2022.12.06
事業承継
廃業にかかる費用はどのくらい?事業形態ごとの費用と手続きを解説


廃業することを決めた時に、お金は大きな問題になります。
債務を返済できる資金が無い場合は、廃業ではなく「破産」という形を選ばざるをえなくなるためです。

実際に、廃業をするにはどのような手続きを行い、どれくらいの費用が発生するのでしょうか。
法人の場合も、個人事業主も、廃業を視野に入れるのであれば早めの試算が重要になります。場合によっては、廃業でも破産でもない「M&A」という形を選んだ方が、大きなメリットとなることもあるでしょう。

この記事では、主に費用面に着目をしながら、業態ごとの廃業について詳しく解説いたします。
また、廃業という選択肢を考える際に、事業を継続させるための一つの方法としてM&Aによる事業承継に関してもご紹介いたします。

 



廃業をする中小企業が増加中

廃業といえば、事業を続けることができずにたたむことを指しますが、一般的に事業や会社経営において廃業とは避けたいものです。
しかし、事情は個々で違うものの廃業しなければならない状況に陥ってしまうことはそれなりにあります。
特に近年は中小企業の廃業は増えており、年々その数は増加傾向にあります。
そもそも廃業と倒産・破産は性質が異なり、倒産などは資金的な問題によって事業が続けられなくなることを言いますが、近年増えている廃業は経営者が高齢で後継者がいないといった理由から行われることが多くなっています。 

廃業にかかる費用はどれくらい?

廃業するにあたって実は費用がかかることをご存じでしょうか?
個人事業主の場合は、個々の状況の違いによる差が大きいため一概には言えませんが、場合によっては0円で済むこともあります。
しかし、中小企業が会社を廃業するという場合には必須の費用として7~8万円程度はかかります。
この最低限必要な費用が捻出できないというケースは少ないと思いますが、廃業をすることにもお金がかかるという事実は頭に入れておくべきでしょう。 

法人は登録免許税が発生する

会社を廃業しようとする場合には、登録免許税というものが必要になってきます。
金額としては39,000円が必要になりますが、登録免許税自体は30,000円で、清算人登記にかかる登録免許税で9,000円となっています。
決算結了時には、決算結了登記で更に2,000円かかってくるので40,000円前後が必須になってきます。
個人事業主の場合はこれらの費用は発生しませんが、法人は書類だけを提出して終わりとはいきません。
この他にも、様々な費用がかかってくることを忘れてはいけません。 

その他の費用

先ほど説明した必須の費用に加えて、官報公告も必須となっており、これは法律で定められています。
官報公告の廃業公告については40,000円ほどかかるため、合計では最低でも80,000円ほどかかる計算になるわけです。
また、廃業する際には雇用保険廃止の手続きなども行う必要があり、様々な手続きが必要になってきます。
もちろんこれらの手続きを自分で全て行うということは現実的ではありませんから、専門家である司法書士や税理士に仕事を依頼することになるはずです。
その場合は、最終的に費用として数十万円の支払いが発生してしまいます。 

施設の処分、原状復帰が大きな負担に

廃業するにあたって大変なのは、手続きだけではありません。
法人として事業展開している場合は、事務所や店舗といった様々な施設を処分したり原状復帰をする必要が出てきます。
処分にどの程度のコストがかかるかは、施設や規模によって異なるため難しいところですが、かなりの金額になってしまうことが多いようです。
また、販売する商品の在庫などがあれば、在庫の処分にもコストがかかる点は忘れてはいけません。
廃業を考える場合は、資金繰りに余裕があるうちに、これらのコストを事前に把握しておくと良いでしょう。 

株式会社の廃業の流れ

株式会社の廃業の場合、まずは廃業日を決めて株主総会を開き、会社の解散に関し決議(半数以上の株主の出席のうえ3分の2以上の承認)が必要になります。
また、この際に清算人という財産整理を行う人を選びますが、一般的には代表取締役が選ばれます。
廃業が決まったら「解散登記」と「清算人選任登記」を2週間以内に行って、財産目録・貸借対照表の作成や確定申告と税務署への届け出といった各所への必要書類の提出を行います。
また、従業員の解雇通告や取引先への通達なども済ませます。
その後は官報への解散公告を行って清算手続きに入ります。
清算時に財産が残る場合は株主へ分配され、ここまで終わって決算報告書を作成し株主総会で承認されることで決算結了となります。
清算結了登記を法務局へ行うと完全に会社は廃業となり、最後に確定申告をして清算結了の届け出を必要なところへ提出して完全に終了です。
 

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有限会社の廃業費用

有限会社の廃業費用は基本的には株式会社と違いはありません。
解散登記に30,000円、清算人登記に9,000円がかかりますし、官報公告も同様に40,000円ほどかかります。
清算結了登記に2,000円かかるという点も株式会社と同じです。
この他に、廃業にかかる費用も、施設などの処分費用という意味では株式会社も有限会社も違いはあまりないでしょう。
あえて比べるのであれば有限会社は設立時の資本金が300万円以下であったり、社員数が50人以下という制限があるため規模が小さいケースが多いため株式会社と比較すると最終的にかかる費用は安くなりがちではあります。 

有限会社の廃業の流れ

有限会社でも廃業するにあたっては廃業日を決めて株主総会を行う必要があります。
株主総会において決議を行い、清算人の選任を行います。
廃業が決まったら2週間以内に法務局へ解散登記と清算人選任の登記申請を行います。
次に財産目録や貸借対照表を作成した後、従業員への解雇を通告したり取引先への通達を行うといった作業を行います。
その後官報に解散公告を行って財産を確定して残余財産があれば分配を行います。
分配まで終ったら決算書類を用意して解散確定申告も済ませます。
最後に株主総会で清算決算報告書が承認されたら清算結了登記を済ませて終了です。 

個人事業主の廃業費用

個人事業主の場合は、廃業にかかる費用は法人とは大きく異なります。

廃業に関わる手続き上で費用がかかることはほとんどないため、事業内容によっては廃業は0円で行うことができるかもしれません。
ただし、事業を行うにあたって様々な設備を用意していた場合は、その処分などに費用がかかるケースはあります。
また、事務所を借りているような場合は原状復帰等に費用がかかってくるケースもあるため、完全に廃業費用が0円ということは少ないようです。 

個人事業主の廃業の流れ

個人事業主が事業を廃業する場合は廃業日を決め、税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を廃業から1カ月以内に提出する必要があります。
また、個人事業主の多くは青色申告を行っていますが、青色申告の取りやめ届出書を翌年3月15日までに提出しなければなりません。
消費税を支払う規模の事業だった場合には、事業廃止届出書の提出も必要になってきます。
さらに従業員を雇用していた場合には、源泉徴収の関係で、税務署に給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書を提出することになります。
最後に、廃業にあたって予定納税額が多くなってしまうケースでは予定納税額の減額申請書を税務署に提出する必要があります。
1期2期の減額申請は7月1日から7月15日、2期のみの減額申請は11月1日から11月15日の間に提出します。 

廃業における確定申告とは

廃業するとしても、黒字の場合は確定申告が必要になってきますので忘れてはいけません。
特に近年は後継者問題などの理由で黒字経営にも関わらず事業を続けられなくなって廃業というケースが非常に多いです。
このケースだと事業で黒字が出ているので、確定申告を忘れるとペナルティがあるため注意が必要です。
また、通常時の確定申告と少し違うところもあるため、特に赤字の特殊ケースについてはしっかりと理解しておかなければいけません。 

黒字廃業の場合

何らかの理由によって黒字のまま廃業するケースでは、確定申告は基本的に通常時と同じように行います。
個人事業主の場合、廃業した年の確定申告は翌年2月16日から3月15日の通常スケジュールで行います。
法人の場合は少し異なっていて、通常だと決算から2カ月以内なのですが、廃業の場合は清算登記のタイミングで合わせて確定申告することになります。
個人の場合は特に意識しなくても問題はありませんが、法人の場合はタイミングが通常とは異なるので注意が必要です。 

赤字廃業の場合

赤字廃業の場合は利益が出ていないということなので、確定申告が不要になります。
ただし、何が赤字なのかというのが注意が必要なポイントで、「会計上で赤字になってしまったから廃業」というケースでは確定申告が必要なこともあります。
会計上では赤字となっていても所得としては黒字になっているという状況があるためです。税務上は黒字になっているのであれば、確定申告が必要になるルールなので覚えておきましょう。
税務上でも赤字になっているケースは確定申告が不要になります。 

廃業後の経費計上には「必要経費の特例」を

事業を廃業とする際には様々な形で費用がかかってくることがあります。
法人では必須の費用というものがありますし、個人事業主でも場合によってはまとまったお金が必要になることもあります。
この廃業にかかる費用というのは廃業後のものですが、廃業した年、またはその前年の経費として認められます。
必要経費の特例が認められるのは個人事業主であり、本来は廃業していなければ経費として計上できる範囲のものに限られます。また、個人事業税については廃業から1カ月以内に申告して納税しなければならないので忘れずに行うように注意しましょう。 

廃業による経済的損失を避けるならM&Aという選択肢も


ここまで廃業には様々な形で費用がかかるということを説明してきました。
在庫処分費用を試算して、とても高額になってしまうことが後から発覚することもあるでしょう。
そうした廃業の損失を最小限に抑えるどころか、場合によってはプラスになるM&Aという選択肢もあります。
もちろん、ベストマッチの相手が見つかるかどうか、条件が良いかどうかという問題はありますが、M&Aなら事業の売却益を得ることができるかもしれません。
また、事業に必要なものや在庫なども引き継いでもらえれば処分する費用はかかりません。 

中小企業に広がる、「事業継承型M&A」という流れ

M&Aとはいってもどの事業でも買い手がつくわけではありません。赤字続きで将来的な見込みの少ない事業ではうまくいかない可能性もあります。
しかし、今の日本の中小企業においては赤字だから廃業するというケースよりも、後継者問題や経営者の高齢化によって廃業とするケースが非常に多いです。
安定して黒字を出している事業というのは、事業自体には価値があるのは分かりきっていますからM&Aの成功率はそれなりに高く、今後はその流れがより強くなっていくはずです。

事業承継のプロに相談しよう

それなりに実績のある事業を廃業にするためには、多くの手続きと資金が必要だということがわかります。
赤字でどうしようもない場合は諦めて廃業するしかありませんが、黒字で廃業しようと考えている場合は廃業のことを考える前に事業承継のプロへ相談するのが良いでしょう。
プロとは、事業承継のコンサルティングを行っている会社のことです。さまざまな業種のM&Aを成功させた実績のある会社なら、初めての廃業でも安心して相談ができます。
相談は、廃業を視野に入れ始めた段階で、なるべく早めに行うと良いでしょう。 

まとめ

廃業をする際にかかる費用を中心に、業種ごとの廃業に関して詳しく解説いたしました。
事業を廃業するのに、個人事業主はさほど大変ではありません。状況によっては、心身ともに健康なうちに廃業してしまった方がいい事もあるでしょう。
一方で法人の場合は、廃業するにあたって株主の同意が必要であったり、様々な手続きが必要なうえにお金までかかるという違いがあります。

これまで培ってきた事業を後世に残すためにも、M&Aを選択肢に加えるというのは重要な考え方の1つになります。
事業継承のことなら、中小企業のオーナー向けにコンサルティングを行っている会社に相談をしてみましょう。事業承継のプロフェッショナルなら、理想的なM&Aに向けてサポートしてくれます。

「M&Aを検討しているが買手が見つからない」課題を解決へ。

一方で、「M&Aの道を探るも、買手が見つからない」というような悩みを持たれる方々が増えてきているのも事実です。
この課題を解決するために、私たち青山財産ネットワークスが取り組むのが「縮小型事業承継」です。

縮小型事業承継とは、自社の競争力や能力に合わせて、事業規模を縮小させて会社を承継するという考え方のことです。

例えば、不採算商品や店舗から撤退して赤字部分をなくし、かつ、資産を売却しスリム化し、「優良な取引先」「信頼を獲得している顧客」「熟練した技術」「地域に根付いたブランド(看板)」などは残すといったイメージです。
このように取捨選択を行い、全体規模を縮小することで、譲渡価格を小さくするという考え方になります。買手に「買うメリット」を感じさせることにより、M&Aが成立し、承継に成功した事例はいくつもあります。

当社は、事業が承継できない原因を改善し、縮小均衡を図って事業承継を可能にします。


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