2023.02.24
財産承継
親が認知症だと相続対策できない?事前に行いたい5つの相続対策をご紹介
厚生労働省の発表によると、2025年時点で65歳以上の高齢者の3人に1人は認知症及びその予備軍になると予想されています。こうした状況をふまえ、私たちの親族まで含めた人生設計、また相続対策を考える際には、認知症というリスクを念頭に置く必要があるでしょう 。
厚生労働省老健局|認知症施策の総合的な推進について(参考資料)

本記事では、財産を遺す側である“被相続人”が認知症の場合、どのような問題が生じるのか。そして、親が認知症になってしまう前に行っておきたい“相続対策”についてご紹介します。
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親が認知症になったときにおこる問題

祖母と孫|青山財産ネットワークス


認知症だからといって、行った法律行為が直ちに無効となるわけではありません。しかし、法律行為を行った時点の本人の判断力や、行為の内容等を総合的に考慮した結果、当該法律行為が無効であると判断される場合があります。相続に関する法律行為といえば、不動産売却や遺言書の作成などがありますが、親が認知症と診断されてから行った不動産の売却や、作成した遺言書の内容等は、無効であると判断される場合があるということです。

なお、認知症を発症する前に書かれた遺言書があるからといって安心はできません。なぜなら、遺言書の法的効力の有無を最終的に判断するのは、遺族ではなく裁判官だからです。「被相続人がいつから認知症だったか」「この遺言書の作成時点で本人に正常な判断能力があったのか」、これらを第三者である裁判官に証明するのは容易ではありません。

被相続人が認知症になる前に行いたい5つの相続対策

親や配偶者、そしてあなた自身が認知症になっていない今のうちから、相続対策を検討しておきましょう。ここでは、被相続人となる方が認知症と診断される前に行いたい相続対策を5つご紹介します。

>遺言書(公正証書遺言)を作成する

遺言書|青山財産ネットワークス


前述のとおり、「遺言書作成時に被相続人は認知症の可能性があった」と裁判所に判断される遺言書では、万全の備えとはいえません。そこで、被相続人となる方の認知症に備えて覚えておきたいのが、“公正証書遺言”です。

遺言書には、一般に遺言書と認識されている“自筆証書遺言”のほか、“公正証書遺言”と“秘密証書遺言”という種類があります。 以下の表より、それぞれの詳細を確認しましょう。

<法定後見と任意後見>
自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
執筆者 被相続人 公証人 本人・代理人
記述方法 被相続人の直筆のみ
財産目録のみ印刷・コピー可
公証人が記述 パソコンでの作成や代理人の代筆も可
証人 不要 2人以上 2人以上
保管方法 被相続人が保管
*保管制度を利用すれば法務局での保管も可能
公証役場で保管 被相続人が保管
自筆証書遺言
執筆者 被相続人
記述方法 被相続人の直筆のみ
財産目録のみ印刷・コピー可
証人 不要
保管方法 被相続人が保管
*保管制度を利用すれば法務局での保管も可能
公正証書遺言
執筆者 公証人
記述方法 公証人が記述
証人 2人以上
保管方法 公証役場で保管
秘密証書遺言
執筆者 本人・代理人
記述方法 パソコンでの作成や代理人の代筆も可
証人 2人以上
保管方法 被相続人が保管

公正証書遺言には「2人以上の証人立ち合いのもと作成されること」「作成後は公証役場で保管されること」という2つの特徴があります。この特徴から、内容の不備や遺言書の紛失が起こりづらく、被相続人の遺言能力の証明がしやすいのが強みです。

一方で、作成には公証役場に事前の申請が必要であったり、複数の公的書類を求められたりと、知識のない状態で実施するのは難しい側面もあります。不安があれば、公証役場か弁護士事務所に相談するとよいでしょう。

成年後見制度(任意後見制度)を利用する

成年後見制度とは、認知症や加齢、障害により判断力が低下した方に代わり、財産管理や身辺上の保護といった法律行為を支援する制度です。成年後見制度は大きく、“法定後見制度”と“任意後見制度”の2つに分かれます。どちらも被後見人の財産を守るという目的は同じですが、親が健康なうちに行っておきたい相続対策は“任意後見制度”です。法定後見制度と任意後見制度の詳細は以下のとおりです。

<法定後見と任意後見>
法定後見制度 任意後見制度
制度の利用目的 実際に判断能力が低下してから、その不安・不都合に備えるため 判断能力があるうちに、将来の不安・不都合に備えるため
後見人の選定 家庭裁判所 契約者本人
効力が発動する時期 親族等による家庭裁判所への申立て 本人の判断能力が低下したとき
後見人の権限 包括的 契約時に定めた範囲内

法定後見制度においては原則、後見人は相続対策や贈与等が行えません。一方で、任意後見制度で契約者本人が選んだ後見人であれば、契約時に代理権について取り決めることで財産の管理等々の相続対策が可能です。なお、法定後見制度のみならず任意後見制度も、知識のない状態で実施するのは難しい手続きであるため、内々で進めるのではなく専門家への相談をおすすめします。

民事信託(家族信託)を契約する

民事信託(あるいは家族信託)とは、財産を持つ方が信頼できる他者や家族に財産を託し、管理・運用を任せる制度です。民事信託(家族信託)の主な特徴を以下にまとめました。

<民事信託(家族信託)の特徴>
・被相続人が認知症になった後の財産管理ができる(信託契約締結時の契約の範囲内に限る)
・財産の管理・運用を行う“受託者”のほか、運用益を得られる“受益者”の設定ができる
・委託者がなくなった場合の財産の相続人をあらかじめ定めておける

民事信託(家族信託)は、信託契約により様々なアレンジをすることができ、長期的な財産の承継・運用・管理に有用であるといえます。

生前贈与を行う

生前贈与とは、財産を遺す側(贈与者)の存命中に財産を他者へ譲ることを指します。財産を遺す側(被相続人)の死亡後に財産を引き継ぐ“相続”とは意味合いがやや異なりますが、財産を継承するという点では共通しています。 生前贈与では「いつ」「誰に」「どのような財産」を贈与するか、贈与者が生きているうちに選べるため、相続争いなどのトラブルを避けられるのがメリットです。また“暦年課税制度”を利用すれば、毎年110万円までの贈与が非課税で行えます。そのため、計画的に財産を継承する手段としては極めて有効です。

ただし、被相続人の死亡前3年(※)以内の贈与については、死亡時の相続と合わせて相続税の対象となるので注意が必要です。生前贈与について家族で話し合い、早期に行動に移しましょう。

※2022年10月16日に公表された「令和4年度税制改正大綱」において、相続税の対象となる贈与の期間が死亡前3年→7年に延長されることが決定しました。期間の延長は2027年以降の相続から段階的に行われ、2030年末に完了します。

あらかじめ資産を組み換えておく

遺される財産の内訳によっては、相続トラブルを招きやすいケースがあるので注意が必要です。相続トラブルを避けるには、資産の組み換えも検討しましょう。

特に遺族間でトラブルに発展しやすいのが、不動産にまつわる相続です。兄弟が不動産を共有名義で相続する“不動産共有”は最たる例です。不動産共有のリスクについて、詳しくは下記記事で解説しているのでご一読ください。
「不動産共有」はリスク大。相続前に予防、すでに共有しているなら早期の解消を

1人で悩む前に、まずは専門家に相談を

専門家に相談|青山財産ネットワークス


相続対策には複雑な手続きがいくつも発生するため、まずは専門家へ相談することをおすすめします。専門家からアドバイスを受けながら状況にあった制度を組み合わせることで、ご家族にとって最適な相続対策を進めることができるからです。

その際には、法定相続人やおおよその資産状況などを簡単に説明できるように準備しておくと、相談をスムーズに行えます。また、最終的には相続人の誰かが取りまとめ役として進める必要が出てきます。ご一族の中で争いが起きる可能性が少しでもあるのであれば、早めのうちから専門家に依頼するとよいでしょう。

本記事は2023年1月末時点の情報をもとに作成しています。
最新情報は財務省HPをご確認ください。

まとめ

高齢者の認知症リスクという避けられない課題がある中、親が健康なうちから対策を検討することは非常に重要なことです。認知症になってしまってからでは、最適な財産承継(相続) を行うのは困難です。本記事でご紹介した5つの方法も含め、早めの段階から相続対策を実施しましょう。

ご相談は青山財産ネットワークスへ

青山財産ネットワークスは、総合財産コンサルティング会社として唯一の上場企業です。創立から30年以上に渡り、資産家・企業オーナーの皆様へ、次世代、次々世代を見据えた相続に関するコンサルティングサービスを提供してきました。

税理士、公認会計士、司法書士をはじめとした150名以上の国家資格を有する専門家の知見をもとに、認知症にまつわる相続対策においても、ご一族にとって最適なご提案・実行のご支援をお約束します。また、相続した財産の有効活用、遺産分割のトラブルといった相続後の課題や、事業承継などの課題についても包括的にサポートいたします。

・ご家族の中で認知症になりそうな方がいて、遺産分割について不安に感じている
・最近まわりから認知症ではないかと言われてしまい、相続についても悩みが出てきた
・認知症になる前に財産承継(相続)について整理しておきたい

といった悩みをお持ちの方は、
まずはお気軽に、【無料面談/ご相談】からお問い合わせください。
 

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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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