2023.09.22
財産承継
相続税の相談は無料でできる?事前準備や相談先の選び方を紹介
「相続で不安を感じているため、無料で相談にのってくれる相談先を探している」という方はいませんか?
この記事では、相続に関する一般的な事柄なら無料相談ができる方法を紹介します。

また、いざ相続が発生すると、たくさんの専門家に相談することになるかもしれません。
では実際に相続が起きた場合、どのような専門家に相談すればよいのでしょうか?
相続時に関する相談ができる相談先の一例と、具体的に相談できる内容についても解説します。

無料で相続の相談ができる相談先は?



相続の相談が無料でできる相談先は主に「管轄の税務署」「税理士会主催の相談会やセミナー」「国税局電話相談センター」の3つです。

それぞれどのような相談ができるのか?メリット、デメリットについても見ていきましょう。

管轄の税務署

管轄の税務署では相続や相続税に関する無料相談を受け付けています。
なお管轄の税務署は、インターネットで「管轄 税務署」で検索をして「税務署の所在地などを知りたい方」のページを開き、郵便番号を入力するだけで簡単に探せます。
相談には電話での予約が必要で、無料相談に対応するのは税務署の職員です。

管轄の税務署での相続の無料相談は、面談形式で資料を見せながら、相続税や相続税申告に関するアドバイスを受けられますが、自身の思い通りの時間帯に予約が取れない、相続税に関する一般的な相談しかできないというデメリットがあります。

税理士会主催の相談会やセミナー

全ての税理士が所属している税理士会は全国15ヶ所に展開していますが、各地域の税理士会では相続に関する無料相談会の他、講演やセミナー等も開催しています。
まず日本税理士会連合会のホームページにアクセスをして、管轄地域の税理士会を選択しましょう。
無料相談に関する連絡先や開催場所が記載されているため、無料相談を受けたい方は活用するのがおすすめです。

また税理士会主催の相談会では、面談に応じるのは税理士ですが、相談に応じてもらえる内容は、相続に関する一般的な相談にとどまります。

国税局電話相談センター

国税局電話相談センターは、国税に関する一般的な相談が受けられます。
利用の際は、まず管轄の税務署を確認して連絡、その後、自動音声案内に従っていくと電話相談専門の国税局職員につながります。

国税局電話相談センターは予約をすることなく、何度でも電話相談ができますが、相談に応じてもらえる内容は、相続に関する基本的な内容にとどまります。

相続の専門家と対応する相談内容

相続に関する相談ができる、専門家は主に「弁護士」「税理士」「行政書士」「司法書士」です。

このうち弁護士と司法書士は相続に関する相談、相続税に関する個別具体的な相談は、税理士資格がなければできません。
また相続発生前の生前対策や、実際に相続が発生したときの専門家のコーディネート等、相続全般を統括する役割を持つ「相続コンサルティング会社」の役割も重要です。

以下、各専門家に具体的にどのような相談ができるのか?解説していきます。

弁護士|相続人同士のトラブルの相談

弁護士に依頼できる、相続関連の相談内容としては主に以下のようなものが挙げられます。
  • 相続に関する個別具体的な相談
  • 相続の法律相談
  • 遺産分割協議書作成
  • 遺留分侵害額請求の裁判
  • 強制執行
  • 不動産登記

 
中でも相続人のうち、「遺言の無効を主張する相続人がいる」「遺留分の侵害しているため、遺留分侵害額請求を受けている」「遺産分割協議で折り合いがつかない」「そもそも相続人同士が不仲で話し合いが難しい」など、相続人間でトラブルが発生した場合は弁護士に相談をすると良いでしょう。
相手方との遺産分割や、調停・審判等での交渉の代理ができるのは弁護士だけです。
いきなり弁護士事務所に相談するのは少し敷居が高いと感じる方は、「法テラス」の活用も検討してみましょう。

法テラスとは、日本司法支援センターのことで、国が設立した法的トラブルを解決するための総合案内所です。
法テラスでは、相続をふくめた法的トラブルに関する相談を受け付けており、電話やメール、最寄りの法テラス事務所での面談など、様々な相談方法が用意されています。
ただし法テラスは、「資力基準」と「民事法律扶助の趣旨に適すること」の両方を満たしている場合のみ利用可能です。
資力基準とは、収入と資産が一定額以下であること。また民事法律扶助の趣旨に適することとは、訴訟の目的が報復や宣伝、権利濫用ないことを指します。

税理士|税の申告や相続対策の相談

税理士に相談できるのは、相続税に関する個別具体的な相談です。
相続税額を計算するには、まず各種相続財産を適正に評価して、債務や葬儀費用、基礎控除などを差し引いて計算をします。

相続税の概算であれば、弁護士や司法書士、FP(ファイナンシャルプランナー)でも計算できます。
しかし、各財産の適正な評価額のような個別具体的な税に関する相談や申告手続きができるのは税理士資格所有者のみです。
また税理士なら、一次相続で相続人となった配偶者が亡くなったことで生じる二次相続まで考慮した遺産分割や、生前贈与の方法まで提案を受けられるでしょう。

ただし税理士も相続以外に、企業の確定申告や、銀行からの借り入れといった資金調達、税務調査など得意分野がわかれています。
相談するときは、相続を得意分野としている税理士を選びましょう。

また税に関する相談は、個別具体的な内容になると有料となるケースが多いようです。

司法書士|相続登記の手続きの相談

司法書士は、相続全般の手続きに関するものであれば無料で相談ができる可能性があります。
その他、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合も司法書士に相談すると良いでしょう。

被相続人から土地や建物といった不動産を相続した場合、相続登記をしなければ不動産の売却ができません。
相続人自身でも登記をすることは可能ですが、手続きが煩雑に感じる方は司法書士に依頼することになるため、司法書士を相続に関する相談窓口とする方法もあります。
 
2024年4月からは、相続登記が義務化されます。この法改正により、不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更をしない場合、10万円以下の過料の対象となります。
したがって、これまで以上に司法書士に依頼するケースは増えていくでしょう。
 
また不動産だけでなく、預金や株式、投資信託の名義変更なども対応している場合もあります。
ただし、司法書士に登記手続きを依頼する場合は、有料になります。

行政書士|自身で手続きをする予定のときに相談

行政書士は弁護士のように遺産分割や、調停・審判等での交渉の代理や、不動産の相続登記、相続の申告などができるわけではありませんが、相続の無料相談に応じている場合があります。
なぜなら行政書士は戸籍謄本や家系図作成、遺産分割協議書の作成や車の名義変更など、相続で必要な書類を作成することがあるからです。

相続財産に不動産がない、あるいは相続財産が相続税の基礎控除の範囲内のため相続税の申告の必要がないような場合、自身で相続手続きを済ませることもできます。
自身で手続きをする過程で、戸籍謄本だけ作ってほしい、遺産分割協議書だけ作ってほしいなどの場合には行政書士に相談するという方法があります。

相続コンサルティング会社|相続にまつわる総合的な相談

相続コンサルティング会社は、相続に関する悩みや、困りごと全般に関する相談だけではなく、まだ相談者自身が気付いていない課題も顕在化させ、最適な解決方法を提案するサービスを提供している会社です。

これまで紹介した弁護士や司法書士、税理士といった相続のプロフェッショナルとのネットワークを持っているため、相続コンサルティング会社を窓口とすることで、適切な専門家と連携できるでしょう。
また相続した資産から生じる収益をアップする方法や、不動産の有効活用といった資産の活用方法に関するアドバイスも受けられる可能性があります。
こうした運用は、計画の実行、検証、見直しが必要になる場合があることから、継続的なフォローを受けられます。

相続の不安から、資産の有効活用まで、相続に関してトータルでアドバイスを受けたい方は、相続コンサルティング会社を活用してみましょう。  

スムーズに相続の相談をするための準備


どんなに優れた専門家に相談しても、適切な情報や、必要な資料がなければ適切なアドバイスを受けられません。また無料相談の場合は、相談時間に制限を設けている場合も多いでしょう。スムーズに相続の相談に乗ってもらうために、必要な準備について紹介します。

相続財産に関する情報をそろえておく

相談先から相続税の概算に関するアドバイスを受けるためには、被相続人から相続する財産を洗い出しておきましょう。代表的な財産としては以下のようなものが挙げられます。
  • 現金
  • 預貯金
  • 土地や建物などの不動産
  • 株式などの有価証券
  • 自動車
  • ゴルフ会員権
  • 貴金属
  • 生命保険など

また通夜、告別式にかかった費用や、火葬・埋葬・納骨にかかった費用や死亡診断書の発行費用といった葬儀費用は相続財産から控除できるため、かかった金額を把握しておきましょう。特に注意したいのは被相続人の債務に関する情報です。債務は原則、相続人に相続されるため、相続人が財産を相続するかどうかの判断に大きな影響を与えます。そのため「被相続人に債務はないか」を?必ず確認しましょう。

近年ではネット銀行や証券、保険も増えてきています。これらの金融機関からメールや郵送物などが来ていないか、確認しておくことも大切です。まだ被相続人死亡後も継続している契約がある時は、銀行や証券会社、保険会社などに連絡をして、適切な指示を仰いでください。

相談内容をまとめておく

相談先と面談した時に、相談内容がまとまっておらず思いつきで質問をしていると、適切なアドバイスを受けることができません。相続に関してある程度の知識を身に付け、事前に相談したい内容を箇条書きにして面談にのぞむと良いでしょう。

また被相続人が亡くなる前に病気であったり、意思疎通が取れない状態であったりした場合に備えて、発症した時期を記録しておきましょう。明確に記録しておくことで、生前贈与や遺言能力に関する判断材料になります。

法定相続人に関する資料

法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続する権利がある方のことを指します。法定相続人は、自身では想像もしなかった方が該当するケースもあり得ます。法定相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得しておきましょう。
戸籍謄本は被相続人の本籍地で発行されます。被相続人の役所に出向いて取得するか、本籍地が遠隔地の場合は、郵送で取得することも可能です。
また法定相続人が確定できたら、相続関係説明図を作成しておくと、相談先で被相続人と、法定相続人の関係性を説明しやすくなります。

無料相談ですべてのアドバイスが受けられるとは限りませんが、相談にあたり、用意しておきたい書類を以下にまとめてみました。入手先によって手続きの方法や、提出書類が異なるため、それぞれ確認しておきましょう。

必要書類 入手先
預金通帳の残高証明
銀行
株式や投資信託などの有価証券 証券会社や信託銀行
建物の課税証明書 市役所・区役所
土地の登記簿謄本 法務局
保険証券 保険会社
借入金の残高証明書 金融機関
葬儀費用 葬儀会社
遺言書 法務局・公証役場・自宅


なお、ここで紹介した書類は一部で、相続した財産によってはこれ以外の書類が必要な場合もあります。

まとめ

相続に関する相談は無料でもできます。
しかし相続人の間でトラブルに発展していれば弁護士の力が必要になり、相続税に関する個別具体的な相談になると税理士資格所有者しか相談できないなど、各専門家で対応できる分野が異なります。
また相談内容が個別具体的な内容になれば、相談料は有料になるでしょう。

それぞれの専門家と相談する際、面談時間が限られている可能性もあるため、必要な情報や必要な書類を確認して、スムーズにアドバイスが受けられる状態にしておくことも大切です。

さらに自身に合っている、あるいは相続に精通した専門家を探そうとすると、より選択肢が限られてしまうかもしれません。
相続の専門家探しに迷ったときは、相続コンサルティング会社に相談すると、相談者の現況を聞いて、適切な専門家をコーディネートしてもらえます。

少しでも相続に不安を感じたら、まずは相続コンサルティング会社に相談してみましょう。

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監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-CFP
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。


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