2023.04.17
財産承継
借地権相続でよくあるトラブルとその対処法を紹介
親が他界し、相続財産を確認したところ「借地権」「借地権付き建物」が含まれていた――認識していなかった事実に直面し、戸惑う方も多いようです。
借地権を相続することになった場合、どのような問題が発生する可能性があるのでしょうか。起こり得るトラブルを知っておき、適切な対処ができるよう、対策方法をご紹介します。
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借地権とは?

借地権001
借地権とは、借地借家法で定義される「土地を借りる権利」を指し、借り受けた土地に自分で建物を建てることが可能です。借地権は、一般的に2種類に大別されます。

●地上権……土地所有者の許可を得ることなく第三者に譲渡・転貸が可能
●賃借権……第三者への譲渡・転貸にあたり土地所有者の許可が必要

借地権と所有権との違い

「借地権」を保有している場合、借地権者は土地を借りる対価として、土地の所有者に地代を支払う必要があります。

「借地権」についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
今さら聞けない借地権とは?トラブル回避のためのイロハ

一方、「所有権」は自身で土地を所有している権利が認められていること。当然ながら売却や賃貸を自由に行うことができます。

借地権の相続は土地の所有者の承諾なく行える

相続人が「借地権」を相続するにあたり、土地所有者から承諾を得る必要はありません。

そもそも、相続人の名義で賃貸借契約を改めて結び直す必要もないのです。とはいえ、土地所有者と良好な関係を続けるためには、双方に齟齬が無いように覚書等を取り交わし、賃貸借契約当事者の変更を行うことが望ましいでしょう。

借地権の相続にまつわる土地の所有者とのトラブルと対処法

借地権を相続する際には、土地所有者との間にトラブルが発生するケースもあります。起こり得るトラブルのパターンとその対処法についてご紹介します。

地代の値上げを要求される

「相続」というタイミングで、土地所有者から地代の値上げを求められることがあります。
しかし、相続人はこれまでと同様の条件で借地権を引き継ぐことになるため、地代の値上げ要求を拒否することができます。ただし、地代が経済事情の変動等により「不相当」となった場合は、借地借家法上、地代の増(減)額が認められます。

東京都心部をはじめ地価は毎年上昇傾向にあるため、賃貸借契約を締結してから相当程度の年月が経過している場合、現在の地価・周辺地域の賃料相場などに比べてかなり安い地代が設定されている事象も多く見られます。このようなケースにおいては、土地所有者から「地代等増減請求権」を行使される可能性があります。

借地の返却を迫られる

土地所有者によっては、相続を機に借地契約の解消を望むこともあります。このとき、土地所有者が借地契約更新を拒否するには「正当な事由」が必要となります。

建物の建て替え・売却を承諾してもらえない

相続を機に、借地に建っている建物を「建て替えたい」「増改築したい」「第三者に売却したい」と希望することもあるでしょう。いずれの場合にも、借地契約の内容を確認する必要があります。

すなわち、建て替え・増改築にあたっては、借地契約において「土地所有者の承諾を得る必要がある」という特約の有無を確認しましょう。この特約に基づき、土地所有者が建て替えを承諾してくれないケースもあります。

承諾が得られない場合は、土地所有者との交渉が必要です。
このとき、裁判所から土地の所有者に代わる許可(借地非訟)をとるといった方法もあるため、専門家に相談することをお勧めします。

借地権の相続にまつわる相続人同士のトラブルと対処法

借地権トラブル
土地所有者との関係は円満であっても、遺産分割協議を進める中で、相続人同士の間でトラブルが発生することもあります。よく起こるトラブルのパターンと対策をご紹介します。

誰が借地を相続するかで揉める

資産価値が高い借地権付き建物、かつ遺産の中で大きな割合を占めているような場合、複数の相続人のうちの誰が相続するかで揉めるケースがよく見られます。
話し合いによって解決するのが望ましいのですが、どうしても合意に至らない場合は、「遺産分割調停・審判」を利用するといいでしょう。

共有名義で相続すると後々のトラブルを招く

借地権付き建物を誰が相続するか決められなかった結果、複数人で相続する――つまり「共有名義」にしておくこともあります。しかし、後々トラブルを招くことがあるため、注意が必要です。

建て替えや売却をすることになった場合、共有名義人全員の合意が必要となります。ここで意見が分かれ、揉めてしまうことがあります。「長男は借地上の建物で暮らし続けたいが、次男は売却を希望し、三男は賃貸に出して家賃収入を得ようとする」といったケースです。

借地相続の際は相続税に注意!

借地権相続
上記以外にも、借地権相続の際に注意しておくべきことがあります。それは「相続税」です。
普通借地権の相続税評価額は「土地の自用地価格×借地権割合」で算出されますが、自用地(所有権)の評価額の30~90%となります。

借地の立地が良い場合は、評価額が高額となり、相続税も想定以上に高額となってしまうケースもありますので、注意して確認しておきましょう。

なお、一定要件を満たしていれば特例によって課税評価額が控除されることもあります。

トラブルを未然に防ぐためにできること

相続する段階での「こんなはずじゃなかった」を防ぐためには、事前にさまざまな事項を確認して現状を正しく理解し、計画的に対策をしておくことも大切です。

借地権の契約内容を見直し、更新の数年前からは、今後に関する複数の未来予想図を想定しておきましょう。そのためにも、土地所有者との関係を良好に保っておくことも重要です。

また、相続人同士で揉めそうであれば、相続前に「借地権者所有の建物を土地所有者に買い取ってもらう」などの処置も検討してみてください。その際には、上記の普通借地権の相続税評価の他に、公示地価や時価ベースの評価額に加え、更新時の更新料や譲渡時の譲渡承諾料も考慮した上で、総合的に売買価額を算出することが好ましいといえます。

まとめ

借地権者は「土地所有者の立場が強く、その意思に従う必要がある」と考えがちですが、法律においては借地権者の権利も認められ、守られています。土地所有者と意思の食い違いが生じた場合も、交渉することで損害を防げる可能性があります。

独自での判断が難しい場合、専門家にも協力を得て、円満な解決を目指しましょう。

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青山財産ネットワークスは「相続・承継・不動産」などを主軸とし、個人財産・法人財産・財産運用のコンサルティングを手がけています。資産状況全般を踏まえ、ご家族それぞれの考え・価値観を尊重し、円満かつ最適な相続の実現をサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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