりにくくなります。このような状況を避けるために必要なことは、周辺不動産の価格相場を確認するというプロセスです。まずは、所有しているビルの近隣にある同規模物件の価格を調査し、相場を把握したうえで希望の売却価格を設定してください。

慎重に価格を設定する

売り手が設定した希望売却価格が相場と比べて高い場合は買い手が見つかりにくく、価格を低めに設定することで、買い手を短期間で見つけやすくなります。しかし、早期の売却が第一の目的になってしまい、交渉次第で相場よりも遥かに低い価格で買い叩かれてしまう可能性も生じます。ビルの売却で希望する利益を得るためには、価格設定を慎重に行うことが重要です。

テナントの入居率を上げる

ビルの価値は、公示地価や相続税路線価、固定資産税路線価などの公的評価をはじめ、立地、築年数、接道状況などの条件が大きく関わっています。それだけではなく、テナントの賃料や入居率、入居しているテナントの種類といった点も、重要なポイントです。テナントの賃料収入が多いビルや入居率が高いビルは、市場から収益性、安定性が高いと評価されます。その結果、売却価格にも良い影響が及び、より高い金額で売却できる可能性が高くなります。

修繕履歴を残す

定期的に修繕が実施されている、あるいは直近で大規模な修繕を行ったビルは、安全性が高く不具合などが出にくいことが期待できるため、市場から高く評価されやすくなります。魅力的なビルであることの根拠として、「いつ、どの部分を修理・メンテナンスした」という修繕履歴を残しておきましょう。詳細な修繕履歴は、買い手に対するアピールとなります。

また、ビルを所有し続けることで得られる収益と維持・管理に必要なコストを天秤にかけ、大規模修繕を行う前にビルを売却することも1つの手法です。ビルの所有や売買において、さまざまな選択肢を手にするためにも、修繕履歴は必要となります。

テナントが入った状態で売却する

ビルの所有者は、テナントが入居している状態でもビルを売却することが可能です。これをオーナーチェンジと呼び、現在の所有者とテナントの間で交わされた賃貸借契約は、次の所有者が引き継ぐことになります。テナントとしては、家賃の振込先が変わる以外は、所有者が変更されても基本的に問題はありません。

ビルの売買において、売り手は買い手と協力して不動産登記の所有権の移転手続きを実施します。完了後、各テナントに対して所有者や家賃の振込先の変更などを通知する賃貸人変更通知書を送付します。

管理会社への連絡・相談をする

ビルの所有者は、設備のメンテナンスや清掃などの業務をビル管理会社に委託するケースがほとんどです。管理会社が困惑しないためにも、ビルを売却する際は、ビルを売却する予定があることをあらかじめ連絡する必要があります。

また、売却が確定する前に管理会社に通知したことで、トラブルが発生したという例も散見されます。そのため、通知するタイミングには注意が必要です。

ビルを売却する際にかかる費用

ビルを売却することで、売却益を得ることができます。しかし、支払わなければならない費用もあります。具体的には、不動産会社への仲介手数料、譲渡所得税や消費税、法人税、さらには印紙代などです。何にどの程度の金額が必要になるのか、具体的に見ていきましょう。

不動産会社などに支払う仲介手数料

ビルの売買のプロセスは複雑であるため、不動産会社を通じて行うことが一般的です。不動産会社に売買の仲介を依頼した場合、担当した不動産会社などに手数料を支払うことになります。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、金額は売買価格によって変動します。以下、売買価格と手数料の割合の関係です。

・売買価格が200万円以下の場合/売買価格の5%+消費税
・売買価格が200万円超~400万円以下の場合/売買価格の4%+2万円
・売買価格が400万円超の場合/売買価格の3%+消費税

譲渡所得税

個人が不動産購入時の費用より高い価格で売却し、利益が発生した場合、譲渡所得税が発生します。譲渡所得税は、課税譲渡所得×税率計算式で算出することができます。まず、不動産の売却価格から売却にかかる経費(=譲渡費用)と、不動産の購入にかかった費用(=取得費)を差し引いて、譲渡所得を計算します。さらに、譲渡所得から特別控除を差し引いて、課税譲渡所得を計算します。算出された課税譲渡所得に税率をかけることで、譲渡所得税額を算出することができます。
ただし、税率はビルの所有期間によって異なり、5年以下の場合は39.63%(住民税、復興特別所得税含む)、5年を超える場合は20.315%(住民税、復興特別所得税含む)となります。
※復興特別所得税は、2037年まで、基準所得税額×2.1%として課せられます。
法人がビルを売却した場合は、その売却益を含めた企業全体の利益に対して課税されます。つまり、不動産の売却益に加え、事業による利益を合算した金額が課税対象です。そのため、個人のように譲渡所得税という概念はなく、法人税として算出される点が大きな違いです。

消費税

消費税の課税対象となる取引は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等です。その性質上、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等も含まれ、販売用の商品だけでなく使用していた建物の譲渡も課税対象となります。そのため、所有者が個人であったとしても、投資用として所有する場合や入居しているテナントから家賃収入を得ている場合は、ビルを売却する際に消費税がかかります。一方で土地については消費税の課税対象にはなりません。

売買契約に関わる印紙代

ビルの売買には、印紙税もかかります。印紙税は収入印紙を購入し、契約書に収入印紙を貼りつけ、その印紙を消印する方法で納付します。印紙税は売却価格によって変動し、売却価格が大きいほど印紙税も高額になります。以下は、売却価格に応じた収入印紙代の目安です。

・1,000万円超~5,000万円以下の場合/1万円
・5,000万円超~1億円以下の場合/3万円
・1億円超~5億円以下の場合/6万円
・5億円超~10億円以下の場合/10万円
※2024年(令和6年)3月31日までに作成される場合の軽減措置。 

また、印紙税に加えて、各種領収書に貼付する印紙代もかかります。売買代金に係る領収書の印紙代については、以下の通りです。

・1,000万円超~2,000万円以下の場合/4,000円
・2,000万円超~3,000万円以下の場合/6,000円
・3,000万円超~5,000万円以下の場合/1万円
・5,000万円超~1億円以下の場合/2万円
・1億円超~2億円以下の場合/4万円
・2億円超~3億円以下の場合/6万円
・3億円超~5億円以下の場合/10万円
・5億円超~10億円以下の場合/15万円

抵当権抹消費用

対象不動産に(根)抵当権が残ってしまっている場合、(根)抵当権を抹消登記してから引き渡す必要があります。ビルの購入時に金融機関との間にローン契約があった場合、金融機関は不動産を担保に抵当権を持つことになります。そのため、売却時に抵当権抹消登記の手続きが必要になります。この手続きを怠った場合、物件を担保に新しいローンを組むことができないなどの不利益が生じることがあります。

抵当権の抹消は個人でも可能です。費用は登録免許税として不動産1件につき1,000円です。専門家である司法書士に依頼する場合は、1万5,000円~2万円程度の費用がかかりますが、時間や手間を取られることなく、安心して任せることができます。

ビルを売却する際、どこに相談すべきか


相場の把握や適切な価格設定、税金の計算など、ビルの売却には専門知識が求められます。そのため、実際に売却を検討する際は、その道のプロフェッショナルに相談することをおすすめします。信頼できるパートナーとしては、資産運用のコンサルティング会社や不動産会社、税や不動産売買に関する有資格者などが考えられます。こちらでは、それぞれの専門家の強みや特徴について、ご紹介していきます。

資産や財産のコンサルティング会社

不動産は所有者にとって、大切な資産です。そのため、資産運用や土地の有効活用などに精通している資産・財産のコンサルティング会社は、頼りになる存在です。会社によって得意とする分野は異なるため、事前にWebサイトなどでサービス内容を確認し、自分の期待に応えてくれそうかどうかをよく吟味して、信頼できる会社を選択することが重要です。

不動産会社

ビルの売却は、プロセスが複雑かつ動く金額も大きいことから、契約の成立まで時間がかかる取引です。不動産売買を手掛ける不動産会社は、相場を熟知し、数多くの取引先を抱えていることから、安心して相談できます。特に、業界大手の不動産会社は売買仲介の実績が豊富です。まずは、複数の不動産会社に査定を依頼して、どの会社が売主目線で考えてくれるかを把握したうえで選択するなど、パートナー選びは慎重に行いましょう。

各専門分野の有資格者

不動産の売却において、必要な知識は多岐にわたります。そのため、自分が必要としている知識を持つ専門家の助力を得るという手段もあります。

たとえば、不動産を売却するとさまざまな税金が発生するため、税金について詳しく知りたい場合は税理士が最適な相談先となります。また、所有しているビルの不動産価値の査定を希望する場合は不動産鑑定士、不動産の登記についての書類作成や所有権などの権利関係を相談したい場合は司法書士というように、自分が求めている分野の有資格者のサポートを得ながらビルの売却を進めていくことも可能です。



 

まとめ

ビルの売却では、大きな金額が動きます。そのため、取引が成立するまでのプロセスは複雑かつ時間がかかることが多いでしょう。ビルの売却を成功させるためには、通常の不動産を売却するよりも慎重に取り組んでいく姿勢が重要です。納得のいく結果を得るためにも、ビルの売却を検討する際は専門知識と豊富な実績を持つプロに相談しながら進めていきましょう。

また、ビルの売却は不動産の専門知識も必要ですが、それに関わる税務知識も必要になります。ましてや財産承継や事業承継の手段として利用する場合は、ビル売却に付随するもの以外の点にも目を向けることも必要です。少しでもお悩みになりましたら、ぜひ青山財産ネットワークスまでご相談ください。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスグループでは、不動産鑑定士、税理士、会計士、司法書士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様やご一族にとって最適な財産構成を実現する総合財産コンサルティングを提供しています。

その一環として、お客様のニーズに合わせ、ビルやその他不動産売買のコンサルティングサービスを提供しています。ビルをはじめとしたお客様の大切な資産である不動産について、購入から保有、売却、アフターフォローまでのトータルサポートを行っています。お客様の目標達成に向け、市場や物件の状況を総合的に判断し、お客様にとって最大の価値を見出せるよう一気通貫でご支援する体制が整っているため、お客様のニーズにお応えすることが可能です。ビルの売却を検討される際は、ぜひご相談ください。

ビル売却に関するコンサルティングフロー

青山財産ネットワークスグループは、ビルの売却において、お客様のニーズに合わせ、ビルやその他不動産売買のコンサルティングサービスを提供しています。ビルをはじめとしたお客様の大切な資産である不動産について、購入から保有、売却、アフターフォローまでのトータルサポートを行っています。以下は、当社のビル売却のコンサルティングにおける基本的なフローです。

①ビル売却の目的の説明と提案
②物件の状態をヒアリング、各種調査の実施
③売却価格の市場調査
④入札方式等による売却先の選定と条件交渉
⑤売却先(買い手)の決定・契約
⑥引渡しまでの責務の実行(確定測量等)
⑦決済と決済後のテナント通知等アフターフォロー
 
「収益性を高めるために自社が保有するビルを売却したい」、「物件の価格が高騰している間にビルを売却したい」、「自社ビルを売却して手元資金を確保したい」などビルの売却をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。お客様の悩みやご希望に合わせ、専門のコンサルタントが尽力いたします。
 
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