2023.09.15
財産運用
駐車場の固定資産税は住宅用地の6倍って本当?計算方法と土地活用のポイントを解説
土地活用方法として駐車場経営を考えているものの、固定資産税が高いと聞いて迷っていませんか?駐車場は、安定した収入が得られる、初期費用や管理費用、修繕費が抑えられるなどのメリットはありますが、土地を駐車場として活用すると、住宅用地として活用したときのような特例が使えないことがあるため注意が必要です。

この記事では、土地の有効活用として駐車場を検討している方に向けて、メリットとデメリット、そして土地活用のそもそもの考え方について解説しています。土地を相続した、あるいは活用していない土地がある等の理由で、土地の有効活用方法を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。


目次
1.駐車場は住宅用地に比べて最大6倍の固定資産税がかかる
2.駐車場の固定資産税の計算方法
3.駐車場形態別の固定資産税計算方法
4.土地を駐車場に活用するメリット
5.土地を駐車場に活用するデメリット
6.結局駐車場経営は儲かるのか?
7.まとめ

駐車場は住宅用地に比べて最大6倍の固定資産税がかかる

駐車場は住宅用地に比べて最大6倍の固定資産税がかかるといわれています。土地の活用方法一つでなぜここまで差がでるのでしょうか?固定資産税の仕組みから詳しく解説します。

固定資産税とは?

固定資産税とは1月1日の時点で、土地、家屋および償却資産等の固定資産を保有している方に対して課される税金で、保有している固定資産の価格をもとに算定した税額を、固定資産が所在している市町村が課税します。ただし東京都23区は都が課税をします。 また保有している土地や家屋の所在地が市街化区域に指定されている場合は、固定資産税に加えて、都市計画税もかかるケースがあります。

 駐車場は住宅用地のような特例がない

駐車場の固定資産税が高いのは、住宅用地のような特例が用意されていないためです。自治体によって異なりますが、固定資産税の税率は原則1.4%、都市計画税は上限原則0.3%で、各税額は次の計算式で計算します。
  • 固定資産税=課税標準(原則は固定資産税評価額)✕標準税率1.4%
  • 都市計画税=課税標準(原則は固定資産税評価額)✕制限税率0.3%

住宅用地の場合、住宅用地の特例が適用となり大幅に固定資産評価額が軽減されます。具体的には、住宅用地のうち200平米以下の部分については固定資産税評価額の6分の1、都市計画税は同評価額の3分の1になります。
しかし保有している土地を駐車場にしてしまうと、小規模宅地の特例を受けられないことから、住宅用地として活用した場合に比べて、固定資産税が6倍になるというわけです。

駐車場の固定資産税の計算方法

ご自身が保有している土地を駐車場として活用した場合、その土地にかかる固定資産税税率は原則1.4%です。例えば固定資産税評価額1,500万円の場合の固定資産税は21万円となります。また保有している駐車場が市街化区域にある場合は、0.3%の都市計画税もかかるため、さらに4万5,000円がかかります。

固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に付いている納税通知書や固定資産課税台帳から確認できます。
固定資産税課税台帳とは、市町村長が作成する課税対象となる土地や家屋の所在や所有者、評価額等を登録した帳簿のことです。固定資産課税台帳は役所等で確認ができます。 また都市計画税の課税対象になるかどうかは、自治体のホームページで確認するか、市区町村に直接問い合わせることで調べられます。

駐車場設備にも固定資産税がかかることがある

土地以外のアスファルト舗装、精算機、フェンス、屋根、防犯カメラ、車止めといった駐車場設備についても、償却資産に該当しうるため、償却資産税評価額が150万円以上であれば固定資産税(償却資産税)がかかります。

駐車場形態別の固定資産税計算方法

駐車場には青空、コインパーキング、機械式などさまざまな形態があります。以下、固定資産税の計算方法をケース別に紹介します。なお車1台を駐車するのに必要なスペースは12.5平米が目安です。  

舗装のない月極駐車場

【前提条件】
固定資産税路線価:20万円/平米
敷地面積:100平米
商業地等の特例および負担水準は考慮していません。

【計算方法】
20万円×100平米=固定資産税評価額2,000万円
2,000万円×1.4%=固定資産税28万円

アスファルト舗装された月極駐車場、コインパーキング

【前提条件】
固定資産税路線価:20万円/平米
敷地面積:150平米
商業地等の特例および負担水準は考慮していません。

【計算方法】
20万円×150平米=固定資産税評価額3,000万円
3,000万円×1.4%=固定資産税42万円
アスファルト舗装や精算機などの費用が150万円を超えた場合、償却資産として固定資産税がかかります。
  

2階建て機械式駐車場

【前提条件】
固定資産税路線価:50万円/平米
敷地面積:150平米
機械式駐車場の設備費:1,000万円

商業地等の特例および負担水準は考慮していません。
平成19年以降に取得、耐用年数は15年とします。

【計算方法】
50万円×150平米=固定資産税評価額7,500万円
7,500万円×1.4%=固定資産税105万円

機械式駐車場(償却資産)の固定資産税
1,000万円×(1-0.067)×1.4%=約13万円
105万円+13万円=118万円

土地を駐車場に活用するメリット

固定資産税が高いにもかかわらず、土地を駐車場に活用するメリットはどこにあるのでしょうか? 主なメリットを4つ紹介します。

安定収入が得られる

駐車場利用者とマンスリー契約をする月極駐車場にしたり、駅前やオフィス街、商業施設などの近くであればコインパーキングにしたりすることで安定した収入が期待できます。また駐車場なら狭小地であっても車を出し入れできるスペースさえ確保できていれば、経営が始められます。

初期費用が抑えられる

土地をアパートやマンションとして活用する場合は建物を建てる必要があるため、数千万円から数億円の費用がかかるでしょう。しかし駐車場の場合、駐車場の業態や規模によって大きく異なりますが、例えば月極駐車場であれば、アスファルト舗装や砂利引き、車止め、ライン引き費用等で済みます。そのため100坪であれば200~500万円程度の初期投資に抑えられる可能性があります。

管理費用や修繕費用が抑えられる

アパートやマンションとして経営する場合、設備の維持や修繕、交換、リフォーム費用、保険料などの維持費がかかります。しかし駐車場であれば、こちらも駐車場の業態や規模によって大きく異なりますが、住宅と比較すれば設備規模が小さく、管理費用や修繕費用が安く済む可能性が高いでしょう。

他の用途に転用しやすい

駐車場経営は土地に手を加えることがないケースが多いため、他の用途に転用しやすいというメリットがあります。また駐車場経営は借地借家法が適用されないため、駐車場利用者や駐車場運営会社と事前に調整しておけば比較的スムーズに原状回復できるという利点もあります。

土地を駐車場に活用するデメリット

次に土地を駐車場に活用した場合の、固定資産税以外のデメリットについて紹介します。土地を駐車場に活用するデメリットは主に3つです。

減価償却費が計上できない場合がある

駐車場経営はアスファルトやコンクリート、フェンス等、減価償却費を計上できる資産が限られています。アパートやマンションほどの減価償却費を計上できる可能性が低い点には注意が必要です。

ニーズがあるエリアに限られる

そもそもニーズがない地域で駐車場運営を始めても、安定した収益にはならないでしょう。比較的少ない初期投資で始められますが、十分に事前調査をすることが大切です。

利回りが低い

土地をアパートやマンションにすると、3階、4階建てあるいはそれ以上の建物を建てて立体的に土地を活用できます。しかし駐車場経営は、基本的には1階建てで平面での活用しかできていないため、土地の利用効率が悪く、利回りが低くなるかもしれません。

結局駐車場経営は儲かるのか?

駐車場は初期費用や管理費用、修繕費用が抑えられる反面、固定資産税が宅地よりも高くなります。しかし本当に駐車場経営が儲かるかどうかは、保有している土地の立地や特性、活用の目的等を考慮して総合的に検討する必要があります。ここでは土地活用を検討する上での重要なポイントについて解説します。

全体最適の考え方

土地は上手に活用できれば安定した収入が得られますが、初期費用がかかるもの、駐車場のように固定資産税に関する特例が受けられないものもあるため、さまざまな観点から最適な土地活用方法を選ぶことが大切です。土地活用を検討する上でのチェックポイントは以下の8つです。

  • 収益性
    土地活用した場合のキャッシュフローは黒字になるか?
  • 安定性
    安定した収益が得られるか?
  • 税制優遇
    小規模宅地等の特例といった税制優遇は活用できるか?
  • 初期費用
    アパートやマンションのように大きな初期費用はかかるか?
  • 立地
    法令や条例で建設可能な施設に制限はないか?
  • 転用性
    土地の活用方法を変更したいときに、転用しやすいか?
  • 面積
    所有している土地の面積によって、活用方法が限られる場合がある。
  • 財産構成
    他の財産とのバランス、承継の方針などを考慮できているか?

これらのポイントに加え、固定資産税や都市計画税、その他の収益を加えた所得税を考慮した、長期的な駐車場活用の検討が必要です。

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市場調査、物件調査

自身で保有している土地がある地域に、どのようなニーズがあるかを確認します。例えば商業施設やオフィス街で駐車場が不足しているようであれば駐車場の活用が有効かもしれません。また幹線道路沿いの土地を所有していれば商業系店舗、駅が徒歩圏にある土地ならアパートやマンション経営がそれぞれ向いている可能性があります。その地域の特徴や、競合物件をもとに入念にニーズを調査することが大切です。
 

プラン・収支計画の作成検証

土地活用方法が決まったら、実際に収支計画を作成していきます。収支計画は綿密に作成しておかないと、実際に事業をスタートした後で思ったよりも費用がかかり、失敗する可能性があります。

また目先の収支だけではなく、将来的に相続をする可能性も考慮して収支計画を立てましょう。相続税の納税プランを立てた上で、納税原資が不足しているのであれば、最終的に「なにもしない」という選択肢もありえます。土地活用の目的は収益性の向上ですから、総合的に鑑みて、固定資産税評価額の軽減が適用されるアパートやマンションの方が良い場合も有ります。

まとめ

駐車場経営は初期費用や管理費用、修繕費用等が安く、安定した収入が得られる土地活用方法です。しかし土地を駐車場として活用した場合、住宅用地として活用する場合のように固定資産税の特例がないため注意が必要です。

駐車場経営の固定資産税が負担になるようでしたら、お持ちの不動産の売却も検討する余地があります。
青山財産ネットワークスでは、土地の特性、地域の特徴を理解し、税制優遇や将来的な相続も視野に入れて、お客様に最適な方法をご提案いたします。

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