2023.04.07
財産承継
マンションを相続する際に必要な手続きや発生する費用について解説
親や兄弟などの親族にマンションの所有者がいる方は、マンションを資産とした相続の当事者になる可能性があります。
そこでこの記事では、相続の際にかかる税金や費用、相続税評価額の計算方法、相続税がかからないケース、マンションを相続する際の流れや注意点などについて解説します。親族へのマンション相続を検討されている方や、将来的に相続する可能性がある方は、参考にしてください。

また、不動産の売買や財産承継、事業承継、M&A、資産運用などの相談をお考えの方は、ぜひ当社へのご相談をご検討ください。
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マンションの相続にかかる費用

マンション相続にかかる費用
マンションに限らずですが、不動産の相続が発生した場合、相続税を払わなければなりません。一般的にマンションは資産価値が高く、相続税は数千万円~億単位になることもあります。そのため、将来的に相続人になることがわかっている場合は、事前に納税資金の確保を含めて、将来の準備をしておくことが重要です。また、相続税以外にも様々な費用がかかるため、想定よりも費用がかさんでしまう可能性があります。こちらでは、マンションの相続で必要となる主な費用について紹介します。

相続税

相続税は被相続人(亡くなった人)が残した全ての財産が課税の対象であるという点を認識しておくことが重要です。現金や株、投資信託といった金融資産だけではなく、自動車や不動産も含めた全財産を合算した上で、相続税の金額は決まります。そのため、相続する財産の中には、金融機関への借金といったマイナス財産も含まれます。相続税の課税遺産総額は、全財産を合算した課税価格から基礎控除額を控除した額となり、控除額内であれば相続税の支払いの義務は発生しません。

登録免許税

土地や住宅などの不動産は、権利関係などを公に明らかにするために登記という制度が設けられています。マンションを相続した場合も所有者移転の登記をすることが求められ、この名義変更にも税金がかかります。ここで発生する税金が登録免許税です。

計算式は、「登録免許税=不動産の評価額(固定資産評価額)×0.4%(税率)」で、評価額が3,000万円の場合、登録免許税は12万円です。

司法書士の報酬

遺産相続にあたり、遺言書がない場合は全相続人による遺産分割協議を行います。遺産分割協議でまとまった内容を書面化する遺産分割協議書の作成や登記の申請を、司法書士に依頼するケースもありますが、その場合は別途報酬が発生します。

必要書類の取得費用

マンション相続の手続きでは様々な公的な書類を提出する必要があり、役所で取得するものが複数あります。以下は必要書類の一例ですが、それぞれの書類と取得できる場所、費用などについて紹介します。

基本的に役所でなければ取得できないものが中心ですが、登記簿謄本に関しては郵送やインターネットでも請求することが可能です。詳細は、管轄の役所や専門家にご相談ください。

・登記簿謄本/法務局・480円~600円程度
・固定資産評価証明書/市区町村役場・400円程度
・被相続人(亡くなった人)の戸籍・除籍謄本/市区町村役場・450円~750円程度
・被相続人の住民票(除票)/市区町村役場・300円程度
・不動産取得者の戸籍謄本/市区町村役場・450~750円程度
・不動産取得者の住民票/市区町村役場・300円程度

相続税評価額の計算方法

マンション相続の計算方法
マンションの相続税額を割り出すためには、相続税評価額を算出する必要があります。マンションの相続税評価額は土地と建物をそれぞれ評価し、建物部分と土地部分の各相続税評価額を合算して計算するため、単純とはいえません。マンションにかかる相続税を計算してその価値を知るために、評価の方法についての理解を深めましょう。

土地の評価額

土地の相続税評価額は、おおよその目安を予測することが可能です。国税庁がホームページで開示している相続税路線価を用いて、以下のように計算します。

「路線価×マンションの敷地面積×持分割合=土地の評価額」

土地によっては、路線価が定められていないこともあります。その場合は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」よる倍率表で相続税評価額を用いて計算します。計算方法は以下の通りです。

「固定資産税評価額×倍率=相続税評価額」

建物の評価額

建物の相続税評価額は固定資産税の評価額と同じであり、実際に市場で取引されている額の70%程度です。固定資産税納税通知書にマンション全体の固定資産税評価額が記載されているため、それをもとに物件の正確な評価額を算出できます  。土地のように、計算式にあてはめて割り出す必要はありません。

マンションの相続に相続税がかからないケース

マンションの相続に直面すると、「多額の相続税を払わなければならない」と不安になるかもしれません。しかし、マンションの場合、条件が揃えば相続税がかからないケースがあります。相続税がかからないケースの具体的な条件を、実例を挙げながら詳しく見ていきましょう。

基礎控除額を超えない

相続税は遺産が基準額を超えると発生する税で、遺産の総額が基礎控除額以下であれば課税されないという仕組みです。遺産を相続する相続人全員が対象となり、他の控除と併用することが可能です。ただし、遺産総額は現金や株式など全ての遺産合わせたものを意味する点に注意が必要です。基礎控除額の計算式は、以下の通りです。

「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)=基礎控除額」

相続人が3人(配偶者+子2人など)の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3=4,800万円」であり、遺産総額の相続税評価額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。また、相続人の数が多いほど基礎控除額は高くなります。

配偶者控除が適用される

遺産相続の相手が配偶者であれば、基礎控除に加えて配偶者控除も適用されます。具体的には、「相続した遺産の総額が1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分」の、いずれか大きい方が控除額となります。

配偶者控除の適用を受けるには、「法律上の配偶者」「遺産分割が確定している」「相続税の申告書を提出する」の3つの要件を満たす必要がある点に注意が必要です。

小規模宅地等の特例にあてはまる

小規模宅地等の特例という制度もあります。この制度では、 一定の要件を満たした宅地の評価額を減額することが可能です。この特例はマンションにも適用されます。投資用マンションの場合は最大200㎡までで50%、同じく居住用の場合は最大330㎡まで80%が減額されます。

相続手続きの流れ

相続手続きの流れは、相続する遺産や相続人の調査、遺言書の確認、遺産分割協議、相続登記、申告・納税とある程度決まっています。こちらでは、相続の各段階の概要や具体的に取る行動について、詳しく説明します。

遺産・相続人の調査

現金、有価証券、マンションを含む不動産など全ての相続財産を調査し、相続財産を確定させます。金融機関への借金や住宅ローンなどの負債がある場合、それらも原則として相続の対象です。

相続人については、被相続人が遺言書を残しているか確認します。遺言書がある場合は遺言書の内容通りに財産を分割します。同様に、遺言書でマンションを相続する人が指定されている場合は、原則としてその人が相続します。遺言書の有無を問わず、相続対象の財産や相続人の調査は必要なプロセスであることを認識しておきましょう。

遺産分割協議

相続人全員による遺産分割協議という話し合いの場を設けて、具体的な相続内容について確定させます。その後、協議で決まった内容を反映させた遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ効果がありません。遺言書がない場合や、遺言書と異なる分け方にする場合も同様です。

相続登記

相続人がマンションを相続することが決定した後、マンション所有者の名義変更を行ないます。登記上の名義変更の手続きを相続登記といいます。
遺産分割協議書や相続登記申請書を作成する必要があるため、専門家である司法書士に依頼するケースが多く見られます。

また、不動産は相続登記がされていない場合、第三者にその物件の所有を対抗できないので注意が必要です。

税の申告・納税

相続した遺産の総額が基礎控除を超えている場合、相続税の申告と納税が必要です。期限は相続開始を認知した日から10ヶ月以内で、以下のような書類を提出します。各書類の記入の仕方など詳細については、専門家に相談することをおすすめします。

・遺言書または遺産分割協議書
・相続税の申告書
・被相続人の戸籍・除籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・全ての相続人の戸籍と印鑑証明書(遺産分割協議を実施した場合)
・全ての相続人全員の住民票  など

相続の注意点

相続の注意点
相続税の申告や納税には期限があり、相続が発生してから迅速に相続人が集まって相続の内容を決定しなければなりません。また、相続税の金額の割り出し方など難解な部分も多く、個人で対応するには一定の知識が必要です。こちらでは、スムーズに相続の手続きを進めていくためのポイントやノウハウについて見ていきます。

生前に遺言書を用意しているとスムーズ

遺産の分配には、相続人全員の同意が必要です。そのため、遺言書の存在は遺産相続をスムーズに進める上で非常に重要といえます。遺言書の作成は、被相続人自らが作成することも可能ではありますが、形式の不備などにより無効となる恐れがあります。有効な遺言書の作成方法など遺言書に関する詳細については、専門家(弁護士や司法書士、税理士、行政書士)に相談しましょう。

評価額を正確に把握するには専門家への相談が必要

相続税は、相続税評価額や税率、控除額が考慮されます。また、相続対象は建物と土地の合算によって成立するなど、その仕組みは非常に複雑です。相続税評価額や税率などの数字を正確に割り出したい場合などは、相続問題に詳しい税理士など専門家に相談や依頼するとスムーズです。専門家の力を借りることで、不安を払拭できるでしょう。

期限内に相続税を申告・納税することが必須

相続税は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」が申告の期限と定められています。期限を過ぎて申告書を提出・納税をした場合は、無申告加算税や延滞税が課され、より多くの税金を支払わなければなりません。全ての相続人が揃わず、申告期限までに遺産分割が決まらないなどのケースも想定されますが、その際は未分割で申告書を提出することが可能です。相続税の申告書は相続人自身でも作成可能ですが、内容にミスがあった場合は修正申告が必要ですので、最初から税理士に依頼するとスムーズです。

まとめ

権利関係や手続きが複雑なマンションの相続は、事前の準備が非常に重要です。あらかじめマンションの所有者が遺言書を用意していたり、法定相続人が誰なのかを調査したりしておくことで、相続をよりスムーズに進められます。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様やご一族にとって最適な財産構成を実現する総合財産コンサルティングを提供しています。
お客様の目的に合わせてマンションやその他の不動産の最有効使用をご提案いたします。有効活用の選択肢は多岐に渡りますので、専門のチームを形成し、あらゆる可能性を検討いたします。その際には、将来の相続税の納税プランの策定や、不動産事業としての収益性の検証を行います。それらは現在だけでなく未来の予測も行い、空室や修繕等のリスクを洗い出し、全方位対応となる課題解決のためのコンサルティングを提供しています。

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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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