2023.02.17
財産承継財産運用
資産管理会社に合同会社が選ばれる理由とは?メリットや注意点も解説


資産管理会社とは、土地や建物、有価証券といった資産を保有管理する会社のことです。資産管理会社は株式会社や合同会社など、会社であれば種類は問われませんが、合同会社を選択されるケースが見られます。
この記事では、資産管理会社の概要や設立のメリットから、株式会社ではなく合同会社が選択される理由、注意点まで詳しく解説します。
また、不動産の売買や財産承継、事業承継、M&A、資産運用などの相談をお考えの方は、ぜひ当社をご検討ください。
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資産管理会社とは

資産管理会社とは、土地や建物、車、有価証券、現金など、個人の所有財産を保有管理する会社のことです。設立時や設立後に財産を会社に移転することで、相続時には財産が資産管理会社の株式となるため、遺産分割が行いやすくなります。また、設立者やその家族を役員登用し、会社の経費として役員報酬を支払うようになります。加えて、役員報酬や社会保険料を含め、資産管理会社の運営に必要となる経費は法人税の課税所得から控除されるといった理由から資産管理会社が活用されています。

資産管理会社を設立するメリット


資産管理会社の設立を検討する際は、自社にとってのメリットを明確化することが重要です。メリットがデメリットを上回ると判断できた場合は、資産管理会社の設立を前向きに検討して良いでしょう。資産管理会社を設立するメリットは次のとおりです。

相続手続きにおいて取り扱いがしやすくなる

経営者を交代させて継続できる資産管理会社が財産を保有することは、相続においてメリットがあります。個人で不動産を所有している場合、相続の度に所有権を移転しなくてはならず、分割方法が決まらずに共有状態になってしまうこともあるでしょう。一方で、不動産や自社株式などの相続財産を資産管理会社に集約し、資産管理会社の株式として一本化することで、それぞれの財産の持分を分割せずにすみます。特に不動産を共有持ち分にしてしまうと、その不動産を有効活用しようとしても所有者全員の合意が必要となり、調整に時間がかかるばかりか、合意が得られずトラブルに発展することもあります。資産管理会社に相続財産を集約することで、相続時には資産管理会社の株式をどのように分割し相続するのかというシンプルな考えで遺産分割を進められるようになります。ただし、株式の分散は、不動産の共有と同様にトラブルの要因となるため、注意しなければなりません。

相続税の納税資金の確保にもなる

個人が所有する財産は、相続時には相続人に受け継がれ、相続税が発生します。被相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に現金で納付する必要があり、場合によっては納税資金を確保するために不動産などの相続した財産を売り急がなければならないこともあります。事前対策として、資産管理会社からご家族に役員報酬を支払うことで、納税資金を確保しておくことも可能です。

毎年の所得が分散できる

不動産を賃貸として貸し出している場合、家賃収入を得ることができます。家賃収入は個人の利益になる一方で、家賃収入が他の収入に上乗せされて所得が上がれば、それだけ所得税も高くなる点に注意が必要です。資産管理会社に賃貸用不動産を移転することで、家賃収入は資産管理会社のものになります。つまり、個人の収入が会社に分散されることになります。また、不動産以外の利益を共同経営している家族に報酬として支払うことで経費に計上できます。ただし、役員としての実態が伴っていなければ認められない点に注意しましょう。例えば、家族を共同経営者としているが、実際に管理を行っているのは代表者本人のみの場合は、役員としての実態が伴っていないと判断される恐れがあります。

資産管理会社に株式会社と合同会社が推奨される理由

会社形態には、株式会社と合同会社の他に合名会社、合資会社があります。なかでも、資産管理会社を設立する場合は、株式会社、または合同会社が選択されることが多くあります。その理由には、有限責任や税金の扱いが関係しています。資産管理会社は株式会社と合同会社が推奨される理由について詳しく解説します。

有限責任により出資額以上の責任を問われない

資産管理会社は、株式会社と合同会社が推奨されています。これらの会社形態は出資者の責任が有限のため、出資した金額以上の責任を問われることがありません。一方、合資会社や合名会社は出資者の責任が無限のため、出資した金額以上に責任を問われる可能性があります。例えば、資産管理会社が多額の負債を負い、倒産することになった場合、その出資者の個人資産を持って弁済することになります。個人資産で弁済できない場合は、資産管理会社と同様に破産手続きが必要になる可能性もあり、その後のライフプランに大きな影響を及ぼすでしょう。

個人の所得税の実効税率と扱いの違いがある

法人は個人と異なり、所得税ではなく法人税を納めます。法人の利益にかかる各種税金の実効税率は、中小法人では所得400万円以下が22.04%、400万円超~800万円以下が23.91%、800万円超が34.59%、大法人では30.62%です。一方、個人では課税所得4,000万円以上で所得税の税率が45%となり、住民税と合わせれば55%にも達します。このように、将来の相続税の納税を見越して、運用収益を効率よく資産管理会社に留保していくことができます。
※税率は令和4年12月末時点のものです。
※実効税率の計算上、地方税の税率は超過税率(東京都)を前提として計算しています。
※中小法人は資本金が1億円以下の一定の法人、大法人は資本金が1億円超の外形標準課税対象法人として計算しています。

資産管理会社を合同会社とするメリット

資産管理会社は、株式会社と合同会社が推奨されていますが、なかでも合同会社を選択することでより多くのメリットを得ることができます。資産管理会社を合同会社として設立するメリットについて詳しく見ていきましょう。

▽相続対策のための資産管理会社についてはこちら
相続対策のために資産管理会社を設立するメリットや仕組み

比較表にまとめると、以下のとおりとなります。
合同会社 株式会社
設立費用 11万円程度
※出資金の額に応じて変動
20万円程度
運営・維持コスト
(官報掲載費・重任登記
にかかる登録免許税等)
役員の任期:なし
決算公告:不要
→官報掲載費・重任登記にかかる登録免許税等が不要
役員の任期:通常2年、最長10年
決算公告:不要
→官報掲載費・重任登記にかかる登録免許税等がかかる
意思決定の速度 所有者=経営者として迅速に意思決定ができるために速い 株主総会を開催する必要があり、速度が遅くなりやすい

比較的少額で設立できる

株式会社と比べて合同会社は比較的少額で設立できます。株式会社の設立にかかる費用は、司法書士に支払う報酬を除き、20万円程度です。一方、合同会社の場合は11万円程度に抑えられる可能性があります。ただし、出資金の0.7%分、登録免許税がかかるため、出資金の額に応じて金額が上がる場合があります。しかしながら株式会社よりは少額で設立できるケースが多いため、まずは設立にかかる費用について計算してみましょう。

運営コストが低い

株式会社の場合、毎年の決算公告義務による官報掲載費が発生しますが、合同会社には決算公告義務がないため、官報掲載費はかかりません。また、役員の任期も設ける必要がないため、役員の任期が終了する際に納める「重任登記にかかる登録免許税」も不要です。このように、設立にかかる費用に加えて定期的にかかる費用も抑えることができます。

意思決定のスピードが速い

株式会社では、経営方針の変更をはじめとした重要な事項の決定には、株主総会を開催する必要があります。一方、合同会社は所有者と経営者が同じであるため、株主総会を開催する必要がなく、迅速な意思決定が可能です。 

合同会社を設立する場合の注意点


合同会社は、株式会社と比べて費用や意思決定の面でメリットがあります。しかし、合同会社にもデメリットはあります。そのため、デメリットを踏まえて、合同会社を設立すべきかどうか判断することが欠かせません。合同会社を適切に運営していくための注意点について詳しく見ていきましょう。

合同会社の解散を防ぐ対策を立てておく

合同会社の社員が1人の場合、その社員が亡くなると合同会社は自動的に解散となります。合同会社が解散したことで、遺族に想定外の費用がかかる恐れがあるため、このような事態を防ぐために次の2つの対策を立てておくことが重要です。

・死亡時の持分引き継ぎを規定しておく
定款に、「社員が死亡した場合に退社ではなく、相続人に出資持分を引き継ぐ」といった内容を盛り込んでおくことで、出資持分を相続人に承継することができます。

・複数人の社員を設定する
社員が1人かつ死亡した場合に、合同会社は解散となります。そのため、複数人の社員を設定することで、解散を防ぐことが可能です。

複数人の社員を設定する場合は意見の分裂に注意

合同会社は、株式会社とは異なり出資比率に関係なく、全ての社員が意思決定の議決権を1票ずつ持つことになります。そのため、社員間で意見が分裂すれば、自身がイメージしていた資産管理ができなくなる可能性があります。
このような事態を防ぐために、定款で業務執行社員を定めておくことが重要です。業務執行社員とは、合同会社における事業を運営する社員のことで、資産管理業務をその人物が行うことができます。そのため、社員間で意見が割れたとしても、想定していた資産管理を行えるでしょう。前提として、業務執行社員は自分あるいは信頼性が高い人物でなければ、結局は想定していた資産管理ができなくなります。そのため、業務執行社員は慎重に選ぶべきでしょう。

まとめ

資産管理会社を設立する場合に、合同会社は低コストで設立でき、運営コストも抑えられ、意思決定も比較的スピーディーに行えるため、選択肢の1つとして選ばれています。しかし、設立する際に株式会社と合同会社のどちらを選択すべきかはご自身の目的や財産状況、税制等を考慮して検討する必要があるため、専門家のサポートを受けるようにしましょう。特に、相続に必要な対応を見据えるとなると、高い専門知識がないとトラブルの原因になることもあります。
資産管理会社の設立をお考えの方は、ぜひ青山財産ネットワークスまでご相談ください。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスグループでは、税理士、会計士、司法書士、不動産鑑定士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様やご一族にとって最適な財産構成を実現する総合財産コンサルティングを提供しています。
資産管理会社の活用についても豊富な実績を持ち、設立のサポート、財産の運用・管理、相続等の承継について次世代、次々世代までを見据えたお客様にとって最適となるご支援をさせていただきます。

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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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