2023.10.10
財産承継
孫に遺産を相続させるには?方法からメリット・注意点を解説
相続人の範囲は法律で定められており、通常は孫が遺産を相続することはできません。
孫に遺産を相続させたい場合、遺言書の作成や養子縁組、生前贈与など、さまざまな方法の中から最適と考えられる方法を実行する必要があります。

本記事では、孫への遺産相続を検討している方に向けて、相続方法からそのメリット、注意点まで詳しく解説します。

孫に財産は相続できるのか?


遺言書を作成せずに亡くなった場合、通常は孫に財産が相続されることはありません。ただし、代襲相続によって財産を相続できる場合があります。法定相続人と代襲相続について詳しく解説します。

孫は法定相続人ではない

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。
例えば、被相続人(亡くなった人)の配偶者や子ども、父母、兄弟姉妹が該当します。

法定相続人には、法定相続人になることができる順番である「相続順位」が定められています。
配偶者は婚姻関係がある限り必ず法定相続人となり、それ以外の親族は以下の相続順位となります。

・第1順位……子ども
・第2順位……親
・第3順位……兄弟姉妹

このように、孫は法定相続人ではないため、相続順位にも含まれていません。

代襲相続によって孫が財産を相続できる

代襲相続とは、相続が発生(被相続人が亡くなる)するよりも先に子どもが亡くなっている場合、亡くなった子どもが受け取るはずだった孫が代襲相続人となり、相続財産を引き継ぐことです。

ただし、代襲相続した孫に兄弟姉妹がいる場合、孫同士で相続財産を分け合うことになるため、特定の孫にだけ全財産を譲ることはできません。

孫に相続させるメリット

孫に遺産を相続させるべきかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

孫に遺産を相続させることには、次のようなメリットがあります。

祖父母の意思を反映した相続ができる

被相続人である祖父母の意思を相続に反映できることもメリットです。

自身の財産をなるべく希望どおりに相続させたいと考えることが一般的です。
例えば、「孫が学費に困ることがないようにしたい」「自分が経営している会社事業の後継者を孫にしたい」と思うことがあるかもしれません。

このようなケースに限らず、祖父母の意思を反映した相続ができることは大きなメリットです。

孫に相続させる方法


孫に遺産を相続させる方法はいくつかありますが、どれを選ぶべきかは被相続人の状況や考え方などで異なります。孫に遺産を相続させる方法について詳しく解説します。

遺言書

遺言書では、法定相続人以外の人物にも、遺産を承継させる旨を定めることができます。

なお、法定相続人以外に遺産を承継させることを、正確には「遺贈」といいます。
遺言書がない場合は、法定相続人が集まって遺産分割協議を行い、全員の同意のもとで遺産の相続割合や内容を決めます。

遺言書の法的拘束力は非常に強いため、正しい書式で作成さえすれば孫への遺産の承継を実現できます。
しかし、間違った方法で作成すると法的拘束力が失われ、遺産分割協議が必要になるため注意が必要です。

養子縁組する

養子縁組とは、本来の血縁関係とは関係なく法律上で親子関係を結ぶ制度のことで、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
このうち、相続の関係で通常利用されるのは普通養子縁組です。

被相続人と養子縁組を結ぶと、孫も「子ども」として第1順位の法定相続人になるため、遺言書を作成していない状況で亡くなった場合でも、孫に一定割合の遺産を相続させることができます。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に財産を子どもや孫などに渡す方法です。
年間110万円までの贈与には贈与税が課税されず、税務署に申告する必要もありません。

被相続人が亡くなった日から遡って3年(※1)までの贈与は相続税計算に組み込まれるため、税額を低減させたいのであれば、なるべく早くから贈与を始めることが重要です。
ただし、毎年決まった額を贈与し続けると、事前に毎年の贈与が約束されていた定期贈与と判断され、各年の贈与額の合算額について一括して贈与があったものとみなされる恐れがあるため、贈与のタイミングや金額、贈与契約書の作成方法等については留意が必要です。

※1:延長期間
・令和8年12月31日以前の相続・・・3年
・令和9年~令和12年の相続・・・令和6年1月1日~相続開始日までの期間(3年超~7年未満)

また、孫名義の預金口座に入金する場合でも、通帳やキャッシュカードが被相続人の手元にあり、孫が自由に引き出せない状態であれば、実質的に被相続人の財産である「名義預金」と見なされ、相続税の対象財産と判断される恐れがあります。

孫に相続させる場合の注意点


孫の相続に向けて準備を進める際、財産の分配方法をめぐって法定相続人等とトラブルが発生するケースがあります。
また、相続税等の税率にも注意が必要です。

遺産分割におけるトラブル

財産の分配において孫を優遇すると、他の親族が不満を抱く恐れがあります。
被相続人の死亡後に親族が遺留分侵害額の請求をした場合は、法律に定められた一定割合の財産額を分配しなければなりません。

遺留分は、一定範囲の相続人に認められる最低限の遺産取得割合のことです。
配偶者や子ども、親、祖父母などが遺留分を主張できますが、被相続人の兄弟姉妹や甥姪は遺留分が認められません。

遺留分の割合は、原則として相続財産の2分の1、直系尊属者だけが相続人の場合は3分の1となり、これにより算定された遺留分をさらに各相続人の法定相続分に従って分割します。

例えば、配偶者と子どもが相続人の場合、遺留分は2分の1となり、配偶者の法定相続分は2分の1のため、配偶者個別の遺留分は4分の1になります。
子どもが2人いる場合は、遺留分が2分の1、法定相続分は4分の1のため、それぞれの子どもの遺留分は8分の1となります。

本来は相続人にあたらない孫へ資産を受け継がせるのであれば、他の親族(相続人)には事前に理由を説明して、納得した上で実行することが大切です。

相続税の課税上のデメリット

養子縁組または遺言書によって孫に財産を相続させた場合、相続税が2割加算されます。

相続税は相続した財産額に応じて決まるため、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人(兄弟姉妹、孫等)が相続した分にかかる相続税が2割加算される仕組みです。
なお、子が既に死亡していて孫に代襲相続する場合、2割加算は適用されません。

また、相続とは若干異なりますが、死亡保険金の受取人を孫にすることによっても、結果として直接財産を承継させることが可能です。
しかしその場合、相続人に認められる「500万円×法定相続人の数」の非課税枠の利用が、孫には認められていません。
一方、相続人の人数制限はないため、孫と養子縁組することで孫への死亡保険金にも非課税が適用されます。

孫による相続における相続税の目安

相続税は、相続財産から基礎控除の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を差し引き、相続税率を乗じて控除額を差し引くことで、課税額の目安を算出できます。

相続税率と控除額は以下のとおりです。

 課税資産総額  税率  控除額
 ~1,000万円以下  10%  0円
 ~3,000万円以下  15%  50万円
 ~5,000万円以下  20%  200万円
 ~1億円以下  30%  700万円
 ~2億円以下  40%  1,700万円
 ~3億円以下  45%  2,700万円
 ~6億円以下  50%  4,200万円
 6億円超~  55%  7,200万円

出典:国税庁「相続税の税率


養子縁組により孫が相続人になったケースを例に、相続税計算の方法を紹介します。

・法定相続人:配偶者(妻)・孫・子(1人)計3名
・遺産総額:8,000万円
・債務:借金1,000万円
・葬儀費用:600万円
・他に贈与・債務等無し
・取得割合は法定相続分に準ずる(配偶者1/2、子1/4、孫1/4)

この場合、以下のように計算します。

(1)遺産総額8,000万円-債務1,000万円-葬儀費用600万円=6,400万円
(2)6,400万円-基礎控除4,800万円「計算式:3,000万円+600万円×3人」=1,600万円=課税遺産総額
(3)1,600万円×1/4=400万円=孫の法定相続分に応じた取得金額(子は400万円、配偶者は800万円)
(4)400万円×税率10%=40万円=孫の法定相続分に応じた相続税額(子は40万円、配偶者は80万円)
(5)孫40万円+子40万円+配偶者80万円=160万円=相続税の総額
(6)160万円×孫の相続割合1/4×相続税額の2割加算=48万円=孫が実際に納める相続税額(子は40万円、配偶者は配偶者控除により0円)

まとめ

孫に遺産を相続させたい場合は、遺言書の作成や養子縁組などの方法を用いる必要があります。
ただし、孫への相続方法によっては相続税が2割加算される点に注意が必要です。

また、他の親族が不公平と感じるほどの多額の財産を孫に相続すると、親族間でトラブルになる可能性があるため、親族の理解を得たうえで相続の準備を進めてください。

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