2023.07.12
市況・トレンド
路線価が2年連続で上昇、全国平均1.5%増 けん引したのは地方の主要都市

路線価について詳しくはこちらの記事をご覧ください
「相続税路線価とは?相続税の計算方法や路線価の調べ方を解説

国税庁が7月3日、相続税や贈与税の算定基準となる令和5年度分の路線価(1月1日時点)を公表しました。
全国の平均変動率は前年比でプラス1.5%と2年連続での上昇となりました。世界中に猛威を振るったコロナ禍による入国制限や行動制限が撤廃された結果、インバウンド需要も含めた商業活動が活発化し、商業地や観光地で大きな上昇がみられ、回復傾向がより鮮明となりました。都道府県別の平均変動率については、上昇が25都道府県で最も値上がりが大きかったのは、北海道の6.8%でした。全国トップの路線価は38年連続で東京・銀座の鳩居堂前となり、1㎡あたり4,272万円。3年ぶりに上昇に転じた結果となりました。(上げ幅は1.1%)

地方主要都市の動向


全国の平均変動率のプラス要因をけん引したのは、地方の主要都市でした。都道府県別にみると、北海道の6.8%、次いで福岡県の4.5%、宮城県の4.4%となりました。
都道府県庁所在都市の最高路線価に関しても、上昇地点が前年の15都市から29都市へと倍増しました。

上昇率が過去10年で最大となり、2年連続で全国の都道府県の中で最も高くなった北海道ですが、その要因はインバウンドの他にも、札幌市への北海道新幹線の延伸を見据えたマンションやオフィスの需要の高まりや、再開発によって続々と商業施設が建設されるといった不動産市況が堅調に推移した結果と言えます。
全国的に建築資材や人件費が高騰する中で、札幌圏も例外ではなく、新築・中古マンションの価格が高騰していても、購入意欲が高いという事も一因となっています。

九州では福岡駅、博多駅前の再開発プロジェクトが進み路線価は軒並み順調に推移しているほか、熊本駅前の大型商業施設開業に伴い近隣市町が地価上昇をけん引しています。
全国に524ある税務署別の最高路線価でも、上昇率が最も高かったのは、福岡県久留米市東町の西鉄久留米駅前通りで、19.1%でした。
コロナ禍による行動制限も撤廃されたことで、観光地にも国内外の観光客も戻り、商業施設を始めたとした経済活動全体が堅調に回復したことも全国的な好影響が出ています。

都心部の動向

東京都平均では3.2%の上昇となりました。都内の観光地周辺は各地と同様の傾向が見られ、浅草(雷門通り:昨年は前年比1.1%の上昇で今年は前年比7%の上昇)にも如実に表れています。

都心部のオフィスに目を移してみると、空室の増加に伴い、賃料の下落傾向も続いています。新しい働き方改革も手伝い、在宅勤務やリモートワーク等といった働き方の多様化に付随して、従業員の出社しやすいエリアへのサテライトオフィスの整備なども定着した結果です。一方で、対面してコミュニケーションを図れるように共有スペースを充実させたシェアオフィスや、机などの備品を完備し、入居者のコストを抑えることができるセットアップオフィスといったような工夫を重ねることで、安定したリーシングを実現できている例も見受けられます。

そして改めて魅力として認識されているのが、立地(駅からの徒歩距離と複数路線の利用が可能)です。当社の不動産共同所有システムADVANTAGE CLUB(以下、アドバンテージクラブ)は、都心3区を中心として、駅からの距離や複数路線が利用可能な入居テナントの要望を叶えることのできる物件に特化しており、2022年のアドバンテージクラブの稼働率は約98%と高い水準を誇っている状況です。

まとめ

今回発表された路線価では、標準宅地の評価基準額の対前年変動率の全国平均が2年連続して上昇しました。観光立国として世界からも評価の高い日本にとっては、コロナ禍の影響は深刻なものでした。未だに完全に過去のものとまではいきませんが、経済はリスタートしています。一方、ウクライナ情勢の混迷長期化や世界的な物価高騰、グローバルな経済問題などもあり、経済そのものの先行きは明るいとは言えない状況でしょう。そのため、今後の不動産の市況や変化については一層注視していく必要があります。

路線価が変動すれば、所有している不動産の相続税評価額も毎年変動します。時価の上昇に伴い路線価が上昇すれば、資産価値が増える一方で、相続税も増える結果となります。また時価が上昇することで、固定資産税・都市計画税も上昇します。今般のタワーマンションへの課税強化などのような税制改正があれば、評価額は更に大きく変動することもあります。そのため、過去に試算をしてご自身の相続税額等を把握している方も、毎年の路線価発表を契機にして財産評価をあらためて行い、ご自身の財産の状態を分析・把握されることは大切なことです。

また、相続税評価額の更新と合わせて、個人や法人の資金の流れを分析検証することも重要です。相続税のみならず、法人税や所得税を含めた財産全体を分析し、個人・法人のキャッシュフローと将来予測を行うことで課題を見える化し、不動産・保険・金融資産・借入等、財産全体の課題と対策を講じることが将来に残す資産を増やすことに繋がります。財産全体のポートフォリオの見直し(メンテナンス)を毎年行うことで、「5つの視点」から最適な相続対策が可能となり、それが次世代へ財産をより多く承継させることのできる一番の安全かつ近道となるでしょう。
*5つの視点とは当社が定義している「円満な経営承継」「円満な財産承継」「納税資金の確保」「財産の運用保全」「まさかへの備え」の総称です。

相澤 光 
コンサルティング第二事業本部 第三事業部 副部長

2014 年に株式会社青山財産ネットワークスに入社。入社後は土地持ち資産家、金融資産家、企業オーナーへの財産コンサルティングに従事。その経験から、財産のみならず非財産(想い)の承継が一家の永続的発展に不可欠と確信し、クライアントの本質的な課題解決を支援。
資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

※役職名、内容等は取材時のものです。


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