2023.05.12
財産承継財産運用
アパートの相続にあたり、あらかじめ知っておくべきポイントについて解説
相続は、多くの人が関わることになるテーマであり、ある日突然やってくるものです。相続する資産の中でも、アパートは不動産であるため相続人同士で分割しにくく、税金や維持費もかかります。当事者になる可能性のある人にとっては、アパート相続の流れは詳しく知っておきたい情報といえるでしょう。

この記事では、アパートを相続する方法や相続するかどうかを判断するポイント、アパートを相続する際にかかる税金、相続問題について相談できる専門家などについて解説します。
また、不動産の売買や財産承継、事業承継、M&A、資産運用などの相談をお考えの方は、ぜひ当社へのご相談をご検討ください。

アパート相続の方法

親や兄弟などの親族がアパート経営をしている場合、資産を保有する人が亡くなった際に相続人は名義変更(相続登記)を行います。基本的にアパートは、1名が相続する方法と、複数の相続人がアパートという資産を共有する方法に分かれます。こちらでは、1名の名義で相続する場合、共有名義で相続する場合のそれぞれの考え方や、注意すべき点などについて解説します。

相続人1人の名義で相続

アパートの名義を被相続人から1人の相続人へと変更する方法です。被相続人が遺言書で相続人を1人のみに指定していた場合や、他に相続対象となる親族がいない場合には、一人の名義となります。また相続人が複数いる場合でも、代表者がアパートを現物取得し、他の相続人に代償財産を交付する代償分割という方法も可能です。名義変更などの手続きが簡単であり、1つの物件を複数の名義で共有することによって発生する様々な問題を回避する効果があります。

共有名義で相続

複数の相続人が共有管理者となり、1つのアパートを共有して管理します。相続の際、相続人ごとの持分を決めることで公平に相続することが可能です。また、相続後にかかる管理費などの費用についても、原則として相続人が分担して負担することになるため、1人あたりの費用が少ないというメリットもあります。

一方で、不動産の管理行為を実施するには他の共有者の同意が必要となり、アパートの売却等処分行為を実施するには原則として全員が同意しなければなりません。また、共有者が認知症を発症してしまい意思能力を喪失してしまうことや、相続が発生し更に共有者が増えてしまう可能性があります。このように、共有名義の相続には難しい側面もあります。

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相続か売却かを判断するポイント

アパートの相続は、自らアパートの経営に取り組むことを指します。アパートのローン残高や管理にかかる費用、空室の状況などによっては、得られる利益よりも負担が大きくなってしまう可能性も否定はできません。相続してから「こんなはずではなかった」とならないよう情報を収集し、あらかじめ想定できるリスクを洗い出すことが重要です。こちらでは、アパートを相続するか、あるいは売却したほうがいいのかを判断するポイントを紹介します。

アパートのローン残債の有無や金額

アパートを購入するには、まとまった資金が必要です。そのため、前所有者は金融機関から融資を受けている可能性があります。住宅ローンが完済されていない状態で亡くなってしまうと、相続人はアパートだけでなく債務も相続しなければなりません。ローン残債の額が大きければアパートを相続後の負担も大きくなるため、残債の有無や金額の大きさは重要な判断材料といえます。

維持費

アパートに自分が住むのではなく賃貸で貸し出すアパート経営の場合は、物件の清掃や設備の点検といった管理費、傷んだ部分の修繕費、光熱費、さらに固定資産税など、様々な費用が発生します。長年にわたってアパート経営を続ければ、その分、維持費も膨らみます。入居者から得られる賃料よりも維持費が大きければ赤字になってしまうため、将来的な賃料と出費を入念に検討してください。

空室の状況

空室が多いアパートは、健全経営をしているとはいえません。入居率が一定の水準を下回っている場合、月々の収入よりも支出が大きい状態となり、赤字の状態に陥っている可能性もあります。空室が多いアパートを相続することは、将来的な自分の負担を増やすことにつながりかねません。空室の多さは、設備が古い、十分に修繕されていないなどの原因が考えられるため、修繕を施すことで改善が期待できます。

アパート相続に必要な手続き

 
実際にアパートの相続が完了するまでには、様々な手続きがあります。法律で定められている手続きもあり、相続後に何かしらのトラブルが発生するといった事態に直面しかねません。また、遺産相続は親族などの関係者が多いほど複雑です。将来的に自分自身が不利益を被ることがないよう、地道に決められた手続きを踏んでいきましょう。

相続人・相続財産の調査と確定

亡くなった人(被相続人)の相続人、および残された相続財産についての調査から始め相続人と相続財産を確定させます。

遺産分割協議

遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容の通りに遺産は分割されます。一方、遺言書が残されていない場合には、相続人の中で「誰がどの程度の遺産を相続するのか」といった相続の具体的な内容を確定するための協議の場である、遺産分割協議を実施します。この協議により配分などの結論が出た後、遺産分割協議書(合意した内容を証明する書面)を作成します。遺産分割協議には相続人全員が参加することが求められます。

相続登記申請

アパート経営を相続人が引き継ぐためには、相続登記(名義変更)が必要です。相続登記の方法は、基本的に法定相続、遺言による分割、遺産分割協議による分割の3つがあり、各種必要書類を法務局に提出します。なお、2024年4月1日より、不動産を相続した際の登記が明確に義務化されます。相続登記には、以下記載の書類(一例)が必要です。
・被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(出生から死亡まで)
・被相続人の住民票の除票
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書

相続税の申告

財産を相続することによって相続税の納税の必要が生じた場合は、相続税の申告と納税を行います。申告と納税期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内であり、納税方法は「現金での一括納付」が原則です。期限を過ぎてしまうと延滞税が課税されてしまうため、よく確認しておきましょう。

アパート相続にかかる費用


アパート相続時には相続税が発生する可能性があり、それ以外にも様々な税金や諸費用が発生する場合があります。なかには、金額が大きいものや考え方が複雑なものもあるため、丁寧に確認することをおすすめします。こちらでは、アパートの相続時に払う可能性がある税金や費用について紹介します。

相続税

相続税は課税される遺産の総額によって税率や控除額が定められており、法定相続分に応ずる取得金額が1,000万円以下の場合の相続税は10%、1億円以下であれば30%、6億円超で最高の55%です。ただし、相続税は課税遺産総額がプラスの際に発生するため、相続税の負担が無いというケースもあります。

相続税の計算は相続人の人数やそれぞれの財産の割合によって異なるため、事前に金額の予測を立てたい場合は専門家に計算を依頼するとよいでしょう。

所得税

アパートの相続が発生した場合、相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。準確定申告とは、被相続人が1月1日から相続の発生までに得ていた所得に関して、相続人が代理で確定申告する制度です。また、アパートの相続後は、自身の所得と合わせて所得税が課税されます。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得した人に課される税です。相続でアパートを引き継いだ場合は発生しませんが、相続の方法が生前贈与であれば、贈与税に加えて課税されます。税率は、固定資産税の評価額の4%です(2024年3月31日まで)。

相続登記費用

相続登記を行う際にも、登録免許税という税金が発生します。登録免許の税率は基本的に不動産の固定資産税評価額の0.4%であり、固定資産税評価額が3,000万円の場合は12万円です。固定資産税評価額が100万円以下の場合は、免税等の特例があります(2025年3月31日まで)。司法書士へ登録を依頼した場合には、登録免許税の税額に加えて、司法書士への報酬も必要です。

法律の改正によって2024年4月1日以降に相続登記は明確に義務化され、相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

その他、相続後にかかる費用

アパートを相続後に継続してかかる税金もあります。
・固定資産税
・都市計画税
・所得税(家賃収入がある場合、その利益額と自身の所得との合算)
・住民税

アパートを相続する際の注意点

アパートを相続することは、自分自身の資産や収益源が増えるというメリットがあります。一方で、相続についての理解が浅い、将来を見据えずに相続を簡単に考えてしまうことで、結果的に失敗してしまう可能性も否定できません。そうならないためにも、アパートの相続で注意すべき点について見ていきましょう。

相続後の経営リスクを知る

アパート経営には、家賃による収入を得られる一方で、「空室が埋まらずに、想定していた家賃収入が得られない」「入居者が家賃を滞納する」といった状況に直面する可能性があることも事実です。アパートを相続したものの、経営が理想通りにいかず、結果として赤字経営に陥ってしまうといったリスクがあることは、相続する前にあらかじめ理解しておく必要があります。

遺言書が無い場合、揉める可能性がある

被相続人が遺言書を用意していない場合は遺産分割協議を実施することになりますが、成立させるためには相続人全員の同意が必要です。つまり、協議において相続人の1人でも反対すれば遺産分割協議は成立しません。協議が揉めてしまうと、状況によっては協議の開始から決着までに長い期間を要する恐れがあります。しかしながら、安易に相続人で共有名義にすることは問題を先送りするだけになるため、おすすめはできません。

アパート相続の相談先

アパートの相続の手続きは簡単ではありません。自分の手で進めていくには一定の知識が必要です。そのため、相続に精通した専門家の力を借りることで、トラブルを防げます。アパートの相続が発生したら、まず専門家に相談することからスタートしましょう。よりスムーズに相続を進めるためには、自分が知りたい分野、任せたい分野に詳しい専門家を頼ることが重要です。

コンサルティング会社

宅地建物取引士や一級建築士、不動産鑑定士など様々なジャンルの専門家が揃うコンサルティング会社からは、不動産投資や相続に関わる総合的なアドバイスが受けられます。相続に加えて、アパートの管理や売却、活用方法まで包括的に相談に乗ってくれるため、相続後の具体的な計画ができていない場合や、相続方法を迷っている場合の相談先として適しているといえるでしょう。

アパートの管理会社や不動産会社

相続したアパートの経営について相談しやすい相手となるのは、アパートの管理会社や不動産会社です。管理会社の場合、以前からの管理会社を引き継ぐという選択肢はありますが、入居率を上げるなど現状を改善するためにより良い提案をしてくれる管理会社に切り替えるという考えもあります。また、近年では司法書士など相続の専門家と連携する不動産会社も増加しています。そうした点から、不動産会社も売却の相談だけでなく相続全般のアドバイスをしてもらえる頼れる存在です。

司法書士

アパートなど不動産を相続する際、名義変更(相続登記)を行う必要があります。名義変更は司法書士が専門としている分野であり、名義変更の仕方がわからない場合は、司法書士の力を借りるとスムーズに手続きを進められます。

弁護士

遺産分割など法的な解決が必要な局面では、法律の専門家である弁護士がサポートしてくれます。遺産分割協議書などの書面を取り交わす際には法的な問題がないか確認が不可欠です。また、交渉過程においてトラブルが発生することもあるため、法律が絡む場合は弁護士が頼りになります。

税理士

相続のタイミングでは、相続税や不動産売却時の譲渡税など各種税金が発生します。そうした税に関する相談は、税理士だけが対応可能です。一方で、資産運用という観点からの不動産の取り扱いは税理士の専門外であり、相続税の案件は全体としてそれほど多くないため経験が乏しい税理士もいます。そのため、相続全般の問題に精通した税理士に依頼することが望ましいといえます。

まとめ

アパートの相続には、相続人全員の同意形成や名義変更などの手続き、相続税や所得税の納税など複雑なプロセスを踏んでいく必要があります。また、相続後にはアパートを経営していかなければならないため、相続するかどうかは慎重に判断することが重要です。
何か不安な点があれば、相続や資産運用に精通した専門家に相談することをおすすめします。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様やご一族にとって最適な財産構成を実現する総合財産コンサルティングを提供しています。

お客様の目的に合わせてマンションやその他の不動産の最有効使用をご提案いたします。有効活用の選択肢は多岐に渡りますので、専門のチームを形成し、あらゆる可能性を検討いたします。その際には、将来の相続税の納税プランの策定や、不動産事業としての収益性の検証を行います。それらは現在だけでなく未来の予測も行い、空室や修繕等のリスクを洗い出し、全方位対応となる課題解決のためのコンサルティングを提供しています。
 
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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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